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少尉ですが何か?改修  作者: 背徳の魔王
第四章
38/123

少尉ですが何か?

プロローグ




━━━聖アレイク王国の東。



この広大な土地は

かつて、王家に連なる名家、エトワールが家が、長年所領していた広大な土地である。



現在━━━。



カレイラ師団の所領となっている。



カレイラ・バレス准将とは、『オールラウンダー』の称号を持つ、次期国王ケレル皇子の右腕である。

しかしカレイラにも悩みは尽きない……、


一番の悩みは、師団のこと。大望故に様々な困難に晒されていた。その最たる物は、設立して日が浅いことだ……、


いまだ兵は少なく。多くは戦士養成学校の卒業生と引退間近の兵士が多く、これから先主だったカレイラ師団の登用予定兵士である。



━━聖アレイク王国には、建国当初より国防の要たる三つの師団が存在していた。


ガイロン師団、


王家を守るため発足した近衛連隊、


人々に癒しと生活を守る目的で、アレイ教団が設立したフロスト騎士団。その3つの師団に比べ、



新兵士が多く、事務片の余剰兵士を押し付けられた為に、経験不足の兵が多く。有能な人物不足、さらに人員不足は深刻だった。カレイラ自身にも問題がある。それは生まれが、下級貴族故に、実家の力不足が招いて、資金的にもぎりぎりであること。ケレル殿下もそこら辺の事情から、多少なり気にしていた。そんな矢先━━。



戦士養成学校の有用性を示す事件が起こる。



妹姫を狙った。誘拐テロを未然に防いだことで、有用生を示せた。カレイラにとって追い風となる朗報であった。それにより国内外に広く名を上げたカレイラ准将だが、あまりにも名が知られ過ぎたと、深い懸念があった……、『オールラウンダー』となった訓練生がいる。その事実を多大なる宣伝として使うことに決めた。それこそが……国内外の眼を、彼に向けさせる毎に成した成功である。



━━報告書によれば、今年度の訓練生募集に対して、募集人員が増えていると言う━━喜ばしい報告があったばかりだ。


とは言え。魔王の暗躍は憂慮すべき問題だ、

不穏な噂は、政治を遅滞させ。民に多大な不安を与える。そこでケイル殿下は、妹姫を救った人物。オーラルを調べるよう黒衣に命じた。詳しい家族構成をわざわざ調べた資料が届いた。殿下が眼を通せと言うことだろう……、


「なるほど……エドナ筆頭は、彼の為に動いてたのか……」


案外『オールラウンダー』の称号を与えるそのためだけに、カレイラすら手玉に取った。その事に気付き嬉しさと苦々しさに、微苦笑する。



そして……オーラルの家族。特に父について面白いことがわかった。

リブラ・ハウチューデン、孤児でありながら、土竜騎士となり、勲位を受けた逸材。


ララ・ハウチューデン=旧姓ララ・ローゼンは、あのエレーナ大司教の愛娘とまで言われた才女、


そんな2人の子。オーラルは、政治的な動きで、排斥されたが、

学園史上、最強ミザイナ部隊の副隊長を勤めていた実績がある。



あの部隊は実に興味深く。

西大陸の覇王。魔王ピアンザ、


北大陸、レオール連合宰相レイナ・フオルト嬢。


南大陸の大洞窟の入り口、ファレイナ公国大使、ミザイナ・アルタイルは、剣士としても有名である。


宮廷魔導師筆頭ケイタ・イナバ。最年少で筆頭になった、魔法工学の天才。


財務のトップ、シルビア=カレン・ダレス嬢。建国からアレイク王国を支えたダレス家の現当主、財務顧問就任は、歴代最年少でありケイタの妻で、三児の母。

自国、各国の要人、重鎮となった彼等は、揃ってオーラル・ハウチューデンを、信頼出来る人物と、口を揃えて言う……、



━━3ヶ月前。


カレイラ・バレスは、多忙な中……、第1分隊中隊長アロ・ジムスの元を訪ねていた。


アロ中隊長は、自分自身でもそう思っているが……。軍席にいること自体が場違いだと思っていた人物である。

やや緊張を隠しきれず。カレイラ准将に敬礼をした。


彼は若くして一軍の将となった。軍人の夢を大願した人物である。萎縮しないだけでも、アロ中隊長は、瞠目に値する。


「アロ中隊長、近日新人を、第1分隊に赴任させることになる」


わざわざ新人の兵就任に、カレイラ准将もの人物が来るだろうか?、思わず首を傾げた。そんなアロの様子を、満足気に見ていたことを。アロは知らない。




アロは元々ガイロン重騎士団の経理で燻ってた所を。カレイラは直々に中隊長として、陸戦師団に引き抜いていた。



━━アロは軍人としては、まったく使えない人物である。体力は人並み以下。武器を扱う才能も、魔法を使う技術もない。虚弱な人物だが……、カレイラにも無い。鋭い先見の才がある。

頭も悪くないのに閑職にいたのは、彼の実力をきちんと理解しない。無能な上司のせいであった。



「これを見てもらおう」


『オーラル・ハウチューデンに関する報告書』


「オーラル・ハウチューデン?、何処かで、聞いた覚えが………」


アロが、内容を読み終わるのを待つ。


「あっあの……、失礼を承知で尋ねます」


息を飲み。蒼白な顔をするアロは、迷いながら、まっすぐカレイラを見た。


「彼ほどの人材をなぜ、閑職にある。我が部隊に配属なのですか?」


思わずカレイラは、満足そうにうっすら笑み、


「気にせず忌憚ない、意見を言いたまえ」


カレイラにそう言われたが、しばし瞬順した……、顔を強張らせながらも、自分の意見を言える。軍人が何人いようか?、皆無と言ってよい。


「カレイラ准将の右腕として、側に置くべきだとおもいます」


カレイラがあまりに……優秀過ぎた、多大な弊害があるとすれば、何も決められない軍隊になるのは、困るものだ……、


「成る程。それも悪くない考えだ、が、それでは、この国を守れないぞ?」


それ故。カレイラに意見が言える人間は、何よりも得難い人材である。

そんなこと思われてるなど。露とも知らないアロは冷や汗を流す。カレイラは窓の外の広大な、所領を見ながら、


「確かに、有能だろう、おそらく……いや。間違いなく彼は『オールラウンダー』になりえる。だからこそ、彼には自由な立場が必要になります」


チラリ、アロの様子を伺う、迷うようでいて、それでいて、何かに気付いた様子を見て、微笑を深めた。


「私は、彼の……」


アロの疑問は、カレイラを満足させるに十分な答えだった。やはり得難い人物である。




━━━━カレイラ師団所領から、南東、戦士養成学校はある。


オーラルは、戦士養成学校の卒業式に、出席していた。


次々と老教官ジタン・ロナベルが呼びに来て、1人また1人。校長のエドナ・カルメン・オードリーに直接。配属先を、口頭で知らされる。



━━オーラルとともにミレーヌ姫を助け出した第1師団の面々は、いずれオーラルの配下となることが、決まっていた。



━━数日前。いち早くカレイラ師団に入団した。第1師団のメンバーは、二月程の訓練が行われると聞いていた。

その為オーラルの就任地は最後に説明されるのであった。


「オーラル・ハウチューデン」


伝法な口調で、ロナベル老教官は、白髪の断髪を、ガシガシ掻きながら、にやり人の悪い笑み浮かべていた。


「はい」


まっすぐロナベル老教官を見つめ、深く一礼した、


「お世話になりました、」


いきなりの毎に慌てる老教官。


「なっ……ばっ、バカやろ」


ずすっと鼻を啜り、何処か照れ臭そうに、そっぽむく姿、教官らしいと小さく笑う。


「とっとと行くぜ!、俺は忙しいんだ、明日からは、また使えない奴が、沢山くるからよ。まあ~お前だけは、認めてやるよ」


しんみりと、口内だけで呟いた、無論オーラルになど言ってやる気はさらさらない。



「オーラル・ハウチューデン入ります」


ロナベル老教官に、背中を叩かれながら、入室して背後を伺うと既に教官の姿はなかった。最後まで教官らしいと、小さく笑いながら入る。


「久しいわねオーラル君」


「はい、ご無沙汰してました、エドナ筆頭」


茶目っ気たっぷりに、オーラルが応じて片目を瞑る。これには参ったと、髪をかき揚げながら、豊かなバストを強調するドレス姿である。


「オーラル君、よくやったわね……」


クスリ艶然と微笑を浮かべ、辞令書が手渡された。


『オーラル・ハウチューデンを第1分隊所属。少尉とする。』


驚きを浮かべたオーラルに、小さく口元緩ませながら、


「おめでとうオーラル少尉」


エドナ理事長の優しい抱擁……、オーラルの胸中で、


「エドナ筆頭……、貴女の優しさ、俺は生涯忘れません」


誠心誠意の感謝を込めて、呟いていた。



━━少尉の階級、それは新任の兵が受けるには、アレイ学園優秀者のみ、与えられる名誉階級である。まだ新しく実績も無い、戦士養成学校の卒業生は、そのほとんどが一兵卒、良くて曹長として、カレイラ師団に編入される。



先のテロ事件から、ミレーヌ王女を守った実績で、第1師団は、かなり優遇されたと言える。オーラルはカレイラ師団の儀礼課に寄り、制服一式を受け取り、一度帰宅した。


早速。制服に着替え。准騎士を示す。校章を胸に付け、部屋を出ると……。



あの日━━以来……、



主のいない、父の部屋に入って、使われることがないベッドの上に。決意を込めて、古い赤手甲を置いた。


「父さん……、行ってきます」


これから先オーラルは、兵舎で暮らす。あまり家に、戻ることは無いだろう……、


「せめてリーラとの約束は守りたいな。休暇が何時になるかそれ次第か……」


短い間だがリーラとは、苦難を共にした仲間である。それにしっかりと約束させられたのだ。

一緒に二人で、休日を過ごし。うちに来て母にオーラルが土竜騎士として、活躍したことを話すと……




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