表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
私的近代兵器史話  作者: NM級
2:大砲の革新~炸裂弾の導入
6/23

第六話 その2(戦列艦パシフィケートルへの実験)

執筆ペースなどの問題からちょっと細切れになりました。ご了承ください。

 今回も引き続き、ペクサン砲に関する実験について紹介します

 何度も言うように、炸裂弾の威力は木造船にとって致命的という認識は古くから存在しましたが、フランスではペクサン砲の登場に伴い、改めてその威力を検証する場が必要でした。

 そこで1824年1月にブレストにて、実際に戦列艦の船体を標的とした実験が行われています。


 標的になったのは1811年に竣工したナポレオン戦争時代の80門艦「パシフィケートルPacificateur」、トラファルガーの海戦で旗艦を務めた「ビュセントールBucentaure」の同型艦です。

 実験では係留された同艦に対して、640ヤード(約585メートル)離れたポンツーン上から射撃が行われ、80ポンドボムカノンの炸裂弾が計12発発射されました。


 今回はこの12発すべての結果を知ることはできませんでしたが、特筆すべきものとして記録が残る例を以下にまとめます。


・1発目 

船体下部に命中。舷側を構成する合計29インチ厚のオーク材を貫通し、直後に炸裂。艦内には煙が立ち込め、消火班によって消し止められるまで10分から12分を要した。命中箇所には口径とほぼ同じサイズの穴が開き、艦内部の最下甲板(orlop deck)は砲弾の炸裂によって数フィート四方が粉砕されて、船倉に破片が飛び散った。


・2発目 

後甲板の木材を砕きつつメインマストの端に命中し、逸れた後に炸裂。中心に当たらなかったこともありマストは倒壊しなかったが、補強用の鉄輪と木材の破片が反対舷にまで飛び散った。さらに炸裂によって帆を動かす索具類の一部が損傷。帆自体は撤去されていたが、実戦で命中すれば大きな損傷を与えていたとされる。


・3発目 

舷側砲門の間を貫通し、肋骨と梁を繋ぐ木製の肘材に命中。重さ200ポンドにもなるこの補強材を脱落させつつ、艦内で炸裂。貫通時の破片と爆発の威力で船員を模した板40枚を倒す。さらに炸裂の範囲にあった甲板とそれを支える梁が崩壊。


・不明 4発目11発目までのどれか

砲弾が舷側を貫通しない際の効果を検証する為、通常10.5ポンドの発射薬の量を4.5ポンドまで減じて発射。予定通り砲弾は舷側に貫通しきる前に炸裂した結果、爆発の威力により舷側には数フィート四方と、貫通時よりも大きな破孔が生じた。発生した破片により内部の板19枚を倒す。


12発目 

同じ条件で発射。砲門の角に当たってから船内に侵入し、反対舷の鉄製肘材に命中。反跳して炸裂。艦内の板19枚を倒す。


 12発の内、内容が定かでない部分が多いのは残念ですが、残りの部分からも炸裂弾の効果は十分に証明されたと言える内容であり、具体的には以下の内容が確認できる結果になりました。

・この砲が撃ち出す炸裂弾は初速などがやや遅いとは言え、戦列艦の舷側を貫くのに有効な威力を有している

・一発目の結果から、舷側を貫いた砲弾が内部で炸裂すれば、火災を発生させる事が可能である

・実験時には通常艦内にある可燃物(装填前に船倉から運ばれてくる発射薬、防水用にタールを塗った布やロープ類など)は撤去されていたので、実戦での焼夷効果はより確実

・一方で舷側を貫通しきらずに炸裂した砲弾の方が、貫通後に炸裂した場合よりも船体に与えるダメージは大きい

・実験の際に出来た数フィートサイズの破孔となると、戦闘中に塞ぐのは難しく、水線付近にできれば艦を危険に晒す程の浸水を起こす可能性がある

・なおこの実験では通常の36ポンド実体弾を用いた射撃も行われるも、いつも通り口径サイズの穴を空けるだけで、炸裂弾の威力には大きく劣る


 これらの結果を受けて、専門家からなる海軍の委員会も、この砲弾が砲甲板に一、二発程度が命中すれば艦の戦闘力は失われて降伏せざるを得なくなる、水線付近へ命中すれば沈没するなどと、威力に関しては手放しに称賛する内容の報告書を提出しています。


 また同年9月にも、より小型の炸裂弾との比較なども兼ねて、同艦に対する2回目の実験が行われています。その際には1080から1280ヤードとより遠距離にて32発が発射、25発が有効弾となり、その威力が再確認されたのと、やはり大口径弾の方が優れるという結果になりました。

 この中には1月実験と同じく舷側を貫通しきる前に炸裂した砲弾もあり、ここでは水線から3フィートの高さの舷側に命中して、ちょうど直径3フィートにわたり舷側を破壊。外洋では常時横揺れで水線の位置が変わる上に、破孔の上下にあった木材も肋骨から外れて水密を完全に失っているので、かなりの浸水が発生するでしょう。


 なお25発となると、これだけの数を被弾しながら標的が沈まなかったのが疑問に思えますが、先述したように可燃物などを極力排していたのに加え、一発命中するごとに損害の検証と応急処置をちゃんと行って、4日かけてゆっくり実験していたからとのことです。


 そして2度目の実験後も委員会の意見は変わらず、ペクサン砲と炸裂弾の組み合わせが持つ威力は、フランス海軍だけでなく、この実験の情報を得た世界各国に知れ渡る事になっていきます。


終わりに

 こうして精度や射程だけでなく、炸裂弾が本来持つ威力の面も十分な物がある事を証明したペクサン砲ですが、水上戦闘で使用するには、未だに欠点と言える部分も当然残っていました。次回はそういった欠点や対策などに触れつつ、今度こそ各国の動向などをまとめていきたいと思います。



参考資料

→前回と同様


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ