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第21話 打開策

会話多めです。



 轟く様な叫び声と強烈な光に団員は誰一人として動くことが出来なかった。


そして光が収まった後も、もう動けるはずの団員達は皆、ただ呆然と()()光景を見ていた。



 大きな1匹のドラゴンが空を駆け上がり頭上を飛んでいる。

空は"海"だったのかと錯覚してしまうほどに悠々と、優雅に空を泳いでいる。


夕暮れの景色をそのまま落としたような美しい橙の瞳が神域をチラッと見た。


そして大きな叫び声を上げて遠くに泳いで行った。


第三騎士団の団員達はしばらくの間愕然として絶句していたが、1人が声を出すと感染していくようにそれに続いて皆が一斉に喋り出した。



「神竜だった!」「迫力凄かったな!」「目痛ぇ」

「でかかったなぁ」「初めて見た」「格好良かった」

「この結界は神域だったのか」「興奮して汗が凄い」


 東の森最奥地にある神域の周りでは、感想の大合唱が起こっていた。

全員が昼休憩をした場所に集まって、口々に感想を零している。




だが、数人は未だ無言のままだった。



「………………。」



「………………。」



「……………団長。」


「……………なんだニコラス。」


「…報告、どうします?」


「……そのまま報告…するわけにもいかないな。」


「旅人が神竜だったんすかね?」


「分からん。…だが結界内にはもう気配は無い。」


「…確か…2人だったっすよね。あと1人は……。」


「……それはまた後日話し合おう。」


「そっすね……。」



こうして、謎を残したまま神竜調査が終了した。




―――――――――――――――――――――


―時は少し遡る。



「ねぇヴァル。……囲まれてるよね。」


「……ああ、囲まれてるな。」



 美希とヴァルは街に行く前に、誰かが接触したと思われる神域に来ていた。


草原から結構な距離ではあったのだが、さすがは神クラス(?)である。

2人はほんの少しだけ本気を出して森の中を駆け抜けて、凄まじい速さで神域まで辿り着いた。



 周囲からは複数人の気配がしたものの、離れた位置だったため特に気にも留めずに神域内へ入って(ほこら)を目指して歩いていた。


……………のだが。


離れた距離にあった気配が素早く、一斉にこちらに向かって来ているのが分かった。

そして、神域の周りを一定間隔で取り囲み始めた。


……団員たちは気配遮断を使い身を隠しているつもりだが、神クラスの美希とヴァルには通用しなかったのである。



「……どうしようヴァル。多分この人達が神域に接触した人達だよね?」


「間違いなくそうだろうな。…完全に囲まれているけど、この中までは入ってこれないだろう。」


「なら、どうやって逃げる?それとも普通に出て行って話を聞いてみる?」


「……話を聞くのはやめた方がいい。」


「……なんで?」


「俺達がいるこの場所は森の中の深い所だ。そんな場所に何十人もいるこの状況はおかしいだろ?」


「…たしかに。」


「……多分俺のことを調べに来たんだと思う。んで、来てみたら結界が張られた場所があったから調べたら結界内に入れないことが分かる。」


「ふむふむ。それで?」


「神竜の出現と入ることの出来ない謎の結界、この要素だけで頭のいい奴はこの結界が神域になってるって直ぐ閃くはずだ。」


「だから普通に出て行くのはやめた方がいいのか。……出て行ったら捕まっちゃいそう。」


「そういうこと。……そんな結構危険な状況だけど俺から提案したいことが3つある。」


「提案?」



ヴァルの提案はこの状況からの脱出案だった。


一つ、隙をついて全力で走って逃げる。


二つ、このまま気配が消えるまで待つ。


三つ、空を飛んで逃げる。



「隙をつくのはどうするの?……爆発でも起こす?」


「爆発は今後禁止って言っただろ。」


「すいません。……んでも待つのは却下!いついなくなるのか分からないし、もしずっといるなら街に行けなくなっちゃう!」


「じゃあ、空飛んで逃げるか?」


「…それしかないかも。普通に飛んでいく?」


「いや、このままの格好で飛んだら間違いなく姿を見られて延々と探されるだろうから、俺がドラゴンに戻る。」


「え、戻るの!?」


「そう。…ドラゴンの姿なら追っては来ないだろうし、美希は気配を消して背中にしがみついてれば見られないと思う。」


「うーん。……じゃあ空を飛んで逃げるを採用しよっか!」


 三つ目の案が採用された。

…ちなみに美希は忘れているが、ヴァルが姿を変える時には必ず目を焼き尽くさんばかりの眩しい光が放たれるのである。




「……それじゃあミキ、俺の背中に抱きついて?」


「だっ抱きつく!?今!?」


「うん。…恥ずかしいの?」


「そりゃあ、その。っていうか抱きつく必要あるの!?ヴァルがドラゴンになった後に背中に乗れば良くない!?」


「良くない。ドラゴンの大きさわかってる?ミキの何百倍も大きいのにちゃんと乗れる?…………それに、俺を抱きしめるのなんていつもしてるじゃん。」


「っ!…………分かったよ!!!」


「ふふっ。…目を閉じて思いっきり抱きついて。」






「………………行くよ。」





―眩しい光が周囲を包み1匹のドラゴンが現れた。


そして轟く様な叫び声とともに空へ駆け上がり、東の森から去っていった。




ヴァルコアトルのキャラが迷子です。

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