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失敗は成功のもと?!

 俺は、親父のワイン貯蔵室の一番奥から白ワインを盗んできた。


 かっこよくコルクを開けようとしたが……うまく開かずにまごついていた。康代は、クックと笑いをこらえながらキッチンの隅にある電動栓抜きを取り出しコルクに当てると慣れた手つきでサッと開けた。


 俺はそれを横目で見ていた。かっこ悪すぎだ!


 ワイングラスを渡すと康代は言ったんだ。

「ロバートの選んだワインが白ってことは、今日のメニューはシーフードかしら」


「いいや、ステーキだ」


 康代は、俺を見て笑っていた。俺は知らなかったんだ。ステーキに赤ワインが合うということを……。

 


「このワインとても美味しいわ。私も料理のお手伝いするわね。マッシュポテトを作って、コーンを茹でるわ。ロバートはステーキとアスパラをグリルで料理してね」


 康代はテキパキと指示をした。俺は、嬉しかった。康代と二人で料理しているとまるで恋人同士のようだ。高校生の俺は、まだ何も知らない子供で料理も初めてだが、それでも康代は優しく見守ってくれる。俺はソフィアの選んだ分厚いステーキとアスパラを持って中庭のグリルへと移動した。




 グリルなんて初めて触るが、ジョニーは、焼くだけでOKだと言っていた。グリルの点火はここのボタンを押せばいいんだな。グリルの蓋を開け、ステーキとアスパラを綺麗に並べた。


 蓋を閉め、焼き上がりを待てば出来上がり。ステーキをグリルに入れた俺は、康代のいるキッチンへと駆け足で戻った。


 康代はマッシュポテトのあじ味をするために人差し指でちょっとだけすくい上げると、口の中へ運んだ。


「う〜ん。 おいしい」



 やべえだろう!!


 康代、お前……それは反則だぜ。お前のそんな艶かしい顔を見たら、シルクのネグリジエ姿が俺の脳裏に浮かんでくる。我慢できなくなる。



 そんな時だ、康代の携帯が鳴った。親父からだ。


 康代は、俺の目の前で親父と話し始めた。

「ロバートが夕食を作ってくれてるのよ。心配いらなわ。私たち仲良くしてるから」


 親父は何を心配してるんだ!? 確かに親父の前の女・義理母とは喧嘩ばかりしていた。まさか康代と俺が親子としてうまくいくか心配してるのか?


 俺は大人なんだぜ。そのうえ、親父より若くてイケてる!


 親父……康代が俺に奪われないかを心配した方がいいぜ。たとえライバルが親父でも俺は康代を奪いたい。俺は親父の息子なんだぜ!!

 

 


 康代は、親父としばらく電話で話していた。俺は横で聞き耳を立てながら突っ立っていた。


 クンクン……あれっ。変な匂いがするぞ!!

 

 しまった!!

 肉を焼いてたのを忘れてた。


 俺は慌てて、グリルに走った。グリルからはモクモクと煙が上がっている。蓋をあけると丸いボールのようなこげだらけの物体が二つと、形すらない線香のようなアスパラが横たわっている。



 がっくりと肩を落とし立ち尽くす俺。


 異変に気付いた康代が走り寄ってきて俺の両手を掴んだ。


「やけどしたんじゃないの? 大丈夫? 」


 肉を焦がしてダメにしたことを笑うんじゃなくて、俺の心配をしてくれるのか?


 俺は、うれしくなり近寄ってきた康代を思いっきり抱きしめた。

「心配してくれて、ありがとう」素直な言葉が自然に出た。


 康代は、驚いてたが、

「あなたのお母さんにはなれないけど、お姉さんになってあげるわ」


 

 俺たちは、焦げたステーキを諦め、マッシュポテトとコーンをたべた。こんな夕食は初めてだったが、康代と大笑いしながら食べるポテトは俺にとって、一生忘れられない味になった。


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