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少尉ですが何か?改修  作者: 背徳の魔王
第一章
8/123

魔法理論、討論会



━━三日後。



忙しかった武芸大会も終わり、またいつもの生活が始まる。



しかし……一部の学生達『特待生』と『院』生には、



これから7月に行われる。魔法理論会に向けて、苦労する。日々の始まりである。その間一般生徒は、

有能な、新入生を発掘すべく。突撃部隊が、各学年で編成されていると不穏な噂も密かに流れていた。


ミザイナ部隊の面々は、レイナ、ケイタ、ピアンザ、オーラルの4人が、魔法理論会の出場者であり、ケイタの補助を主な仕事としていた。対してケイタはと言うと。得意分野である。本人の鼻息も荒く。


「僕、頑張ります!」


張り切っていた。

オーラルはあまりな張り切り具合に、幻覚が見えた気がした。犬がぱたぱた尻尾を振ってる姿であった。


本来魔法理論、討論会は各学院、学園の『院』生が主な参加者である。『特待生』の中でも優秀な生徒が選ばれ、参加を促されることがあった。今回のような場合は部隊の他の面々が、バックアップする。今回の場合は主にケイタのために資料集めたり、必要な資材を集めたりと、奔走していた。



そんな多忙な日々を送っていた。オーラルの元に。嬉しい報せがあったのは、今朝のこと。商人から先日のお礼で、宮廷魔導師か、それに準ずる者しか入れない。王立図書館に入れる許可を取り付けてくれたのだ。興味を持っていた、ケイタに話すと。もうそれは大興奮で、


「お願いします先輩!、是非連れてって下さい!」


目をこれでもかって見開き、キラキラさせていた。学園に届けを出して、オーラルはケイタを連れて、王城に入るため近衛連隊の詰所で、身体検索される厳重さに。気楽な面持ちだったケイタの顔から。血の気がひいていた。緊張してるようだ。しばらく待たされると。美しい女性が艶やかに微笑み。二人の前で立ち止まる。


「貴方が、先日武芸大会剣の部で、準優勝したオーラル君ね」


「はい」


気負いなく答えた。自然体のオーラルを。実に面白そうに見ながら、傍らの不安丸出しの可愛らしい男の子を。目を細め見てから、微かに驚いた表情が浮かぶが、すぐに消していた。オーラルは気付いたが……、


敢えて指摘しないでいると……、


「へえ~」


再び微かに驚いた顔して、それから楽しそうにクスクス微笑んでいた。



━━彼女こそ、

現宮廷魔導師筆頭、若くして学園長に就任した。エドナ・カルメン・オードリ、あの変人リリア女史の上司である。


「わざわざ宮廷魔導師筆頭様に、案内されるなんて……」


歓喜極まった顔のケイタを、くすぐったそうに笑いつつも、


「リリアからも頼まれたからね~、暇だったし……」


ボソリ本音を洩らした。


「えっ……」


「何でもないわ。それよりもオーラル君、無茶は、程ほどにね♪」


面白そうに笑いながらチクリ、この間の話か……、

気付いたが、敢えて素知らぬ風を装うや。悪戯はダメよ?。優しい眼差しを受けてしまう、自分でも柄ではなかったと感じてたので、そこは素直に頷いた。


「この先にあるお庭は、王族や重鎮以外入れないから、気を付けなさい」


注意してから。垂れた目尻を下げる。


「また後で、様子を見にくるからね♪」


エドナ筆頭は、仕事に戻って行った。




恐らく……『特待生』

と言えど、城内の王立図書館に。足を踏み入れた学生は、皆無に近いだろうな。


さらに噂では、世界中に流通する本でなら。ここで手に入らない本はないとさえ言われていて。『院』の蔵書は、過去王立図書館で破棄された、本ばかりであるとも。本当のことは分からないが、蔵書のレベルが桁違い過ぎた。



「うわぁ~こっちの本は、世界に二冊しかない精霊魔法の本じゃないですか!、こっちのは『鍵魔法全集』ですね」


顔を輝かせるケイタの様子は、宝石を見る。少女のように嬉しそうである。オーラルには難し過ぎて読めない本ばかりだ。大切な宝物を扱うよう。震える手で一冊づつ手に取り、中身を見て、やがてケイタは、本にのめり込んで行った。



一息ついていたオーラルも、手近な『魔法の基礎理論』主っ筆者オール・セラと書いてある本を手に取り。ページを綴りながら。森で、初めて使った魔法を思い出していた。



今使えたのは、初期の補助魔法と簡易魔法だけだ。もう少し使える魔法を増やしたいな……。





━━今から少し前……、



オーラル達が、王宮に入るのを。暗い眼差しをした大柄な少年。バローナ・エトワールが、実に忌々しそうに、舌打ちを漏らしていた。


「バローナさん……まずいですよ。あの二人王宮に入りましたよ……」


怖じけつく手下の同級生、更にそれが不機嫌を増長させ、うろんな眼差しを手下に向けて、忌々しそうに鼻を鳴らした。


「生け簀かない野郎だ!、何が剣の部準優勝者だ……」


腕力では、とても敵うはずがない……、それに忌々しいが、あいつが所属してる部隊は、学園最強とも言われていた。こうなると、自分たちがどうこう出来る話ではない……、


「くそ………、お前たち……、今日は、あいつらの足取りだけを調べておけ、俺は父上に会いに行く!」


見合う、手下を残して、バローナは、暗い怒りを放ちながら、早足のまま雑踏に消えていった。



━━━エドナ・カルメン・オードリー、


彼女こそ。歴代の宮廷魔導師において、史上最年少の14歳で就任した。稀代の天才と呼ばれた女傑である。


僅か18の若さで筆頭に選ばれてから早10年。激務をこなし過ぎていた。



━━数年前ようやく。念願のアレイ学園長に就任したが、まだまだ学園長に専念はさせて貰えないようだ。



それは……宮廷魔導師筆頭を譲れる。才能ある若者に出会えていないのが、最近の悩みであったからだ。エドナは廊下から出ると。重鎮達の待つ中庭。ロイヤルガーデンに出た。



今日忙しい合間に。わざわざ時間を作ってまで。二人の生徒を出迎えたのは、大切な部下から切に頼まれたからだが、もう一つの理由は、彼女のお気に入りを、一目見たかったのもあり、会ったのだが……。


「思わぬ収穫だわね♪」


頬は緩み。足取りは軽くなっていた。



涼やかな風が通り抜ける庭園。人工的に作られた木々のアーチは、歴代の宮廷魔導師が、その叡知により。一年中絶対枯れない木々を造り出していた。瑞々しい。緑の庭園には、

白木の皮で編まれた、涼しげな籐の椅子が、四脚用意されており。同色のテーブルの上に。白磁器のティーセット、軽食まで用意されてあった、それぞれの椅子に座るのは、今年新任した。近衛連隊長セレスト・ブレア、



そして……王国最強と囁かれる。ケレル皇子の腹心、カレイラ・バレス少将、

我が国で、最高の名誉、『オールラウンダー』の称号を持つ、若き重鎮である。噂では……、

カレイラ師団を新たに作るべく、皇子が手を回してると聞く、


「エドナ遅かったね」


いち早く気付いたケレル殿下に、深く頭を下げていた。


「リリアに頼まれていた。生徒を出迎えてたので……」


筆頭の言葉にカレイラが軽く。珍しい驚きの表情を浮かべていた。


「わざわざ君がやらなくても……、誰かに任せて良かったんじゃないか?」


カレイラの申し分は、理にかなっている。


「ええ、あのリリアのお気に入りを。一目見たくて、申し訳ありません」


やはり微かに驚き、目を細めたケレルだが、少し興味を覚えていた。


「そうかいでは、君から見て、どんな印象だったんだい?」


僅かに腰をずらし。答えを待つケレル殿下に。エドナはしばし熟考して、口を開いていた。


「魔法の国から来た少年は、いずれ私の代わりを勤める程かと……」


晴れやかに、微笑していた。これには……驚きを隠せず。興味深そうな目をカレイラに向けていた。そっと意味ありげな眼差しを送る。眉をひそめたカレイラに向ける眼差しはあくまでも。真剣でありながら、クスリ楽しげな微笑をケレル殿下に向けてから、ゆったりと席に着いた。


『もう1人…、あの子……、あんな才能を見たのは、リリア以来かしらね…』


微かに、唇を歪めて、空を見上げていた。


「さっそくだが……」




━━夕方。

満足そうな笑みのエドナ筆頭に見送られて、二人は城を後にした。ケイタはどうやら、筆頭に気にいられたようで、


『魔導師ギルドにも。顔を出しなさい』


と、命令されてたな~。


『ついでに、貴方もね』


悪戯ぽく笑う顔は気高く、ケイタなど真っ赤になっていた。案外お姉さんタイプに弱いのかな?。



━━数日後。

梅雨の季節になって。天気の悪い日が続く。朝からしとしと雨降る様子を。諦めながら空を見上げ。足早に林道を抜け『院』のある。研究棟に向かう、



『院』の研究棟に入るには、扉の右にある。ライオンを模したゴーレムの口に、『院』の者であることを示す。銀のサークを置くと。カチャリ。

扉の鍵が開き。僅かに扉が開く、ゴーレムの口から。サークを取りだして、扉を抜ける。



本、独特のカビ臭い臭気、外のじめっとした鬱陶しい季節だから。余計に鼻に付いた。こう毎日雨だと。オーラルとて辟易する気分になろう。



オーラルには姉がいた。今日は姉を起こしてから、家をでたのだが。まとまったお金を。姉に渡すためだった。オーラルのバイトのことは、姉だけが知っていて、姉の給金が出る日に。纏めて母に渡して貰うためである。



寝苦しい日々。姉の愚痴が増える一方なのも。半分は仕方ないのだが……、



この雨は、オーラルにとっても困る。人足のバイトが中止になるからだ。オーラルが世話になってる商家は、小麦や塩を扱う卸問屋である。どちらも水気を嫌うため。仕事の日数が減る。その分個人ポイントを切り崩さなければならない、頭の痛い話だと………。眉間に皺が寄る。


「先輩?……」


思わず素通りしたオーラルを。不思議そうに見ていたケイタが、オーラルに声を掛ける。考え込みながら歩いていたので、気付くのに遅れて思わず苦笑していた。



今はとにかく。夏の魔法討論会に向けて。様々な文献、過去の様々な魔法や。魔法陣を使った儀式について調べていた。



先日商人のお礼で、王立図書館に入ることが許されたのだが。オーラルが見付けたのは、多重式魔法が面白いと思ったのだ。



━━━もしも……複数の異なる魔法を。同時に扱えたら。また扱う結果が得られたら?……。



そう考えながら。毎日術式を書いては書き換え、消しては書いていた。


ケイタはケイタで、とても珍しいアストラル=魂の一部を『使い魔』に移す。秘術をやるつもりらしい。もっともそうそう出来る儀式ではないので。

危険のない簡易式で行うとのこと、ケイタの話では50年ほど前に、使われた儀式魔法陣をアレンジするだけだとケイタは笑う。内容を聞いてもオーラルには、ちんぷんかんぷんだったが。



ようやケイタにとって、得意分野にて、ご迷惑ばかりかけてる部隊に貢献するのだと。意気込んでいた。本来の少年らしい活発さと。神童と呼ばれた俊英さを。遺憾無く。発揮出来るようになっていた。


周りの人々←特に『院』の生徒もケイタの才能を認め始めていた……、もっとも、ある女生徒がメインだが……、ケイタは彼女の気持ちに。気付くことはしばらくない気はしたが……、


最近オーラルが『院』にいない間。カレン・ダレス=シルビア、

ダレス家の才女と言えば有名かな、



ダレス家は、財務顧問を世襲制で認められる希有な一族で、一族の中で、最も優秀な人間が、ダレス家を継ぐ、シルビアは四人姉妹の次女で、才媛の多い姉妹の中でも、抜けた存在である。


言わば、ケイタと双璧をなす有名人であった。

ケイタの隣でチラリ冷めた視線をよこした彼女は、再び自分の本を読み始めていた。

何が良いのか……、よく解らないが、ケイタと馬が合うらしい……。変なのに、気に入られるのは、もはやケイタの才能なのか?、それは解らないが、

二人で、仲良く違う本を読んでる姿を見掛ける。

来週には、東大陸魔法理論会予選が、学園内で行われる。


シルビアも『特待生』だが、ミザイナと同学年で『院』にも在籍しており。全く『特待生』教室に来たことが無い。その為シルビアの扱いは『院』の代表として、魔法討論会・予選に参加することになっていた。



初夏←間近のジメジメした時期に、予選が、『特待生』と『院』の優秀な生徒達により行われるのだ。その中から優秀な生徒を4人選び出して。東大陸の5ヶ国合同で行われる。本選に出ることになる。


学生にとってアレイ学園の代表チームに選ばれたら。個人に100、部隊50ポイントが与えられる。一定の成績を得た参加生徒にも10ポイント与えられる。

だからオーラルは、参加ポイントだけ貰えれば良いやと考えていた。



後はケイタ、レイナ、ピアンザの補佐に回る考えである。


「先輩!、儀式の魔法陣書きますから、補佐お願いします。シルビア調整手伝ってよ」


また唐突な物言いである。シルビアの顔にも戸惑いが隠せないが、こういった時だけ強引なケイタに手を引かれるや。仕方なさそうな澄ました顔だが、頬を赤くして、実に嬉しそうな顔で引きずられてく。やれやれだと知らぬはケイタのみである。仕方なく自分の勉強を諦めて。二人の後を追った。




━━━━王都の北。 通称。貴族街。



豪奢な屋敷が並び。雅な水路が、中央広場に集まり馬小屋の並ぶ、東側の牧草地まで水路は続く。



広大な、牧草地を有するは貴族街でも王族以外では、エトワール家のみ。エトワール家は、レゾンⅢ世の妻。レイダ王妃の兄が、家督をついだ名家であるが、女系が優秀なため、男系は小物が多く。エトワール・ブリュクヒルも例に漏れない。小物貴族と影で言われていた。



ブリュクヒルには、息子が二人いるが、どちらも腕っぷしと、悪知恵が働くが、凡庸な兄。馬鹿だが、父のために働く弟。ブリュクヒルには馬鹿ほど可愛く思えた。何れ家督をバローナに与えようかと考えていた程だ。


「なんだと!、お前をエトワール家の人間と知って、手を上げたのか……、赦せぬな…」


たるんだ頬を揺らし、目を血ばらせて、 息子を睨む。そんなことも手に負えぬのかと、この時ばかりは……、妹の3人の子供と比べ、不出来な我が子に歯噛みした。


「何者だ!、オーラルとは……」


激昂する父を、暗い光を宿した眼を輝かせ。バローナはほくそ笑む。こうして………リリア女史と。ミザイナの不安が的中することになる。




━━━予選会。翌日。凄まじい衝撃が……、ミザイナ部隊に落ちた。

なんと……、オーラルが魔法討論会・予選に通ってしまい、


全体の4位という。好成績を上げたのだ。それだけではない『院』生からは。2位のシルビアだけと言う波乱の結果に……。



学園側も酷く慌てた。

ピアンザ3位、

レイナがなんと……6位と予選落ち。無論ケイタが1位で……、


「せっ先輩!凄いです」


憧憬の眼差しのケイタ、

自信消失のレイナ、呆れてるミザイナに、

肩を竦めるピアンザを前に、悩ましげに眉をひそめるオーラルは……、


『アチャ~、バイトが』


と内心頭を抱えていた。苦労人にとって、短い夏休みは、稼ぎ時である。本選の時期は夏休みになってからで……、


チ~ン。撃沈したオーラルの肩を諦めろと叩くリリア女史は、平たい笑みを浮かべていた。


……しかし波紋は、

『院』に波及した。



━━━下級生←それもまだ1年の『特待生』に1位を取られたのである。慌てるのも仕方ない。



さらに……。二人の『特待生』が、学園長の決断で選抜された。


「リリア!貴様。何をしたのだ」


職員室とは名ばかりの自分の部屋と化してる机で、突っ伏してたら、いきなり怒鳴られた。



面倒臭そうに目を開けたリリアの目に。宮廷魔導師を示す。メダリオンが揺れていて、眠気を誘うから、再び眠ろうかと本気で悩む。相手は宮廷魔導師次席であり、アレイ学園の教頭、バレンタイン・ブロワルドが、大柄な肩を怒らせていた。


「聞いてるのかリリア!」


珍しい物を見れたと、リリアは鼻先にある。眼鏡を上げた。右目は相手のオーラを見分ける、魔法の成り済ましを見分ける面白アイテムだ。


どうやら本人らしい……。

言って聞かせて納得するかは、疑問だが、面倒になり、学園長から戻されたレポート3つを。バレンタインに突き付ける。


「なんだこれは……」


受け取った名前を見て、眉間に皺を寄せた。件の『特待生』3人のレポートだと気付いたからだ。引ったくると、それぞれのレポートに眼を落とし……、


「流石は、魔導王国の『魔導生』よね~。それから後の2人は、彼にひけをとらない優秀な生徒だと、それを見たら解るわね~次席?」


愕然と、ピアンザとある特待生のレポートを読み。青くなる。


「これは……しかし…可能性はある。そうか!、こやつなかなか……」


「もう~聞いてないか……」


呆れたような顔だが、自慢の生徒がようやく片鱗を見せたと、リリアは小さく微笑していた。



リリアの最後に読んでいたレポートは。オーラルが書いた物で、全く新しい理論の魔法である。


━━タイトルは、

『2つの魔法を同時に』



誰もが一度は、試す。課題であり、深く魔法を学び。世界を知れば、夢物語と諦めてしまうのだが、オーラルはシンプルに、一つの魔法から、2つの魔法となるようにする方法を見つけ出した。それは単純故に。誰も思い付かない方法。最初にある法則を魔法陣内に組み込んだ。シンプル故に異なる魔法因子を、放つ魔法に張り付けることで可能にした。

優れた魔法であった。



それは……例えば対極の魔法を使うのではなく。同じ系統の魔法に、ほんの少し違う効果を与える簡単な理論でしか書かれていない。さほど難しい事ではなく。リリアもレポートにあった方法を幾つか試して、肌が粟立った。


『例えば…、炎に眠りの因子を張り付け発動すれば』


『例えば…、氷に毒の因子を張り付け発動すれば』


もはや新しい系統理論である……。


誰も……毒の魔法、麻痺、眠りの魔法のような補助魔法から、攻撃魔法に繋げる方々を、張り付けよう等とは考えない、しかもこの手段を用いれば、鍵明け←扉が開き。危険を感じた瞬間。因子を変えればまんま扉を破壊して、攻撃出来る利点まであった。



もしくは、扉を破壊したと同時に、中にいる敵を眠らせたり、麻痺させるとか使い方は数多、魔法使いの生還出来る確率は高くなるのだ。


「リリア……すまぬ。私の勘違いであった……、善き生徒に恵まれたな」


バレンタインは見た目と違い、温厚で、生徒思いの善き教諭である。生徒からの信頼も厚い。彼が認めたのだから、3人の能力は『院』でも通用するのだろう。艶やかに笑うリリアに思わず見とれていた。なんと無く照れ臭く笑い。バレンタインは職員室を後にした。


「やれやれ、これで心おきなく。私は先生をやれるかな?」


愉しげに呟きリリアは、薄く笑う。



━━その頃。リリア期待の生徒は、相も変わらず。朝の人足のバイト終わりに、演舞場で、誰もいないなか、汗を流す。

ようやく一息ついて、水筒を手にして、座ろうとした時、チりとした、違和感を覚えた……、



咄嗟に背後に木刀を振るう、



━━━カツン、闇に受け止められた?、


驚きに目を細めた。相手は刃物を抜いていた。カトラスと呼ばれる。船上で戦うことを目的に作られた、刺突に優れた武器だったが、



武器だけ宙に浮いて……、いや違う!、暗がりに黒の衣服にて、全身を覆っている。だから闇に紛れ。視認しにくくなっていた。オーラルも聞いたことがあった。暗殺を得意とする人間は気配を消すのが上手いと、


一瞬で判断した。注意深く見れば、黒くカトラスの刃は塗り潰されていた。薄い暗がりのある早朝。しかも1人のところを狙ってきた……。



それは……、オーラルの命を狙っての事だ。黒衣の服装をした暗殺者は、男か女かも解らない。うっすら青い目が現れた。

凄まじい殺気が、黒衣から溢れた。



身体が氷の中に押し込まれた気がした。冷や汗が止まらない。少しも実戦経験が無い学生ならば……、殺気に飲まれ。あっという間に殺されていたはずだ。シュ、切り裂く音、紙一重でかわし。抜き打ちの一撃。


ドス……重い打撃音が、演舞場に響き、黒衣の体が崩れ落ちた。


「……咄嗟に、空圧の魔法と、昏倒の因子を組み合わせて放てた……、危なかった……」


冷たい汗を拭い、震える手から、木刀を外した、なんとなく恐怖心から、黒衣から武器を奪い、後ろ手に縛る。足も縛ってから、カトラスの刃の匂いをかいでいた。毒が塗られてると確認して、再び寒気がした、黒衣からフードを奪い、自害せぬよう布を噛ませ。急ぎリリア女史を呼びに出ていた。



息を切らせたオーラルから話を聞き、リリア女史は、黒衣の者を確かめ、冷笑を浮かべていた。改めて暗殺者に強い麻痺の魔法を掛けてから、動けなくしておくのも忘れない。

オーラルに、先に教室に戻るように伝えた。


「馬鹿息子に泣きつかれたか……、それにしてもよりにもよって、黒衣を動かしてまでとはね……」


危険な光を宿して、バレンタインを待つ間。この先どうするか……考えていた。



黒衣とは、アレイク王国の闇━━。

諜報機関に属する一族で、王家にだけ支えている者達の総称である。

あまり人々に知られていないが、小さな村丸ごと、黒衣の住まう村だと言う……、荒唐無稽な噂があった。リリアもあくまで噂の一つだと思っていのだが━━━。


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