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少尉ですが何か?改修  作者: 背徳の魔王
第二章
22/123

テロ4


オーラルの元に、第3、第5師団長が集まるが、いきなり。


「俺達の師団が、先陣を切るぜ」


「まてよ!、お前とこの鈍足部隊より、俺の師団のが先陣を切ってやるぞ」


鼻息荒く、顔を突き合わせお互い譲らない構えである。


「どちらが先陣をきっても構わない、だが第1師団は、旗を守るよ」


おっとこれはしめたと、2人の師団長は笑う、


「貴様なら安心して任せれる。頼んだぞオーラル」


第3、5師団長の二人は、姫様にアピール出来る。絶好のチャンスを逃がさない、この時ばかりは、意気投合した。


「それはそうと、こいつでどちらかが先陣を切るか、決めようぜ」


取り出したのは、アレイ銀貨、コイントスの裏表で決めようと言うのだ。お互いにらみ合い、獰猛に歯を剥き出しに睨み合うが、了承に頷きオーラルが代表して銀貨を放るや、二人は血走った眼を、皿にしたように、銀貨が宙を舞う様を追って……、



結果は…、



第5師団が先陣、


第3師団が中衛、


第1師団が後衛、

守備に徹するような陣形を作った。


Vの字を描くような布陣であった。



それぞれの師団は、第5師団が、矢じりの陣形を敷いていた。多分ごり押しの特攻を得意にしてる師団らしい。

ジーナはだからと思う。攻撃力の上がる陣形であるが、上から見てるとはっきり何をしてるかが分かる。



━━なる程……、さっきの生徒はそれを見越して、準備するためにわざとあの窓の無い小部屋に。最初に案内したのかと理解した。



第3師団は、2つの部隊に分け、相手の出方を伺い、どちらでも動けるよう。遊撃に徹する気が、見え見えであった。



━━東軍は、2つの師団を集め鶴翼の陣を築いていた。オーソドックスな戦術だろう、



━━━校舎近くのテントでは、6人の教官他、医療に携わる。アレイ教の司祭、シスター他、癒しの魔法の使い手が、見守る中、


ついに動いた……



東西の軍が、ぶつかった……、



いやそうではないな、

動かぬ東軍に痺れを切して。第5師団が、矢じりの陣形のまま特攻を敢行したのだ。


突撃を仕掛けた、

それを見て、知略に優れた、第2師団長の号令により、

混編の東軍は、矢じりを受けるような、コの字陣形に変化した。的確に、鶴翼の陣形から、矢じりを押し包む、陣形に変えて見せる。


これに慌てる。第5師団を、仕方なく第3師団が助けに入るが、時すでに遅く。第5師団は、囲まれ動きが取れなくなっていた。



こうなると……、人数で劣る。第3師団も攻めあぐねる。僅かな停滞は、大きな、隙を生む、兵法の基本である。

いつの間にか、迂回していた東軍の防御部隊が、迫っていた。

早くも奇襲成功と第2師団長は、今頃ほくそ笑むだろう、普通なら浮き足だつ場面だが、


「オーラル団長、予定通りですな」


中隊長ジン・ゲルマン、ロート・ハーレスの2人は、呆れ気味に、呟いていた。


「あの2人、腕は確かだけどね」


第3、5師団長の怒鳴り声が、ここまで聞こえてきて、思わず。肩を竦めて見せた、オーラルは思わず苦笑したが。


「じゃ、ロートよろしく」


「了解です。オーラル団長」


細身で、長身のロートは、部隊の半数を連れ、迎撃に動く、オーラルと中隊長ジンを含めた半数は、さらに回り込むように、旗を狙う部隊に迫る。



これを見て混編部隊の東軍は、チャンスと第3師団に襲い掛かるべく、左右に別けてある部隊に、バラバラに襲い掛かるが、手柄を前に混編部隊は、そのままバラバラの突撃となり、数で劣る筈の第3師団と拮抗しだした。



この動きに、手柄を取られてたまるかと、数でうわまる。急襲部隊だが、ロート・ハーレスは、いきなり、逃げ出した。


同じく、みんなが逃げ出して、出鼻を挫かれ、たたらを踏むその瞬間、



オーラルと中隊長ジンの部隊は、僅かな隙から、あり得ないスピードで、サイドから、急襲を行う、部隊全員が、出鼻を挫かれ、たたらを踏む僅かな隙……、



あの数瞬で考えうる。切り替える時間を与えない策略、さらにオーラルは既に。部隊全員に、加速の魔法を掛けていたから、そのスピードはまさに急襲。



第4師団は、呆気なく分断され。浮き足だった、

立て直しを図る。第2師団長を、

逃げていた筈のロート・ハーレス部隊が、先回りしており、



あっさり師団長を捕縛していた、これにより、残された第2師団と第4師団の混編部隊は動揺する。



その隙に生き残りを集めた第5師団が内から、



勢いづく第3師団が、外から攻めて、間もなく混編部隊は瓦解、西軍の勝利となった。


「はう~凄かったですの」


感嘆の溜め息が姫の口から漏れた。

確かに、見ごたえがあった。


「姫様、なかなかじゃろ?」


いつの間に……、ジタン老教官が、白髪混じりの頭をガシガシ掻いて、自慢気に笑う、


「はいですの爺、ありがとうですの」


悪意に疎いとこのある姫様だが、人の親切には敏感で、率直な礼を口にする。喰えない老人ジダンは、照れ臭そうに笑った。


「この後、訓練場で、個々の訓練試合があるが、姫様見ていきなされ」


「はいですの~」


だいぶ回復なされた、姫様の顔に、赤みが差していたこれならば大丈夫だろうと、安心していた。



━━怪我をしてる訓練生に混じり、数人の男が、妙に鋭い眼差しで、テラスを見ていた、男達に表情はなかった……、なんの特徴もない、離れればすぐに、忘れてしまいそうな、薄い印象の男たちは、目配せを交わし、1人、また1人、消えたのに、誰も気付かなかった……。



ジダン教官に案内されて、闘技場を訪れる姫は。興味津々に訓練生の試合を目にしていた。


「オーラル!、今日こそ、貴様を倒してやる」


数人の訓練生に囲まれて、睨まれてるのは、先程活躍してた訓練生であった。


「おっとこいつは、良いところに来たな~」


思わず。目を見張り愉しげにかかと笑う。普段ガミガミ言いたがるジダンは、何時もなら、何事かと怒鳴る場面だろうに、不思議に思い、老教官を訝しげに見たが、意味あり気に笑うだけだった。辺りを見れば他の訓練生、教官達も、止めるつもりがないようで、それ処か興味深く、手を止め見ている訓練生が多数だ。


「ジダン教官、止めなくていいのですか?」


思わず。興味から、喰えない老人に訪ねたら。ジロリ睨まれ首を竦めたジーナだ、怒鳴り声は出さず。不敵に笑う。


「まあ~オーラルなら、怪我はさせんだろ」


ジーナの予想に無い答えだった。理由が分からず眉をひそめていた、続きがあるかと待つが、それ以上答えるつもりが無いようだった。


「………」


仕方なく、ジーナも成り行きを見守ることにした。



オーラルと呼ばれた訓練生は、刃の無い、訓練用の大剣を向けられるも。余裕なのかチラリ、ジダン教官に気付き愉しげな教官の顔見て、諦めたようだった。


「いいよ。ただし試合形式でね」


ガタイの良い、訓練生は、にんまり不敵に笑いながら、犬歯を覗かせる。取り巻きが舞台から降りた所で、


「ロートすまん、槍」


「了解」


手渡された刃の無い槍を、確かめるように素振りする。


「おっ、今回は槍か、珍しいなオーラルにしては」


「???」


老教官の意味の解らぬ一言に、首を傾げたが、始めの合図も無く、大剣使いが、いきなり大剣を降りおろしてきた。


「あっ…」


呆気に取られるジーナ、さもありなんと納得顔のジダンは、


「戦場じゃ、何時仕掛けられるか解らんからな、試合とは言え、合図は無い」


ジダン教官の言葉に、それでも驚きが隠せない。が、オーラルは、軽く大剣を受け流していた。これは……ジーナにも判る。体術に優れた一族の出でだから……、

奇襲を仕掛けた大剣使いの訓練生が、バランスを崩して。たたらを踏み、訓練舞台から落ちそうになった。


「ん……?」


訝しげに目を細めた。


「ちっ、小癪な」


羞恥で赤くなって、オーラルに怒りの眼差しを向けて、力任せの連撃が、風を叩く凄まじい音となり、此方まで聞こえる。あんなの当たれば、ただでは済まない、血の気のひく思いである。

それでもオーラルは、最小限の動きで、軽く受け流していた。端で見てると大剣使いの訓練生が優勢に映る。


「ちっ、ここまでにしといてやる」


肩で息を切らせながら、明らかに不自然さにを抱いたが、誰も気付かないのか?、ジーナは不思議に思った。


「あれは……」


何度も勝つチャンスはあったのに何故かしら?、大剣使いの訓練生は確かに、それなりに強いだろう……、足もガクガクで、息も絶え絶えで、倒れるように、舞台から落ちた所を仲間が助けた。


「チキショー、惜しかったな」


「次は勝てるさ」


なんて声がしていた、確かに一応引き分けなのだから……、

ジーナの目から見たら、二人にはかなりの力量の差があったはずだ。オーラルと言う訓練生の力量は、かなり高い槍の使い手のようだ。ジーナはただ感心していた。


「オーラル!、次は俺だ」


槍を手に、また別の訓練生が上がる。面倒そうなと言う顔をしたが、仕方ないと諦めて、目を一瞬。教官に向けたが、止める様子が無いので、諦めに似た光を宿して首を振っていたる。


「ロート、剣」


「了解です団長」


すぐさま、小ぶりのソードを受け取り、軽く、素振りをしていた、


「いいよ。何時でも……」


仕方無さそうに、

構えた。



それから、次々と試合の申し込みがあり、オーラルは1人で。大剣、ロングソード、終いに体術と相手が代わる度に、戦い形を変えていた。どれも一流に近い錬度で……、しかし…


「何故かしら?」


全て引き分けだった、自分から、仕掛けず。受けに回るだけで、

思わず。老教官に訊ねたく。でも……躊躇してると老教官はにやり不敵に笑いながら、良く解ったなと頷いていた。そんな事が、一介の訓練生に出来るのだろうかと……、



注目が、舞台上に集まる瞬間だった━━、



数人の男達が、人の集まる場所に向けて動き出した。火の付いた、爆晶石の詰まった袋を投げた。



凄まじい爆音、上がる悲鳴、騒然と混乱が起こる。いち早く我に返るジダン教官は、爆発の音に負けない大声を上げた。


「姫様を連れ、学舎に━━」


茫然自失の姫を突き飛ばし、迫る。男の1人と斬り合うのは、老教官である。 ハッと我に戻り、ジーナは、姫の手を握り、学舎に向けて走り出した。それを舞台上から見ながら、



わりと冷静な2人。


━━中隊長ロートとジンに命令を伝える。驚いた2人だが、頷いて行動を開始していた。




何故かオーラルは、1人森に向かう……、敵の最悪の一手を封じるために。誰にも気付かれずにだ。

ジーナが、混乱の最中。恐怖に震える姫を庇いながら、どうにか学舎まで来ると、いきなりガクン……身体から力が抜けた、


『しまった……』


全身から力が抜けていた。


「ジーナ!」


姫の悲痛な悲鳴、数人の男達が現れて、姫を囲む。だが意識を保てたのもそこまで、ジーナの意識は無くなる。



━━魔法により、ジーナを昏倒させた男は、ミレーヌの口に猿轡をして、じたばたするミレーヌを抱えて。混乱を避けながら森に向かっていた━━、



戦士養成学校の近くには、森は、弓の訓練以外あまり使われていない、あまり住人からも知られていないが、深い森があって、森を抜けると━━、



東の街道に出ることを。男達は調べあげていた。いやアレイク王国に限った事ではない。大陸中、それどころか世界中の国々のあらゆる抜け道すら、調べ上げ知っていた。だから……、護衛の少ない姫を拐うことなど、赤子の手を捻るより簡単な仕事だと、男達は油断していた。あまりに順調し過ぎたことを。不自然だとは何も思わなかった。そして、姫を拐った男達が森に入り。魔法で隠してある場所に向かい、逃走用の馬が無くなってることに気が付いて。呆然と立ち尽くした時だった。



シュ、風切り音を聞きながら……、一人の男が絶命していた。



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