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少尉ですが何か?改修  作者: 背徳の魔王
第一章
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剣の部決勝


━━いつの間にか……、夕闇が、辺りを暗くさせていた。



校庭に出てる屋台は、西大陸で使われる。提灯が掲げられていた、中にローソクが入っていて、それに火が点されると。見ごたえのある風景が広がった。この教室からみる風景も。春の風物詩である。



━━学園の校門前……、


禿げた頭をツルツルと撫でた人足頭と、朝。オーラルに助けられた若い商人。その恋人が、にこやかに談笑しながら学園にやってきていた。


「本当に、本当に良かったな……、オーラルが、おめえを助け出してくれてよ……」


ずずず~っと鼻を啜る。夏には義理の父になる人足頭が、神妙な顔で何度も頷く、


「はい!、こうしてユキと話せるのも。あいつのお陰です!」


「うん……、それで、オーラル君て、本当にここの生徒さんなの父さん?」


訝しげな娘に、泣き笑いのまま苦笑して、大きく頷いた。


「ああ奴は、いつも言うんだ。決まってよ。ただ自分の出来ることしただけなんだってな……、なあ~」


間もなく婿になる予定の若き商人に、話を向ける。


「そうなんだ、あいつ変わった奴でさ、門番の詰所で、兵士に誉められても。何でもないと言うんだ……」




━━話は、昼前の外門前。詰所での出来事に戻る。



二人を助けた、オーラルは、門番の詰所に飛び込み。二人が、山賊に捕まってたこと━━、


二人の命が危なかったから、荷を捨て、馬で逃げて来たこと伝え。二人の保護を求めた。


「ご苦労だった……、その制服は、君はアレイ学園の生徒だろうに……」


感心する兵士達に、何でもないことのように。


「あの二人は、顔見知りで、助けられる可能性があった。だから自分の出来ること、したただそれだけです」


呆気にとられた兵士達は、直ぐに破顔一笑して、握手を求めてきた。


「俺は、これから試合があるので……」


「なっ…、君は…いや、皆まで言うまい、やれることをしたからか?」


あえて笑い含むように言われて、オーラルは照れ臭そうに、静かに頷いた。



後から知らせを受けた、人足頭は、商人と供に兵士に呼ばれた。そこで詳しく話を聞かされ。二人の心臓が止まるかと、血の気が失せたのだった。荷馬車に乗ってた内の1人は、人足頭の娘婿になる。若い男が乗ってたのだ。



そんなとき兵はにこやかに言った、清々しい笑みを浮かべながら。


「恐らく。荷は、戻らぬだろう、だが、二人は無事だったんだよしとするべきだな、それに二人を助けたのは若い学生だ」


「なんと……」


人足頭と商人は、絶句した。


「伝言だが、『試合があるので、学園に急ぎます 』

だそうだ、今時珍しいくらい正義感の強い少年だったな」


楽しそうに笑う兵達に、二人は戸惑いながらも確信する、同時に胸を撫で下ろしていた。助けられた二人は、そのあと詳しく事情調書を取られ。終わるとすぐに帰された。


そして、今に至る。


「ふ~ん、後でお礼言わなきゃね♪」


愛する男の腕に触れ、きつい眼差しを和らげた。



━━噂のオーラルは、その頃……。



演舞場の観客席の下にある。地下控え室で、やはり何時ものように寝ていた。


「先輩!、もうすぐ時間ですよ、先輩!起きて下さいよ~」


呼びに来た。審判員の先生に、恐縮して謝りつつ。オーラルの体を揺する。


「ん~あ~、眠い……。何だもう時間か?」


グッと伸びをして、ようやく目覚めたオーラルに、ホッとしていた。


「オーラル、殿下がお言葉を伸べられる。選手は、早く会場に、出ているようにとお達しである。話は聞いてるが、寝るなよ」


茶目っ気たっぷりの笑みで、オーラルに聞こえるような。微かな声で、こっそり囁いた。そんな先生とオーラルの様子に、訝しげな眼差しを二人に向けるケイタをよそに、


この男性教諭は……、確か近衛連隊所属だったけか?、アクビを噛み殺しながら、


「よっと」


立ち上がり、もう一度背伸びした後。軽く肩を竦めていた。




『皆さん静粛に!、剣の部決勝は、ケレル殿下の天覧試合となります。よって殿下からお言葉である。静粛に!』



━━会場にいる。観客全てに聞こえるよう、拡散魔法を使っているようだ。



徐々に会場は、静粛に包まれる……、



熱い眼差しが、観覧席にいるケレル皇子に集まっていた。



代々続く。アレイク王国の王族は、聖人アレイの親族であり、敬虔なアレイ教徒の信者が多い国民は、王族を敬う、それは歴代の王達が皆。名君ばかりであり、皇子と言うだけでも。民の尊敬を、一身に集めるのも仕方ない……、



切れ長のブルーアイ、憂いを帯て、会場の人々を見た、にこやかに微笑する姿は、絵画から飛び出した、英雄のように美しく気高い。



静寂のなかため息が、女徒達から漏れた。


『皆さん今晩は。僕は、今日と言う日を、楽しみにしてました!』


晴れやかな微笑を讃え。心からの笑みに、軽い笑いが起こる。


それに答えながら、


『若き英雄達に、盛大な拍手を持って、出迎えよう、この二人を……』


一礼して、ケレル殿下が座るや、




━━4つの舞台を繋いで、毎年剣の部決勝と、体術の部決勝のみ使用される。中央の演舞台に、

審判が上がる。



間もなく剣の部。決勝が行われようとしていた。


選手の紹介が始まった。


『ミザイナ・アルタイル、ファレイナ公国、聖アレイ学園、四年生、昨年、一昨年剣の部優勝、ミザイナ部隊長』


二人の経歴が読み上げられる。

ケレル殿下の傍らに控える。カレイラ少将を見れば、微かに頷かれた、感心したように微笑を深める。


『オーラル・ハウチューデン、聖アレイク王国、二年生、昨年体術と剣の部でベスト8、本年度全ての競技において、ベスト8の栄誉を得ました』



━━おおお……ドヨドヨ……、



違う意味の驚きによって、会場のみならず。カレイラ少将すら興味を持ったようだ、


『ミザイナ部隊、所属、なお本年度、武術大会においてミザイナ部隊は、槍の部以外、全て優勝しております』


おおお!、興味が、興奮となり、観客のボルテージが上がる。


二人が、舞台場に上がり相対した。

それぞれの獲物を手に。ケレル皇子に一礼して、身構えた。


『剣の部、決勝開始!』


審判である。教諭の合図で、二人同時に、飛び出した。神速を誇るミザイナの斬撃は、まるで鍔より先の刃部分が、消えたような錯覚を、カレイラにすら与えた。左右同時に、剣が振るわれてる。そう思わせるほどの双撃。


「ほほ~う、今のをいなすか、お前はやはり面白いよオーラル!」


艶然と笑み。ミザイナのスピードが、さらに上がる。



オーラルの劣勢、カレイラから見ても明らかで、あれほどの劣勢でありながら。よくギリギリの間合いを保ち。受け続けてると。感心するほどだ。



試合が始まり。早くも二分が過ぎていたが、当初のミザイナ有利の下馬評が、徐々に覆されていく。未だ有効な打撃は一度も決まらず。オーラルはひたすら耐えていた。だがミザイナのスピードが落ちることはない、凄まじいスタミナだ。



「これは……まさか?」


「どうしたカレイラ」


珍しく興奮した様子のカレイラに。


「少しずつですが、彼はミザイナ嬢の神速の動きに。ついて行っておりますな」


試合前までは明らかに二人の実力は、覆すことが出来ない程であった。それがこんな僅かな時間で成長するなど聞いたこともない、実力者にしか分からぬ変化。それは見るものに凄まじい衝撃と、感動を与えるていた。ケレル殿下は気が付かれないようだ。それ故歯痒く。これ程の者が、学園に居たのかと嬉しく思った。


「ほう……、剣姫のスピードに付いてくか……」


ここでようやく流石は目が肥えてる。ケレル皇子も気付いたようだ。



ざわざわ……、会場では。例年にない。見応えある烈戦に。息をするのも忘れ。ただ観客は見守っていた。

端での評価では、ミザイナ圧倒的な優勢が、今や互角に近い戦いを見せているのである。



いつしか二人は、立ち止まる。周りの声など聞こえないかのように、息き詰まる均衡。張り詰めた熱気が。二人の中間に確かに横たわるようだ。まるで空気がパンパンの風船の前で、刃を突き刺してるようなジリジリした空気のなか、一瞬にして、均衡を破る。



ミザイナが、全身に力を溜め始める。刃を潰した刀身に、剣気を宿して行く。


「アルタイル流……、剣技『流閃』(りゅうせん)」


突如。青い光が、オーラルの身体を貫き駆け抜けた。


「ぐっ……、今のは………」


突如として、オーラルの身体を突き抜けた、凄まじい衝撃波によって、脳震盪を起こして、オーラルは崩れ落ち。気を失っていた。


「まさか……、この技を使わされるとはな…」


全身…根こそぎの気力を失いながら、満足そうに笑うミザイナ、その時腕に鈍い痛みが走り顔をしかめた、訝しげに痛む腕を見て息を飲む、腕の痣に今ようやく気付いたからだ。


「オーラルお前、あの一瞬で……」


『勝者……』


絶句して目を見張るミザイナの呟きは、大歓声に、勝者の名すら、打ち消された程だ。

稀に見る学生による名勝負。惜しみ無い拍手が贈られた。


ケレル殿下は、満足そうに微笑む、


一方で、カレイラだけが驚きに目を細めていた、


「あれは……わざと負けたのか?」


興味深そうに、オーラルを見ていた。



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