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少尉ですが何か?改修  作者: 背徳の魔王
第四章
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友との約束事



「ああ~なるほど。道場潰れたんですね♪」


「てめえ………、いきなりご挨拶だな」


伝法な物言い、獣のような体躯、筋肉の付け方から。相当鍛えてるのが分かる。




━━━が……、




昔のような、ゾクゾクした。抜き身の刃のような、触れれば殺されるような恐怖を覚えない、


『今と昔か………』


当時は、血に飢えた獣のような眼差し、いつも勝利に貪欲で、常に相手の隙を伺うような感じで。誰も信用しない。探る目をしていた……、



だから彼女は周りから疎まれ。嫌われていた…。


あの当時。彼女は常に独りだった。



だが……。



それでもミラ先輩は、孤高の美しさに輝いていた……。



これでは……ミラ先輩は、ただの飼い猫だ……、



失望していた。



いや怒りすら覚えた、



だから……、



「弱くなりましたね先輩、残念です……」


わざと挑発する言葉を。ミラに投げ掛けた。


「テメー…」


ギリギリ……、

機嫌の悪かったミラは乗っかる。


「上等だ、今からたたんでやるから。裏にこいや!」


「ちょ、2人とも、たっ、隊長」


殺気立つミラに慌てるクエナ。それを放ってなお余裕の笑みを浮かべ後に続いた。内心でオーラルはほくそ笑む、



どうやら隊舎の裏側は、鍛練場となっていて、人数のいない第一分隊では、全く使われた形跡は無い。


「覚悟しろや、テメー、吐いたツバ飲むなよ、ハアアアア。オラオラオラ」


怒りが加わる。気合い入れた鋭い眼差し。

ユラリ、ユラリと左右に身体を揺らしながら、独特の歩方で。瞬く間に。オーラルが身構える前に、いきなり突っ込んで来るや、ズサザッ滑るように飛び込み。一瞬の飛び込みで、オーラルの懐に入る。



━━かと見せ掛けて、闘気だけ飛ばす業。本人は逆に気配を消して、オーラルの死角に入り込み。左右からの連打。



最早見慣れた技である。オーラルはバックステップにて、あっさりかわしていた。


「チッ、口だけじゃねえのかよ」


かわされたと見るや。素早くバックステップしてから、ミラはしゃがみこみ。前に出たオーラルの意表を突いた水面蹴り、

腕でパーリングしたが、しなやかな鞭のような蹴りを受け、軽く痺れた。


ミラは受けられた瞬時。追撃に出る。ひょいと腕の力だけで、二度目のムーンサルトを放つ、


ふわり風が木の葉を巻くように。

蹴りをかわしたオーラルに。今度は前中からの浴びせ蹴りを放つ。体勢を崩しなが何とかかわしたが、今度は片足を上げた体勢から、膝を柔らかくしたミラは、オーラルを追いかけるように。蹴りが伸びてきた。


仕方なく後ろに飛んだオーラル、


「よっと。へっ、今のもかわせるのかよ」


ニヤリ獰猛な肉食獣の笑みに。背中がゾワゾワした。


二人は喋りながらも動く。フェイントを入れながらの連打、廻し蹴りの爪先が、オーラルの前髪を揺らしていた。


ミラは接近戦から、肘打ち。避けたオーラルに、打ち下ろしの裏拳。ミラの腕を取りに行くが、ひょいっと手を引いて、離れた。オーラルは素早く体制を整えた。


「すぅ~~はぁ、ハアアアア!」


呼気を吸い込み。鋭く吐き出して、素早く溜めを作ると。ミラの体内に凄まじい勢いで魔力が溜まる。


「ガアアアアアアア!?」


魔力が爆発的に両足から放たれ。一瞬にしてオーラルの懐に飛び込む。

ミラの得意魔法。身体能力アップによって、常人ならば二倍のスピードで動き、三倍の攻撃を可能とする。しかしミラの場合だけは少し違う、素早さは常人の三倍、攻撃は実に六倍に上がる。


目にも止まらぬ連続パンチ、オーラルの視力では、僅な残像を捉える程度だが、身体能力アップによってうまく弾く、ミラの気が一瞬外れた。オーラルはチャンスと膝蹴りが、ミラの腹部を狙って放つ。


決まるかと思ったら、あっさりかわしていた、ゼロ距離の間合いから。必殺の撃ち下ろしの肘が放たれていた……、


ゾクリ、ヤバイ。オーラルの死角から、見せかけの肘打ちから同時に、膝蹴りを放つ。

ミラの必殺技『破砕』(はさい)である。


ミラの身体能力アップからの攻撃は全て、当たれば必殺である。手首を使ったパンチ、膝、肘の攻撃の全て、オーラルは紙一重で受け流し、なおかつかわしていた。しかも体制を崩したミラに、前蹴りをまともに食らわせるおまけ付きで、



これには予想外の破壊力があって、ミラは防御したまま吹き飛んでいた。


「くっ……、なによこの破壊力は」


防御したにも関わらず。ダメージを受けていた、痛みに顔を歪ませたミラは、怒りを顕にしていた。


「ちっ、こんなまぐれ当たりで、勝った気になるなよオーラル!」



━━確かに、技の一つ一つのスピード、破壊力こそ学園にいた頃以上である。当たればオーラルとて、相当なダメージを受けるだろう。


━━そう……当たればだ、ミラは確かに強い。ただそれだけで、今は怖くはない━━。



あの飛竜ワイバーンのような絶対的な恐怖も。ターミナルで戦った。はぐれワームのような、強靭な肉体もないミラは、所詮只の人でしかない、人ならば、癖や足の運び、呼吸の仕方。構えから次の動きが予測が出来てしまう。



今やミラは、それだけの強い武道家に、成り下がっていた。




それだけに……、




とても残念に思う、



『ミザイナさんと対極にある才能』



ミラ先輩なら、必ずまだ強くなれると確信した。


「先輩……残念です。やはり弱くなりましたね……」


地面に、這いつくばり、血の混じる唾を吐きながら、喚く。


「何でだよ……、嘘だろ……」


何かにすがろうとするミラの心を砕くように。


「ミザイナ先輩は、今の俺よりも強い……、きっと哀しがりますよ」


残酷なトドメ、だが、ミラには必要だと感じていた。


「これが……カレイラ准将と同じ『オールラウンダー』の力?」


蒼白に身を震わせる。クエナ、何時の間にか来ていたようだ。ミラの横を通る時。クエナだけに囁く。


「夕飯の支度します。泣き止んだら……、ミラ先輩も連れてきてくださいね」


優しく気遣う声音。驚くクエナに、苦笑滲ませるオーラルのお願だ。


「わっ、わかった」


どぎまぎしたが寂しげな横顔の。オーラルを見送っていた。



既に買い出しの点検を終えて、倉庫に綺麗にしまってくれたアロ中隊長は、食堂で何やら嬉々と大量の紙を持ち出して、鬼気迫る勢いで、何かを書き出していた、青白い顔だから、



余計━━不気味に映る。



オーラルは倉庫に行って、材料を物色しながら、思念を広域に送り出していた。


”美味しい料理をしますから、遅れないように”


オーラルは手早く、5人前の料理の準備を終える時だ。


「オーラル、エル来たぞ!、お前のこえ辿れたから迷わなかった」


ちびっこは元気である。


`お皿の用意頼めるか?´

「わかった♪」


素直に従うエル。身長が低いからか、食器棚から苦戦しながら、人数分のお皿を用意してくれた。優しい子なのだ。


「大丈夫だからね」


エルと入れ替わるように。クエナが、ミラを気遣いながら食堂にやってきた。オーラルと目が合って、ヒクリ泣きそうな顔をしていた。


「うっ…だって……」


不安そうなミラを宥めながら、どうにかテーブルに座らせるクエナ。オーラルは小さく頷いて、


「さて、久しぶりの再会です。少し豪華にしました」


腫れぼったい顔のミラの前に、デッカイ鳥の丸焼きを置いた。


「これ……」


驚くミラに、片眼を瞑り、オーラルはさらに沢山の料理を次々と並べ始めた。




━━━結局。アロ隊長は、最後まで何も口にせず。ぶつぶつ言いながら帰った、


「なんだろうあの人は?。」


ようやく覇気が出てきたミラは、帰る直前、軽くオーラルの胸を叩き、


「強くなる。ミザイナより………」


ミラ先輩の目には、かつての━━野獣の眼差しが戻りつつあった。


「ミラ先輩なら大丈夫」


小さく笑う、オーラルに対して、ばつが悪そうに赤い顔しながら呟く、


「だから……待ってろ」


それだけ言うと走り去っていた。


食堂に戻ったオーラルの耳に。少し迷うような声が聞こえた。


「エル泊まる。クエナいいか?」


不器用に尋ねていた。クエナは優しい顔をしていた。


「構わないわ、貴女の部屋は用意してあるから」


気遣うよな優しい口調である。そしていきなり抱き抱えられて。エルはクエナの膝に座わらされていた。エルの顔に戸惑いが浮かんでいた。


「女の子なんだから、髪くらいすかなきゃね♪」


慣れた手つきで、エルの髪をすいてやる。


「ありがとう……クエナ」


いつの間に………、感心したオーラルは、よしっと腕捲りして、片付けを始めた。



その間も二人は、少しずつではあるが、何か話てる様子ある。まるで久しぶりに会った姉に、恐々なつくような姿である。


紅茶を二人に入れて食堂に戻ると、すっかりエルはなついていた。もともと甘えたい年頃のエルと、優しい性格なクエナ、波長が合ってたのだろうな……、


「ケイタとの約束。少しは果たせるかな?」


柔らかな笑みを浮かべ。囁くように呟いていた。





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