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少尉ですが何か?改修  作者: 背徳の魔王
第一章
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予選会の合間に



━━武芸大会3日目、



日差しの柔らかく、風の穏やかな午前中、弓の競技大会・決勝が行われる。弓の競技は、非常にシビヤで繊細な集中力が、問われるからである。



校庭に集まった、予選を勝ち抜いた8名は、

校庭の端に。決勝用に特別設置された的を、狙うらしい……、一見予選よりは楽だと写るが……、



実際は違う。競技者にしか分からない難しさは、周りから見えてこないので分からないが、競技をする立場に立つと。あまりの難しさに表情が変わる。風の魔法による妨害があるためだ。打ち手は、風を読むシビアな冷静さと。鋭い注意力、さらに高い忍耐力を必要とする。難易度の高い競技となる。



この競技が難しい所は、風がどちらの方向から吹くのか、まったく分からないよう。ランダムに決められていて、大変な精神力を必要とする点だ。


競技で使われる矢の数は、全部で五本、競技内容が段違いに難しくなるので、矢の数は少なくなるが。予選と同じ採点方法が使われる。即ち的に当たった数。正確性。的に刺さった矢の場所などにより。得点が変わるのは基本とのこと。最初にオーラル、ピアンザは三番手になる。


プレッシャーの掛かる。一番手に、他の生徒は息を詰めて見守った、


「オーラル・ハウチューデン、始め!」


黒塗りの弓を構え、ゆっくり矢をつがえ。弓を引いた。


頬に当たる風は、向かい風、やや下に流れている。的より。右斜め上を狙う。




━━いま!



スコン、歯切れのよい音。第一射で、的に当てていた。

静かな感嘆の吐息が漏れた。

続く、第ニ射は外れ、

第三射は、真ん中を射抜いた。第四射は真ん中から外れ、

第五射は、再び真ん中を射抜いた。

次々と、競技が進められ、ピアンザの番になった、 そして……、五本全て。真ん中を射抜き、ピアンザが優勝。

オーラルは四位だった。



━━午後、演舞場では、

槍の大会・予選を勝ち抜いた。生徒達が、集まっていた。4つの演舞台の内、2つを使い、同時に、槍の部準決勝が行われたが、オーラルは、準決勝で敗退した、相手は、前年の優勝者だった。



━━明日は……、最終日。



体術の準決勝が、午前中に行われ。お昼を挟み。体術の部決勝が行われると言う。

王族も観覧しにくると言う話で、国中が盛り上がる中。多くの学生や近隣の商店から、多くの人出が校庭に集まっていて、明日の出店準備に奔走していた。

明日、明後日は、学園の休日で、明日は露店のために校庭が解放される。出店する生徒。またアルバイト予定の学生は、夕方から慌ただしい。今から明日の準備に忙しいのだ。この日ばかりは、沢山の商家も出店する。父兄や国内外から、沢山の人が、学園に足を運ぶ。



年に、一度のお祭りである。

朝から4つある校庭には、沢山の屋台が建てられていた。学舎から見たら。色とりどりの布で飾り付けした、異国情緒たっぷりな屋台や、可愛らしい小物を扱う店など、趣向こらした、様々な出店が、目には実に楽しい。中には聖アレイ教の孤児院からも、バザーが出店され。普段入ることのない、生徒の近親者が、目を細め屋台を周り。大いに楽しむ日なのだ。




お祭りを飾る。最後は剣の部決勝である、決戦は夕方からになっていた。



━━━オーラルの事情。



時間は少し戻る。

早朝━━。

日も昇らぬ朝靄の中。

姉と母を、起こさぬよう気を配り。暗い道を、聖アレイ教のある。東大通りに向かう。



王都の外門は東と南があって、荷馬車、キャラバンは東門の検疫を受けてから入る。だから門から近い大通りは、交易品等扱う問屋である。商会が並んでいて。早朝から店先に。次々と馬車が到着していた。



オーラルがお世話になってる。商会に顔を出すと、周りの店と同じく人足が集まっていた。中でも。スキンヘッドの大柄な人足頭が、厳しい顔つきで、商会の番頭さんと、話し込んでいた。 荷馬車は着いてるようだが?、疑問に思いつつ首を捻る。


「おはよう~…、ございます?」


すぐにオーラルを認め。柔和な笑みを浮かべていた。しかしすぐに番頭さんが何事かと呟き、二人は見合い、納得した。


「おお!、ちょうど良かった、急で悪いが、大切な用を頼まれてくれないか?」


奥からデップリした体格の商人が出てきてそう声を掛けられた。怪訝な顔をしたオーラルの眼差しにほんのり苦笑を浮かべて、人足頭はつるりとスキンヘッドを撫でた。無論迷いはあった。オーラルは学生でしかない、


「実は…………」


今日、学園に搬入予定の品物が、まだ来てないので、様子を見てきて欲しいとのこと……、


幸い、今日は、剣の部決勝進出者は、

試合前の一時間前までに登校すればよい。休日扱いになっていた、快くオーラルが快諾すると、商人は安堵の表情を浮かべた。


「今……家で、馬に乗れる人間がいなかったから助かるよ。今日の分は、それでチャラだ」


有難い話だ。まだ来てない荷馬車を見つけるだけで、1日分の賃金が得られるのだ。そう……、簡単な仕事だと思っていたこの時は━━。



商人から、馬を借りて。見事な腕前で、誰もいない街中を、城門に向け、オーラルは馬を駆った。



外門の受付で、商会の鑑札を見せ。まだ来ていない。商会の荷馬車の事を聞いた。


「ああ確か、あの商会の荷馬車は、ターミナルから来るはずだ……、南の丘陵を迂回して、西の街道を何時もは使ってたはずだよ」


親切な門番が、詳しく説明してくれた。


「ありがとうございます」


「行くなら、気をつけるんだよ、一応無いとは思うが、旧街道のあの辺りにある森は、ウオルフの群れが住み着いたと、報告があった」


「気を付けます」


門番に、礼を述べ。一路。西の街道を目指した。




交易道から少し外れた古い街道である。西の街道は、ターミナルから荷を運ぶ馬車がたまに通る。閑散とした畦道である。少し外れた途端に。灌木が生い茂り。馬車の足を遅らせる。


間もなく山に続く森の入り口が、西の街道沿いにあるのだが……、枯れた木々が、人を遠ざけるように。入り口を隠すよう重なりあっており。人通りが無いから、不気味な静寂と相まって。森に近付く旅人はまずいない。


ここ数年前から、ウオルフの群れが、山から降りて、森に住み着いて、余計……西の街道を旅人が、使わなくなったと門番が言っていた。数日前から西の街道を使わないよう。商会にはお触れが出てる筈だと言ってたのだが……。


「この轍は、まだ新しい……」


山に続く道が、何故か枯れた木々で塞がれてる。そのことに違和感を覚えた。いくら人通りがなくなったと言えど……。


「轍は……、森に向かってる?」



嫌な……、



予感がした。



他にそれらしき痕跡はない、轍の周りに、複数の足跡が、深くついている。


「これは……、争った後だな……」


相手は、山賊の可能性がある……、

空を見上げていた、まだ時間はあるな……、深く深く嘆息していた。



……意を決意したオーラルは、馬を、森に向け。走らていた。


「俺は何をしようとしてるんだ?」


頭の中で、僅な葛藤があった……。商会の人間がどうなったか……、少しでも調べ。手に負えない場合は、門番に知らせればいいだろう……、

そう自分に言い聞かせるが。


「本当に……それでいいのだろうか?」


疑問を口にした。



本来オーラルの仕事は、轍の跡を見つけた所までで十分であった……、そのまま引き返し人足頭に、事を伝えれば終わる……、


゛本当にそれだけで、いいのだろうか?゛、


疑念が渦巻いた。馬を走らせながら、悔しい気持ちが溢れてきて。ただ沸き上がる気持ちのまま……、馬を走らせていた。



━━きっと……、


今戻ったとしても、非難する者はいないだろう……。



フロスト騎士団なり、近衛連隊、ガイロン重騎士団、

それとも…

『オールラウンダー』の称号を持っている。カレイラ少将が出れば、すぐに片付く……。



そんな些細な事件。そうは思った、


『だけど……、』


唇を噛み締めていた。顔見知りを、見捨てられない。ただ……、

自分の出来ることはする。それが父の教えだ。自然と手綱を握る手が、白くなっていた。



━━━鬱蒼と、道なき道を奥に進むと。やがて……、


僅かな気配と違和感を感じ。馬を止めていた。近くの灌木に繋ぎ、馬の周りに、簡単な魔法を掛ける。馬の匂い、気配を消す。簡易魔法である。嘶く馬の声すら。少し離れたら消えていた。



「よし。上手く魔法が使えた」


安堵した。



━━雑木林から、少し顔を出して、辺りを伺い見ると。小さな炭焼き小屋がすぐ近くにあるのが見えた。



━━小屋の側に、荷馬車が無造作に置かれ。馬は、炭焼き小屋の側にある樹に、繋ぎ留められていた。

近くに、見張りは…いないな……、辺りの気配を伺い。観察してると、

小屋の隣に、炭を置く簡易のバラックがあって、バラックの横に。炭焼き用の薪が積まれていた。



彼処だと。当たりを付けたオーラルは、独特の擦るような歩法で、足音を消すように炭焼き小屋まで小走りで近寄り、壁に耳を当てる。


「中身は、どうだ?」


「クソ!。食べ物ばかりだ」


「ちっ、しけてやがるぜ」


「あの二人…、どうする?」


「顔を見られたな。彼奴はは殺すしかないな、おい酒だ!」


イガラぽい痰の絡んだ怒鳴り声が、聞こえてきた。今すぐには殺されないだろう……、酒盛りするようだし……、




━━だが……、



街まで戻る時間がない……。


『武器がないのが痛いな……』


炭置き場のバラックまで回り込み。僅かに空けられてる。木枠だけの窓から、中を伺い。何人いるか、様子を伺うと……。 二人の男が、縛られ転がされていた。



微かに炭焼き小屋から。扉の開く音が聞こえた。素早く茂みに隠れ。小屋の方を伺うと、すぐ小屋から粗野な風貌の男二人が、小屋の裏にある小さな洞窟に向かって歩いて行くのが見えた。二人が、中に入ったのを見届け、



素早く小屋の入り口に戻り見ると、僅に隙間を発見して、小屋の中を伺う。中には山刀をテーブルに置いて、男が3人座っていた。


『多くて7人と、見るべきだな……』


素早く、考えを巡らせる。

近くに落ちてた、太い木の枝を拾い。堅さを確かめた。



小走りで、洞窟の入り口に張り付き、素早く魔法を唱える。『ミュート』の魔法を使い。木の棒を手に。待ち構えた。



すぐに2人の男が、酒瓶を抱え、出てきたが、息を殺したオーラルに気付かない。

二人が通り過ぎた


『今!?』



瞬間━━。




後ろを歩いてた。男の頭を、打ち据え。一撃にて昏倒させることに成功した。


だが抱えてた瓶ごと倒れたがため、物音一つしないが、割れた瓶と中身が、前を歩く男の足を濡らした。



訝し気な顔で、振り返り。



戸惑いを浮かべ、



そして……、驚愕に変わり。怒りを露にして叫んだ。


が、どうしたことか、一切声が出ないことに目を見開いたまま、僅かな時間とはいえ棒立ちしていた。そんな隙を見逃さず。猛然と襲い掛かり、素早く昏倒させていた。



……2人の男を。縛り付け、洞窟の入り口に 転がした。


さらに、炭置き場小屋で酔っぱらっていた三人の男達に。眠りの魔法を掛けたら。あっさり昏倒する。



冷や汗を拭い。安堵したが、時間はない。急ぎ縛り付けられた、2人をバラックから救出に成功する。


繋がれた馬を奪い、3人でこっそり抜け出していた。急ぐ理由がオーラルにはあった。今使える簡易魔法では。魔法の効果が直ぐに消えてしま。今にも目覚めるはずだからだ。



やがて……戻らぬ仲間に、違和感を覚え。気付かれる可能性だってあるだろう……、だが此方は馬で逃げている。追って来るのは無理だと諦めてくれれば良いが……。



二頭の馬は、森の中を駆け巡り。

遠くで怒号が聞こえた気がしたが、三人は馬を駆り。命からがら山を下りて。街道に出てからも。馬を急かせ、どうにか街まで逃げおおせた。


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