第20話 包囲網
今回こそ、ついに出会.......
「……接触ってどういうこと?」
「俺以外が住処に入れないよう結界を張った時に、同じ様な感覚を経験したことがある。」
「誰かが、結界に入ろうとしてるってこと?」
「そういうことだろうな。ミキがこの世界に来てから、家具以外だと神域しか造ってないだろう?」
「そうだね……。いつの間にか神域を造っちゃってたんだけどね。」
「それなら、誰かが神域に接触したのを知らせてくれているんだと思うぞ。」
「知らせてくれている?そんな機能があるの?」
「ある。……まぁ取り敢えず"知らせなくていいです〜"って念じてみてくれ。治るだろうから。」
「やってみる。……本当だ。もうなんともない!」
「良かったな。ってまた走り回ろうとするなよ。そろそろ街に行かないと不味いぞ?」
「ごめんごめん。じゃあ行きますか!……でも、誰が接触したんだろうね?」
「……街に行く前に確かめに行ってみる?」
「うん……。そうしてみようか。」
こうして太陽が徐々に登りはじめた頃、旅人衣装を纏った2人(?)は草原を出発して神域へと向かったのである。
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一方その頃。
結界・建造物調査班の団員達は、この後の展開などつゆ知らず呑気に昼休憩を取っていた。
「団長、見張り交代するのでお昼食べてきてください。」
「おお、了解。…もう休憩はいいのか?」
「はい!もう充分休みましたから、午後からの調査も気合い入れて頑張ります!」
「おう!ありがとな!」
朝早くから神竜調査を開始した王国第三騎士団は、これまで何の成果も得れていなかった。
結界内に入ることが出来ず、そのせいで建造物についても調査が出来ない。
第三騎士団団長のレイナード・フォン・アルバートは非常に焦っていた。
…このままでは王に良い報告を持って帰れない、と。
「顔色悪いっすよ団長?……大丈夫すか?」
「ああ、ニコラスか。大丈夫。…と言いたい所だがこのままだと何の成果もなく帰ることになりそうでな。……少しばかり焦っている。」
「なるほど〜。確かに何にも見つかって無いっすもんね。」
「ああ。……ところでその昼飯は手作りか?」
「そうなんすよ!!花屋の女の子が作ってくれたんすよ!」
「……聞かなきゃ良かった。というかこの前は飯屋の女の子にご飯作って貰ってただろ?どうしたんだ。」
「いや〜それが、いろんな女の子と仲良くしてたら怒られて振られちゃったんすよ。……それより!!団長は今いい感じの女性とかいないんすか?」
「…………お前なぁ。俺にそんな女性がいたらとっくにお前らに自慢してるわ。」
「そっすよね〜!……てかなんで第三騎士団には女性職員が少ないんすか?俺、職場恋愛とか憧れなんすけど……。」
「そりゃあむさ苦しい男ばっかりで人気無いからに決まってん…「っアルバート団長!」……どうした?」
「っひ、ヒト、っ人が、……!」
「落ち着け!何があった!」
「…すいません。結界内に2人、人間が居ました。」
「結界内!?…お前は何で結界の近くにいたんだ!」
「ヒッ。すいませんごめんなさい…!」
「謝れって言ってんじゃなくて、理由を聞いているんだ。……落ち着いて状況を教えてくれ。」
「……はい。その、地面を掘ったら結界に入れるんじゃ無いかと思って掘れそうな場所を探していて、人の話し声が聞こえて思わず隠れたんですけど……。」
「……けど?」
「よくよく声を聞いてみたら、女性と男性の声だったんです。……それで、姿を確認しようと思って見たら結界内に普通に入ってて……。」
「女性と男性だと?……しかも結界内に入って行っただと?」
「そうです。なので慌てて団長に知らせなきゃと思って……。」
「……分かった。本来なら休憩中なのになぜ調査をしたんだ、と怒るところだが今回は許してやる。それで、どんな人間だったかは確認したのか?」
「ありがとうございます!…ローブを着ていて、旅人っぽい格好をしていました。フードを深く被っていて上半分の顔は確認できませんでした。」
「旅人か。了解、良くやった。……全員良く聞け!これから昼休憩を切り上げて調査を再開する!まだ食べてる奴は口に詰め込め!」
「「「はい!!」」」
「旅人と思われる人間が2人、結界内に入っていったのを確認した!これから全員で結界を囲むようにしてその人間が出てくるのを待つ!」
「2人も?」「旅人なんて…」「あり得ない!」
「静かにしろ!いいか!捕まえるんじゃなく話を聞くだけだ!…手荒な行動は絶対にするな!分かったか!」
「「「はい!!」」」
「よし、行動を開始する!木や草の陰に隠れて姿を隠すように!気配遮断が使える奴は使え!以上!」
第三騎士団、結界・建造物調査班は先程までの緩んだ空気を一変させて緊張を漂わせた。
流石は王国最強の騎士団、と言った所だろう。
全員、気配を完全に消して木の上や陰、茂みの中に隠れて結界内の様子を探っていた。
その時間が長かったのか短かったのかは分からない。
全員が顔に汗を浮かべ、その時を待っていた。
どれくらいの時間が経った頃だろうか。
突如、結界内がまぶしく光り輝いた。
――その瞬間。
「ゥウグルゥオォォオオオォォオン!!!!!」
――神竜の声が響いた。
出会いませんでした。