予選会
━━二人で、
『特待生』の教室に戻ると、リリア女史が、壇上に立っていて、魔法力学の講義してるところだった。オーラルは、まだ魔法の基礎を学んでる段階だが、魔法の素養ありって事で、
『特待生』でありながら『院』に入る許可が下りたと。みんなには伝えられていた。
基本同じ部隊の面々は、近い机に固まっている。レイナは、まだ『院』から戻ってないようだった。丁度空いてる机は、レイナの席の後ろで、おどおどする。ケイタを連れて、ミザイナの隣に二人が座る。
「遅かったなオーラル、そっちが噂の一年で『特待生』になったやつか?」
「どっどうも……」
少女にしか見えないケイタを、怪訝に見たが、フッと柔和な笑みを浮かべ、
「私はミザイナ・アルタイル四年生だ。よろしくな」
「はっ初めまして、ケイタ・イナバです」
魅力的な、ハンサムな微笑と、オーラル達は呼ぶ笑みに、すっかり魅了されたケイタが、真っ赤になっていた。
「そっちの無愛想に見えるのが、同じ部隊のピアンザ、もう1人仲間がいるが、まだ『院』から戻ってない」
驚いた顔のケイタに、オーラルは肩を竦めて見せてから。小声で、
「この二人も『院』に入る。許可が下りている」
目を丸くしていた。それもそうだろうと、密かに(苦笑)した。『特待生』クラスで所か、アレイ学園全体見回してもオーラル達の部隊は、何かと目立つ。何せ4人の内、3人が『院』に入る許可を得てるなど……、
聖アレイ学園始まって以来の快挙なのだから、今日からオーラルを含め4人となり。正式にケイタが部隊に入隊すれば……、
聖アレイ学園では、クラスごと3~6人で誰もが、小隊を作り。様々な勉強、実地試験で、助け合う決まりである。新入生初日……、演舞場に迷い込んだオーラルは、ミザイナと出会っている。妙に気があって、挨拶する程度の交流はあった。何故ミザイナ部隊に入ることになったが━━、
オーラルは、一般生徒ながら武術大会に出場して、好成績を納めて。『特待生』に選ばれたと自分では思っていた。
周りからもいわゆる武道派の『特待生』そう位置付けされていることを知るのは、かなり後であるが、見所があると、ミザイナにそう言われたのを覚えていた。ミザイナは語った。
「私には、学園に入った瞬間から、成し遂げたい夢があるのだ」
アレイ学園には、他の学園にない、変わったシステムがある。その一つがポイント制度だ。
学園が導入する。ポイント制度には、二種類ある。
部隊ポイントと、
個人ポイントである。
━━例えば、
毎度開催される。武術大会に出場して、もしも決勝に残ったり、運良くベスト8に残れた生徒には、個人ポイント30が入る。
ポイントとは、様々な特典が得られる。学園内においての貨幣代わりになる。そんな制度である。
特典の一つに。個人5ポイントで、一度の宿題免除チケット一枚と、交換出来る物がある。学力に苦労してる貴族、商人の子息生徒にとって、垂涎物の特典であった。
さらに武芸大会でベスト4入りすれば、20ポイント加算で、この時点で個人50ポイント貰える。
これらのポイントは苦学生にとって、優しい制度にもなっていて、15ポイントで、
なんと1ヶ月分もの、食堂無料利用パスと交換出来るのだ。
静かに…オーラルのテンションが上がった。当然の秘密である。さて優勝者には、100ポイント与えられる。さらに部隊ポイントは、個人ポイントの半分が加算される。また部隊ポイントにも様々な特典があるが………、
━━ミザイナ部隊。現在の部隊ポイントは2350ポイント、
ゆうに1人が、1ヶ月……、
豪華客船で卒業後。使節団と共に。世界中の国々を回れる特典が与えられるのだが……、
「オーラル彼は……」
「ミザイナ、俺が、スカウトしてきた。学業に関しての能力はレイナ以上だ」
「ほう……お前がそこまで言うか……」
物珍しそうなと言わん顔を隠さず。ケイタを値踏みする。戸惑うケイタに小声で、
「アレイ学園では、クラスごと部隊が編成されてるんだ、『特待生』クラスも同じでな、様々な試験が行われる。その中には、実地試験てのがあって。仲間でクリアしたりするんだわ、嫌なら別の部隊を紹介するがどうする?」
一瞬……ケイタは迷う顔をしたが、しっかり頷いて、
「お願いします!」
ミザイナを横目に、肩をすくめる。
「だそうだ、部隊長殿?」
ミザイナは、値踏みしてた眼差しを弱め、一つ頷き、
「とりあえず見習いとして、我が、部隊の入隊を赦そう、それでいいな副隊長殿?」
「あっ、ありがとうございます!」
嬉しさのあまり急に立ち上がって、大声でお礼を述べ。深々一礼していた。
「あっ」
「バカお前」
「……」
顔色を変える三人を、キョトンと見ていたケイタだったが、
教室が何時の間にか、静寂に包まれてるいるのに気付き、辺りを不思議そうに見てたが、ちょこんと首を傾げた。
「そこの四人!、週末校庭の草むしりな~」
「だは……」
会心の一撃に、頭を抱え、のたまつ三人を、ケイタは、不思議そうに見ていた。
━━翌日。
5人で朝食を済ませたあと、ミザイナ、オーラル、レイナが先に出て、応援と案内人のバイトに出るピアンザが、ケイタを連れて演舞場に入ったのは、予選の始まる。少し前のこと。昼近くである。
━━会場は、既に凄まじい熱気に包まれていた。
「うわ~凄い人ですね……」
ケイタも呆気にとられた。一度に4000人が、座って見れる観客席に。沢山の人が今か今かと待っていた、観客席の下に。出場生徒の控え室があって二人が、入ると、
試合前の生徒達の闘気に、飲まれるケイタは、ピアンザの声にまで身をすくませていた。
「こっちだ」
「あっ、はい」
慌てて、ピアンザの後に続く、
「あ~ピア君だ~、こっちこっち♪」
にっこりポヤポヤ~、ほんわか、ふわふわの可愛らしいお嬢様風な少女レイナが、笑顔で出迎える隣で、颯爽と素振りするミザイナも。手を止めて朗らかに笑い、
「良くきたな二人とも!」
凛々しい微笑みに。周りの女の子達が、顔を赤らめる。その少し先には、何故かオーラルが気持ちよさそうに寝ていたが……、
「そっちは、例の草むしり君ね~」
クスクスからかう口調こそは、春の日溜まりのようだが、言う切り裂くようにかなりキツイ。ケイタの顔がひきつる。
「はっはい、ケイタ・イナバです!」
怒られる。そう思って首を竦めた。
あの後……オーラルから、部隊について詳しい話を訊いた、いきなり迷惑をかけてしまったケイタを。にこやかに向かい入れてくれた。
本当にみんなには。多大な迷惑を掛けてしまったと、朝まで猛省していた。
部隊ポイントとは、普段の行いによって、減点らされる方式である。
例えば、普段など罰則を回避するのに使うと……。
今回の武芸大会当日に罰則を受けた場合などでは。草むしりの罰則回避するのに。1人15ポイントが必要で、4人で、60ポイント消費してしまった……、
ミザイナの夢は、10000ポイント以上貯めて、部隊全員で、世界中を回ると言う壮大な計画だった。だがケイタが入り12500ポイントを目指すことになった。
ミザイナの夢を、皆で叶えるためとケイタは聞いて、そんな大それたことを言えるオーラル達に。感動すらした……、
100年近い、聖アレイ学園の歴史上。
学生時代、一部隊で、2300ポイント貯めた部隊はいても、部隊全員分のポイントを貯めた部隊は皆無だ。
「ああ~あれね。オー君に聞いた~よ、君。魔導王国で『魔導生』だったんでしょ?」
聖アレイ学園と同じく、西大陸の国のひとつにおいて、魔導に重きを置く。優れた子供が入る学校がある。そのなかでも『魔導生』とは、将来の宮廷魔導師を約束されたも同然であった。
━━昨年、
ケイタ・イナバと言う少年は、7つある国内の魔法関連の大会で、最年少出場を認められるほどの才を、魔王ヒザンに認めさせた天才である。『魔法理論大会』『魔法構築スピード大会』にて、二冠した実績は、『院』の生徒と比べても差は無いに等しい。
「夏の部隊対抗戦か、夏休み前にある。魔法討論会・予選と、本選勝ち抜いて上位に入れば、多分大丈夫だよ~」
お気楽なレイナの説明で、徐々に表情が引き締まる。
「がっ頑張ります」
「うん、今日は楽しんでね~、私もガンバ~ルからさ~」
「はっはい……」
真面目に返事するケイタに向けて。朗らかに微笑したレイナ。
ケイタは、ケイタで、大丈夫かなこの人?、心配そうにレイナを見ていたが……、
それが実は、杞憂だったと……、この時点のケイタは知らない。
━━ざわめく会場、息を飲むような。熱気に包まれ。歓声が上がっていた。
武術大会の開催が、宣言されたようだ━━、
予選会から、白熱した戦いが、演舞場の会場で行われているが、オーラルは演舞台袖の選手控え室で、まだ寝ていた。
「予選第三試合。オーラル・ハウチューデン!、対するは、昨年の準優勝者ライヴ・クラウン」
いきなりの好カードに、歓声と、熱気が上がる。
全く起きる気配の無いオーラルに、ケイタが慌てる。
「せっ先輩、先輩」
身体を揺らす。
「ん……、出番か?」
「はっ、はい」
慌てて頷くケイタの頭に、軽く手を置いて、身軽に立ち上がり、凝った肩、首を軽くほぐしてると。
「オーラル!」
仕方ないやつだ。ハンサムな笑みを浮かべたミザイナから、木刀を渡されて、きょとんとした。
「こっちか…」
ばつが悪そうに呟いた、ケイタはただ戸惑うばかりである。この時は、まだ……、
自分の入った部隊の真実を、知らなかったのであった……。
━━演舞台に先に上がった。いかにも女の子受けする甘いマスクの少年は、女の子達の声援に、余裕の笑みを浮かべるや。手を振るい自分の優位を誇示していた。昨年の準優勝者ライヴ・レイナルド、父はフロスト騎士団の小隊長であり、武勇に優れた4年生である。黄色い声援が増した。
「君には、悪いが、倒させてもらうよ」
ファさ前髪を、かきあげ。ポーズをとった。
「始め」の合図で、いきなりライヴが飛び出した。鋭い連撃を見舞う。
オーラルは、一歩引いて鋭い連撃を、いなしていた、ライヴの体が流れた隙を突いて、浅いが胴を払っていた、痛痒い一撃を受け舌打ちした。
「ぐっ、やるな、だが…これは防げまい」
数号の打ち合いから、急にライヴが、つばぜり合いを仕掛けてきた。力押しの戦法に。仕方なく付き合うオーラル。
「………」
対抗しないと。無防備な胴を打ち込まれ兼ねないからだ。ライヴの華奢な見た目と違い。相当鍛練を積んでいるのだろう。更に力が込められた。オーラルも対抗するため、力を込めた途端━━。
ライヴは、不敵に笑い、後方に飛んで、木刀を素早く下段に構え……、余裕の顔が、
凍り付いた…、
「……そこまで、勝者オーラル・ハウチューデン!」
体勢を崩してるはずのオーラルが、
目の前にいて……、
木刀の切っ先が、ライヴの眼前にあった。
あまりの出来事に会場が、ざわめいていた。ライヴの顔は青ざめまるで信じられない物を見たと。何度も首を振るう。普通は引き技により。いつもならば体勢を崩したオーラルの木刀を。下段からの巻き上げを狙い。華麗に勝つつもりでいた。それに気付きながら、オーラルはライヴの策に乗り。体勢を崩したかに見せた。次の瞬間。身体を風車の如く回転させ、一瞬の間に体勢を建て直して。ライヴの喉元に木刀を突き付け、あっさり勝っていたように……、端から見せた内容になるが、
「腕を上げたな……」
二人の技量は、紙一重であり。昨年ならばライヴの方が僅かに技量が勝っていた。
観戦する側には、そんなこと分からないから……、優勝候補が、予選で敗退したと……、周りは騒ぐ。大波乱に会場から、違うざわめきが流れた、
さらに皆を驚かせる出来事が、起こった、会場の半分では、体術の部予選も同時に行われており、その会場から……、
「オーラル・ハウチューデン」
呼ばれた途端、ざわめきが大きくなっていた。それは……、
木刀をケイタにポイっと投げ渡し、急いで、別の舞台に向かう。
「あっあの……先輩は、いったい?」
隣のピアンザを伺うと。いかにも不機嫌そうな顔に見えて、本人にまったくそんな気は無いのだが……、ムッとして見える。ピアンザを恐々見上げ、聞く。
「見てれば、分かる」
もっともに答えを口にして。オーラルの上がった舞台に向けて、顎をしゃくる。ケイタは急ぎ、オーラルの上がった舞台に向かい。着いたと同時に、
「勝者オーラル・ハウチューデン!」
どよめきが上がった。
「またあいつだ!、去年なんて、両方の優勝者以外。負けなしだったんだぜ」
「本当?、それってめちゃくちゃ凄くないか?」
なんて、話が聞こえてきて、ケイタはますますオーラルに憧憬を抱いた。
それから、レイナの試合に度肝を抜かされたり、
ミザイナの圧倒的な剣技を見て、ため息を吐いたりと。武術大会体術の部、剣の部。予選を楽しんだ。
段々この人達の実力が、ともて凄いんじゃないかと、肌で感じるようになり。みんなと同じ部隊なんだ!、自分も頑張らなくては、密かに決意したのは言うまでもない、
「準々決勝、第一試合オーラル・ハウチューデン」
先程。剣の部にて、明日の決勝進出を決めたオーラルの登場に、会場全体から、大歓声と拍手が送られ。熱気に包まれる。
「対するは、レイナ・フォルト」
美しい拳闘士、レイナの登場に。女性からの声援が華やかに増えた。レイナのファンは男女供に凄まじく。お嬢様な風貌も相まって、男子生徒の声援が圧倒的に多い。
「体術の部。準々決勝……」
明日最終日の準決勝。決勝に立つためには、ベスト4にまで、勝ち残らなければならない。
みなの感心は、昨年の準優勝者のレイナが、同じ部隊の仲間で友人との対戦に、否応なしに熱気が、最高潮となっていた、
『試合開始!』
合図と同時に。二人は飛び出す。
素早い攻防が始まった。後に……あまりの見事な攻防は、語り草となる。まるで……舞踊を見ているようだと……、
━━━━25年後……。
この二人の戦いが元に。あるコンテスタが開催されるが、それは未来の話である。
5分以上続いた、二人の攻防、スタミナで劣る。オーラルが敗れた━━。
だが、見応えある試合に。盛大な拍手が二人に送られていた。
興奮冷めやらない中━━。
剣と拳闘の予選大会は、終了した。