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魔王二世は充実しない  作者: 桜木はる
プロローグその① 【ああっ! 死んでしまうとは情けない!】
3/22

『終わりは……まで』

自分で書いてて恥ずかしくなってきました。

 コンビニ、やっとの思いで着いたのは二十時。

 店長にはさっき、警察官から連絡があったはずだから事情は知ってるはずだよな。

コンビニの前に着いた。さて、中に入ってすぐに仕事を……


「いらっしゃいませー。って、あれ? 佐伯さん。遅くないですか?」


 そう言ってきたのは、バイト仲間である、高校生の【寺石(てらいし) (さとし)】だ。

 懸命な子で、とても良い子だとは思う。だが、彼は彼女持ちだからそれだけはダメ。許せない。


「ちょっと警察に捕まってな……遅れた」

「えっ! 佐伯さん捕まったんですか!? 何やったんですか!?」

「いやいや、俺がやった訳じゃないんだよ。格好似てるからって捕まっただけだ。そういや店長は?」

「あ……店長なら裏にいますよ」


 俺は、コートを脱ぎながら、コンビニの奥に行く。すると、店長が奥の方で座っていた。

 何でこんな緊張した空間になっているんだ……?俺が来たのを気づいたらしく、「そこに座ってくれ」と言った。

 店長は俺よりも歳をとっている。結婚もしているらしい。羨ましい。

 そして俺は、店長の目の前に座らされる。


「健吾くん。君はもうクビだ。帰ってくれたまえ」


 その言葉は、疲れた体を、疲れた精神をまた、一瞬でズタズタに切り裂いていった。


「え……な、なんでですか!」


 俺は咄嗟にその理由を訊く。


「だってさ、露出狂に似ている人がいたら、コンビニの悪い噂がたって、人が寄らなくなるじゃないか。だから、やめて」


 理不尽だ。何と言おうと理不尽すぎる。俺が似ているのは格好だけだと言ったのに、なぜ辞めさせられなければならないのか。

 その後、俺は店長に、店には近づかないでくれと言われ、コンビニから立ち去っていった。

 智は俺が店から出て行く姿を、首を傾げて見ているだけだった。


 人が、とてつもなく憎い。


 何故こんな理不尽な出来事ばかり俺を襲う。


 おかしいのは、この世の中だ。

 この世界も――憎い。


 曇り切って淀んでいる空を見上げながら、歩く。

 人は昼ほどはいない。だから、このまま歩いたってぶつかる事はないだろう。

 そう思い、そのまま、階段を降りようとする。が、次の瞬間――


「ぬわっ!?」


 何かに足を滑らせたのか、それとも足をかけられたのか、もしくは押されたのか分からない。

 唐突すぎる出来事で何の判断も出来なかった。俺は階段から転げ落ちながら、角に頭をぶつけたり、体をぶつけたりなどして、どうにか回転を抑えようとする。

 だが、体が痛く、パニックになり、何も出来ないまま、地面まで転げ落ちた。


 ――終わりなのか。


 微かに開く目からは、自分の血液だろうか。

 赤い液体が少しずつ周りに広がっていくのが見えた。

 それに、段々と意識が遠のいていく。


 俺、死ぬんだな。すぐに悟った。

 死ぬ前ってこんな感触なのか。痛い。だけど、体が段々と楽になっていく。

 時間の流れをゆっくりと感じることが出来る。もう、ダメか――。

 そう思った瞬間、目の前に一人の制服を着た女子高生が現れる。彼女は俺の目の前でしゃがみこみ、顔をじっくりと見る。

 段々と閉まっていく目で微かに彼女の顔を見る。茶髪だが、髪は結いもせず降ろされていて、言っちゃえばセミロング。心配そうな顔で俺を見ている。

 可愛い。どちらかと言えば可愛い。

 自分の最期が、女子高生に心配されて終わる人生だったとは……

 頭が言うこと聞かなくて、何も言葉を発することができない。誰かが、病院に連絡したらしい。

だが、おそらく俺は治療してもらってもダメだろう。

 なんとなく分かるんだよな。自分が死ぬって。

 俺は最後の力を振り絞り、女子高生の全身を見ようとする。

 いいよな、死の前くらい、見たってさ。

 少しずつ、目線を彼女の顔から下に降ろしていく。体は細身のある体で、胸も結構あるみたいだ。

 どんどん、少しずつ下にずらしていく。


 もちったした太もも、膝、脚……


 あっ、


「女子高生の……ぱんつ」


 白か……


 そして俺は、ゆっくりと目を閉じる。

 一瞬でも、今まで生きてきて本当に良かったと感じた瞬間だった。


 最期に見たものは、女子高生のパンツだった。

次話もまたよろしくお願いいたします!

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