大佐ですが何か?
プロローグ
━━━ケレル殿下暗殺━━。
━━━カレイラ准将戦死━━。
━━次々と凶報。
━━訃報が……。
民の気持ちを暗くさせ。今日の空のように、曇天の如く不安を与えていた。
そんなさなか黒衣の長ノルカの元に、ある報告が届いたのは、
翌、未明のこと━━、
此度の王子暗殺はノルカにとっても、黒衣の里にとっても寝に耳に水。幾つか言い訳にしかならないが、黒衣の中でもノルカに次ぐ腕前の妹レイカが、ターミナルの街まで向かい、王女を影から見守る任についていたためと、護衛には若い小頭と若手を中心に配していた。それが気の緩みなのか警備のスキを突かれたことが、今更ながら悔やまれる……、
これは……、
黒衣の一族始まって以来の大失態である……。
ノルカは相手が誰か、すぐに突き止め黒衣の手練れを連れて、
追撃を開始したが……、
━━未だに状況は芳しくない……、
今考えれば、例え小頭のレイカが、いても、若くてもケレル殿下に付けていたもの達は、手練れだったのだ、まさか誰にも気付かれずに黒衣の護衛もろとも。消されて発見されることになるとはな……、
「くっ……」
奴は消えた、闇と呼ばれる。魔王の6将が一人にして、暗殺者によって……、
ノルカは血の滲むほど唇を咬みしめ、うっすら血を滴らせながらも、王に報告に戻る他ない虚無感に。言い知れぬ徒労を感じてしまう。
それから暫くして、昨夜配下から急使があった、カレイラ准将の死体の側に、吸血鬼を殺した聖剣が、刃こぼれ一つなく、突き刺さっていたのを回収したと。
(せめてオーラルに届けねばな……、)
この国の要は、もはやあの男と……、
「逃げられたようだのう……」
気配が突然生まれた、現れたのは、弓を肩に掛ける。初老の男である。
「ヴァレ・オーダイ……」
慌てる配下を、手で制した、ノルカもよく知った男だからだ。
こんな時に……、王の傍らを離れたのは、何故か?、問う眼差しのノルカに、オーダイが苦々しい顔をして、肩を竦める。
「殿下が殺されるまで、鷲も気付かなんだ」
悔やむような口振りであった。
「陛下は……」
黒衣の力では無理だと判断されたか………、
私にもわかっている……。目の前が暗くなる。
オーダイ准将は、きっと陛下の意向を読み取っただけだと言うのに……、
自分の自分たちの無力を、ただ噛み締めていた。勝ち気なノルカは、そんな自分が許はせなかったし、つい准将に対して刺々しくなるのですら承知する、
「陛下は?…」
その上で、敢えて訪いたくなるのだ、面白そうにノルカの反応を見ながらも、吐息を吐く自然体。憎たらしい程。落ち着いていた。
「カレイラの小僧が、陛下の護衛を作っていた、鷲の小倅がおるわい」
あの者達か……、兵に向かないが、何れも。ずば抜けた技能を持っていた……。
カレイラは、特殊技能をもつ兵達を集めていた、それはケレル殿下の思惑もあろうが、オーラルをこのまま王女様の護衛にしとくには、色々とあった。その代替えとしての王族の護衛部隊を、密かに作るつもりだったかもしれない……。
今となっては解らないが、
「あやつらが、戻る予定だからの~、鷲が城におるより、おまえさんに。手を貸す方が、有意義じゃろ?」
「あう……」
痛いところ突かれた、正論だった……、皇子の暗殺者を例え見付けたとして?、ノルカと同等の手練れが殺されたのだ、ノルカの腕で果たして勝てるか……、疑問である。
「さてさて、ギルバートの小倅は、良いとして、荒れるかもしれんな……」
准将が言わんとしてることが分かる。その事はノルカが一番痛感していた。自然と歯噛みする。
国の……力ある重鎮が減り、跡継ぎのケレル殿下を失った今……、
最早ミレーヌ王女しかいないのだ……、
貴族達は、自分たちの子を……、
姫の婿にと、足場堅めに動き出した。国内の混乱が予想される。
明日にも戻られる王女が、国内の混乱に拍車を掛けるか………。
あの優しい姫が……、憐れに思えた、
(貴族がどう動く?、)
荒れるのは、目に見えていた。
さらに……、
聖騎士。あれほどの力を見た以上……、魔王と、内通する貴族が、出かねない……、
最大の問題は……、
貴族達の息が、濃厚な、近衛連隊のみが……、
無事であったこと……、何かあった場合、過ぎた権力に、溺れる者が現れるに違いない。
━━━最早………。
ノルカ達黒衣が、動いて、どうこう出来る。問題ではない……、
もうノルカには、手が出せない、政治的問題である。国王は、貴族の増長が起きぬよう。手を打ったようだが……、
━━━カレイラ師団、駐屯地、第1分隊舎、
ジン・ゲルマン中尉、
ロート・ハレス中尉は、押し出されるように、階級が上げられた。先のリドラニア公国との戦で、功績を上げたからと。表向きは……そうなっているが、
『オーラル・ハウチューデン、大佐就任』が決定された、帰還しだい、オーラル師団が、再編成される運びである。
異例の事だが、ラドワニア神国の救国の英雄オーラルの名を、大々的に押し出すことにしたようだ。
国としては苦し紛れ。一応は政治的配慮がなされた人事であった。
さらに……、兵の人員不足が問題となっていた、
特に壊滅的被害を受けた元カレイラ師団、ガイロン重騎士団には顕著であったのだ。
だからと言って戦士学校に入ったばかりの新人が、配属されるのはな………。
━━━先行きは暗反たるもの………。明日、予定ではオーラル一行が、ターミナルの街に戻る予定である。
一方で、カレイラ准将の留守を預かり。幹部で唯一無事だったアロ補佐官は、人事でオーラル大佐補佐として慰留する事が決定していた………、
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━━━中継の街を抜けると、気候が激変していた、
急に肌寒くなったので。
女性陣は慌ただしく、途中買い求めた、厚手のコートを羽織ることにしたようだ。
「ふう~」
肌寒さが緩和され、クエナは数日前に、見た自然の脅威の光景を、思い出した……、
「あいつどうしてるかな……」
ふっと我知らず独りごちる。脳裏に浮かぶのは一人の男のこと。以前友人のミリアと休日を過ごした時出会った男性がいた、
(オーラルやミリアに迷惑かけたけど……)
二人は意気投合して、密かに付き合っている思い人の顔が浮かぶ、この旅で始めて出会う不思議な亜人に触れたり、はぐれワームに襲われたり。
様々な経験を経て、クエナは自分の気持ちに気付いていた、真面目で、不器用な自分と似た……、
小さく思いを吐露した。
「会いたいな……」
旅は、驚きの連続であった、実り多い旅も間もなく終わる。辺りの景色が、水晶混じりの鍾乳石柱に変わり始める、
やがて……、
大洞入り口、
ターミナルに。坂に差し掛かかる。
徐々にスピードがあがり、風が冷たく肌を刺すような。凄まじいスピードで、土竜は急坂をかけ上がり…………、
ターミナルの街……、
━━駅舎に到着する━━。
オーラルがギルドで、手続きを済ませ交易品として、余分な砂糖、銅を含む、小麦の乾燥した物、織物の品をギルドの仲介に依頼して、売り上げは、オリベ老の厩舎に振り込みを頼んだ。
「Jr.お疲れ様、また頼むよ」
労を労い、駅舎の厩務員に、途中で手に入れた、はぐれワームの肉を分けた。Jr.にも与えるよう頼む。
━━その間、一同には先に、上の街に上がってもらった。
━━━オーラルの帰還を聞き。オリベ老、厩務員数人。見習いを引き連れ、さらに常駐してたドワーフの職人までが、やって来て挨拶も早々に、新しい連結車両の点検をはじめた。
「お前さん、大変なことになっとる。上の街に急げ!、王宮から迎えがきちょる。この新しい連結車両のことは、また聞くから」
オリベ老にせっつかれ、渋々。自分の荷を手に、上の街に上がった、
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…………沢山の人々が集まる中。沈鬱な、民の顔。重い空気が澱のように深く沈む。
嫌な……予感がした、住人に見守られた姫達を見つけた……。
「………姫様?」
血の気を失い、真っ青な顔をしたミレーヌ姫が……、オーラル見つけ、ほんのり信頼の色を見せた。
「オーラル大佐、護衛任務ご苦労様でした!」
近衛の少尉の校章を付けていた護衛小隊隊長から、言われた大佐?に、一瞬訳も分からず聞き違いかと……、
首を傾げてたら。若い仕官は、やや緊張した面持ちで、命令書と、オーラル宛名のある分厚い報告書を渡された。
怪訝な顔のオーラルに、仕官は青白い顔をして、一歩下がる。
━━オーラルは最初の一文を見てまさに、我が目を疑っていた……、
カレイラ准将戦死……、
ケレル殿下暗殺、
(信じられない……)
カレイラ准将には、あの剣を、わざわざ渡していたのに……、
「姫様……」
侍女を務める。ジーナに支えられ。一瞬こちらに視線が送られたので、小さく頷き返した。
近衛連隊が、急遽迎えに来た理由が分かった。
姫様は……。ただ一人残された女王になられる御方た。
懸念されていた貴族の政治的介入である。今まさにそれが現実的に、いやそれ以上に━━、
━━次代の女王となる姫を。守る必要があると判断されたのだろう……、
一度セレスト千騎長とお会いしてるが、貴族らしくない武人であった。
ミレーヌ姫と侍女ジーナが馬車に乗り込み。走り去馬車を見送ってから、
オーラルははたと気付いた………、
姫様は、オーラル達も乗って来た馬車で、帰ったと言う事実に……。
と、言うことは……、
馬を借りて、帰るしかないのだが……、
「ちょっと待った!。私は、馬に乗れないのよ」
慌てるミラ。仕方なく、クエナが、ミラを前に乗せて行くことになった。同じく馬に乗れないエルをカールが、オーラルは、自然とリーラ侍祭を前に乗せ、王都に急いだ。




