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オールナイトで愛し合う

 プロムパーティに疲れた俺は、パーティ会場からすぐ近くに建つ高級ホテルへローラの手を取り走り出した。


 映画の主人公気取りで駆け出した俺たちに夜の街に吹く風は気持ちよく、火照った体を冷ますにはちょうど良かった。ドレスの裾をまくりあげ走るローラの小悪魔みたいに笑う笑顔。チャーミングでまるでどこか遠い国の女王を演じる女優のようだ。


 向かうのは、最上階のスウィートルーム。高層ホテルからは綺麗な夜景がキラキラと輝いてる。俺たちが持つ、若さという光にも劣らない澄んだ弾けるような眩さだ。


 ローラと俺が愛し合う最後の夜。ローラは、バレエ団入団のための渡英がすでに決まっているし、俺は大学への進学が決まっている。別れは目前に迫っていた。


 「愛してる」とローラは言うが、俺にはこの感情が愛なのかわからない。ただ……ローラを気に入っていた。


 俺は、ローラのマーメイド・ドレスのジッパーを素早くおろし、ドレスを脱がせた。黒いピープホールリボンガーターストッキング姿のローラはセクシーだ。


 ローラをベッドへ運び、ストッキングを優しく脱がしながら愛撫した。黒いパンティはすでに潤いを含んで濡れている。


 ローラは、俺以外の男……バレエ団の芸術監督である、ニヤけたおやじと寝て、未来の栄光をつかむことを選んだ。


 俺たちは別々の道に進むことが決まっている。


 欲情の炎は燃えているのに、心は砂漠に置き去りにされたように乾燥しているのはなぜだ? 苛立ちを感じ、ローラをめちゃくちゃにしてしまいたい感情に歯止めが効かない。どうせ、最後なんだ。こいつは盛りのついた猫と同じさ。俺は心の中で叫んでいた。


「ローラ、お前……裸でダンスして見せろよ。俺のこと愛してるんだろ」


 何故か意地悪を言いたくなった。


 ローラは、驚いていたが、他の男と寝たという負い目から、今にも泣きそうな瞳で俺を見つめた。


「ロバート! 私……あなたのこと凄く愛してる。誰と寝ても……心だけは売らないつもりよ。私たち離れるけど……私、必ず有名になってあなたの元に戻って来るわ」



 そんな枕詞セリフを吐いて、ローラはパンティ一枚でストリップのように腰をフリフリしながら踊り始めた。すらりと伸びた手足とダンスで鍛えられた筋肉が目の前でプリプリと悩ましく躍動しはじめる。踊りながらパンティを脱ぐと、おしげなく足を広げ披露してみせる。こんないい女を見て興奮しない男はいないだろう。


「ローラ、お前は最高の女だぜ」


 複雑な思いを抱きながら、砂漠の中にオアシスを見つけた旅人が喉の渇きを潤すように、この一瞬の愛に溺れた。



 ◇ ◆ ◇


『女に必要なのは、まぶしいほどの美貌と残酷さ、そして愚かさ』


 百年前の詩人・ドロシー・パーカーの言葉がピッタリと現代の生き方を言い当てている。まさに、ローラの生き方そのものだ。栄光への道に必要なものは、愛なんかじゃない。


 俺たちは、愚かな時代に生まれちまったんだ。だから、愛とか恋とかなんてゲームと同じ。楽しければそれでいい。傷つくような恋なんて馬鹿な奴がするのさ。割り切って人生の駒を進めるのがクールなんだ。勝者でなければ生きる意味なんてない。人生を謳歌するには、勝者になるしかないんだ。



 出会いなんてどこにだって転がってる。


 俺は、ロパート・スペードだ。



 ローラとの恋はこうして終わりを告げた。

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