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少尉ですが何か?改修  作者: 背徳の魔王
第四章
40/123

新人少尉ですが、お金を使わないで食料を買って見ましたが何か?


━━翌早朝。



今日は週末である。そうなると毎週末、中央公園で朝市が立っていた。



日も登らぬ朝。まだ寝ていたクエナを叩き起こしてから、荷馬車に押し込むと。まだ眠そうなクエナを御者台に座らせて。急ぎオーラルは倉庫に山積みされた余分な砂糖から、幾つか馬車に乗せて。驢馬に魔法を掛けてから走らせた。



━━クエナからは、現状第1分隊の財布は、アロ中隊長が握ってるとは聞いてはいた……、だがあんまり分隊に金が無いことも含め。オーラルは仮説を立てていた。


現在カレイラ師団……、


多分だが……、主だった師団は、食料難に陥ってるのではないか?と。それを確かめるためにも情報が必要である。



先程までオーラルは、クエナ寝てる間に。第1分隊の隊舎全部と、使われていない部屋と。備品倉庫、武具倉庫等も調べ廻ると、真新しい隊舎の見た目と違い……、必要な備品が、ほとんど用意されていなかったことがわかった。これで嫌な予想があっていたと分かったのだが…………。



これでは軍とは名ばかりの、お粗末な状況である。思わず小さく嘆息を漏らしてしまう。御者台に乗ったオーラルを、ようやく目が覚めてきたクエナが、


「だがオーラル、私もお金は……」


不安そうに。それでいて切実な問題を口にした。


「必要ありません」


バッサリ言って退けていた。思わず目をぱちくり、そばかすの見受けられる顔を思案げに、眉を寄せていた。


「そっ、そうなのか?」


戸惑いを隠せずおずおずと呟くクエナを乗せた荷馬車は、クエナが動かすよりも機敏で、とても年老いた驢馬とは見えなかった。


「オーラル、ラバンだが……」


気になったこと訪ね聞く。


「餌が足りなく。塩不足そうだったので、朝与えときました。それとマッサージを入念にして、回復魔法を使ったら、すっかり元気になりましたね」


オーラルの命令を忠実にこなしながら、時おりこちらを伺ってるような気がした。馬車はゆっくりだが、淀みなく駐屯地を進み。随分と早く。



━━頓所入り口に着いた。


「では、第1分隊は買い出しに出るんですね」


「はい、アロ中隊長が出勤したら、お伝え下さいますか」


「承知しましたオーラル少尉」


書類に記入を済ませれば、荷馬車をを走らせる。アロ中隊長はまだ出勤してないようだ。


「そうか伝言がも頼めたんだな」


あまりに広大なカレイラ師団駐屯地では、王都から通う者の為。駐屯地入り口で、仕官は、時間と名を、記名する義務があった。


「成る程……その手があったか」


しみじみ実感のこもったクエナの呟きが、苦労を物語る。



━━荷馬車は、ゆっくりと商家の並ぶ東の大通りに向かう━━、



途中、オーラルはクエナに断りを入れてから。市場に行く前に馴染みの商家に寄っていった。荷馬車に気付き、顔を出した番頭が、オーラルを見るや笑顔で、出迎えた。


「久しぶりだなオーラル」


「おお~、オーラルじゃないか」


「ご無沙汰してます」


顔馴染みの人足頭に声を掛けてもらい、商人を呼んで貰えるよう、話を通した。程なくして━━。


「おお良く来たなオーラル君。何でも無駄な砂糖を売りたいそうだが?」


学生時代は、人足のバイトで、大変お世話になっていたし、先日のターミナルの件でも。儲け度外視で国中を回ってくれたと聞いている。気心も知れていたし。だから隠さず事情を話した。


「昨日なのですが、新しく配属された部隊ゆうえか、未だに食料配給が乏しく、砂糖しか届いて無いんだ……、仕方なく、買いとってもらい、その代金で、食料を買うことにしてね。一応上司同伴で来ました」


「よっ、よろしく頼む」


自分にお鉢が回って来るとは思わず。しどろもどろで声が上擦っていた。


「てな訳で、何時もお世話になってる。貴方ならばとまいりました」


片目を瞑り。一部嘘を混ぜる。そこは情報通の商人、オーラルの嘘に気付いたが、あえて了承してから荷を見て。早速持ち込んだ砂糖の袋を開けて調べる。


「ほうほう。オーラルの頼みだ良かろう」


満面の笑みで、商人と値段交渉に入った。



やはりと言うべきか、砂糖はかなり今は高騰していた。相場の情報を商人から引き出して、情報料代わりに1割安く売ると申し入れる。その代わりオーラルが欲しい情報を急ぎ調べてくれるよう耳打ちしていた。商人の信用を得る方法は幾つかあるが、相手に旨味と此方に実益をちらつかせる事だ。商人はいたく喜んでいた。


「主人。俺が配備されていた隊舎には、荷馬車に乗せきれぬ砂糖がうず高く倉庫に積まれていた。それも頼めるかな?」


たっぷりと脂肪を貯めた商人は、満面の笑みで了承する。



━━砂糖を売った代金の一部で、商人の扱う小麦、油、乾燥果物も樽買いして、明日にでも、砂糖の買い取りのついでに、届けて貰う約束をする。


「おそらく……、かなり大きな商いになりますよ」


意味ありげな顔のオーラルに、たるんだ頬を弛ませ。


「わしが自ら届けよう」


満面の笑みの商人と別れた。



それから中央公園の朝市に顔を出して、塩漬けの魚、新鮮な野菜、肉等、ランタン、それに使う油、鍋、金槌と釘、必要な備品まで、沢山購入したが、ズシリと財布は未だに重い━━。



さらに足りない物資を一通り買い求めてから2人は、驢馬と荷馬車を、馬屋に預けて、一息入れるため近くの店に入る。


「オーラル……貴様は、色々なことを知ってるんだな」


やたら感心するクエナに、苦笑しなする。朝食の定食を待つ間。簡単にオーラルが調べた現在の国内事情と、交易が滞った現状に就いて説明する。さてどうなるかはまだ分からないが、内部的資産があることに、軍は気付いてないことも加えながら、簡単にレクチャーすることにした。


「クエナさん、先の病の蔓延もですが、海上での交易が、規制されたのは知ってますね?」


「うむ。沢山亡くなった……」


「聖アレイク王国は、塩や海産物が豊富で安く、売られてます。塩漬けにしたり、または塩、魚醤が豊富に作られてます。一方で元々、高価な砂糖等は、南大陸から、船舶での交易に頼ってました、それが先の嵐から、天候不良が続き、船の入港が減ってます」


もっとも最近は土竜馬車で、多少交易はされてるが、土竜馬車では、一度に運べる量は限られていた。

それでなくとも砂糖は高騰してるのだ、逆に南大陸の国々では、塩不足に苦しんでると聞く。

確かに、南大陸も海はあるが、海岸線には岩壁が多く、塩作りに向かない土地柄だ、僅かだが作ってるとも聞くが……、全ての国々、その国の民に、必要な塩を提供するには足りないのだ。

内陸ならば岩塩が取れる場所もあるが、交易に向かない国が持ってるため、ファレイナ公国では依然として厳しい。


━━過去……アレイク王国では、豊富な財で、大量に色々な物が、買われた経歴がある。


「あの砂糖は、15年前に買われた物ですね」


「15年……、だっ大丈夫なのか?」


「はい、味を確かめましたが、品質は変わってませんでした。最高級の砂糖でしたよ」


それから捕捉として、砂糖が腐らないと説明すると。不安そうな顔が、毒気を抜かれたような顔になったのが印象的だった。はっとしたクエナの顔が輝いた。


「これは使える!、使えるかもしれんな!」


急に立ち上がり、鼻息荒く息巻くクエナ。


「続きは、ご飯食べてからにしましょうね」


たしなめられてしまい、シュンと落ち込む起伏の激しいクエナであった。



色々な事があったが、二人を乗せた荷馬車は、随分と日がだいぶ高くなる前に、隊舎に戻った。


すると既に出勤していたアロ・ジムス中隊長が待っていた。傍らに見覚のある女性が……あれは?、


「初めましてオーラル・ハウチューデン少尉ですね、

アロ・ジムス中隊長だ、伝言は聞いているよ」


気になったが、着任の挨拶を先に済ませた。


「オーラル・ハウチューデン少尉です。昨日より、お世話になっております」


「早速買い出しかい?、費用はどうしたのかな」


経理など細かい出費も、経済的に厳しいカレイラ師団では、日々節制してると聞いていた。クエナが事情を話すと、最初こそ訝しげだったが、表情が一変した。実に興味深そうに唸る。


「なるほどなるほど……、それはそれは……」


キランと眼を光らせるアロ中隊長に、当面必要な金銭を引いた、余りを渡す。


「明日その商人と話したいが、可能かね?」


「はいそのつもりで話は、通してありますから」


「なるほどなるほど……」


実に満足そうな顔をして、上機嫌に指を鳴らしながら、オーラル達が買ってきた品の検品を始めた。


傍らにいた、手持ちぶさたの妙齢な女性は、文句らしきものを呟いていた。


「何で私が……」


不平不満?、

思わず苦笑しながらも。


「ミラ先輩お久しぶりですね」


気付かないので、オーラルから声を掛けた、ジロリ不機嫌な顔で睨まれたが、視線が合うことしばらくして、ぱちくり何度か瞬きを繰り返した。多分考えるように眉を寄せた。


「……オーラル、ミラ少尉と知り合なのか?」


クエナの一言で、


「ああー!、ミザイナんとこのオーラルじゃんか」


大声が、木霊した。

相も変わらずのようだな。彼女ミラ・バウスタンは、アレイ学園最強の武道家と呼ばれていたのだ。


毎年入学式に行われる武芸大会にて、体術部三連覇の偉業をなした武芸者であった。あのレイナを子供扱いした凄まじい力量の拳士だった。


そもそも……体術のみでアレイ学園の『特待生』をしていた逸材である。ミザイナと一つ違いだが、気があったのか、2人は、よくつるんでいた。オーラルが、ミザイナと出会うきっかけを作り、オーラルがミザイナ部隊に入った理由を与えた人物である。


『ミラあんた!、本当に、卒業するのか』


希望すれば後二年、学園に残る事が許される『特待生』だったが、


『あんたみたく、重荷を背負って無いんだ。だ・か・ら・あたしはさ夢を追いかけるのさ~』


『ミラ……』


あの気丈なミザイナが、一度だけ見せた涙だった……、だからオーラルはミラの代わりに彼女の力になることにしたのだ。




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