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魔王二世は充実しない  作者: 桜木はる
プロローグその① 【ああっ! 死んでしまうとは情けない!】
2/22

『始まりは通報から』

はい予定していた文字数オーバーしました。

 ▲ ▽ ▲


 俺の一日は、朝の四時から始まる。

 朝はファミレス、昼から夕方までラーメン屋、夜はコンビニと、三職掛け持ちのアルバイター。大学に入れなかったからこの道を選んでしまった。

 昔も今もそうだが、特に今は学歴で完全に差別がされる時代だ。いくら高卒で専門的な学びを得ても、『大卒以上』という理由で就職したい会社から蹴られることが多々ある。

 大学に行かなきゃ死んじゃうって訳ではないが、就職はかなり厳しいものとなる。専門学校であっても、大学を遊んで終わった大卒の人よりも劣っていると見られて、嘲笑われてしまうだろう。それに加え、初任給、その後の給料までも格差がつく。

 日本は平和だとか裕福だとか言われているかもしれないが、実際人間一人一人の見方が汚いというのは事実だ。俺だって友人から蔑まされたり、笑われたりする。

 つまり大学に行って卒業するのは、『人間として見られるための道』ってことだと自分で勝手に思っている。

 でも俺は、この生活でも良かったなって思ってる。

 大学に行けずに人間として見られない自分が、働くことによってなんか人間らしいことしてるなーって思えるからだ。


 ……そもそも、人間らしいって何だ?


 とんだ哲学だ。


 朝は毎日、白飯か食パンかどちらか単品で済ませている。お腹は空く。だけれども、金がないから仕方ない。

 黒い厚手のコートを着て、財布やガラケーなどの荷物を持ち、家、とはいえ古ほけたアパートだが、そこから出て、鍵をかけてバイトに向かう。

 ファミレスは八時から始まるが、早めに行って、電車に乗る際、混み合っていない時間帯を狙いたいのが俺の思考。

 スカスカとまではいかないが、ある程度いなければ、満員電車に巻き込まれることもなく席に座ることができる。

 分かる人には分かるけど、この優越感がなんとも病みつきになっちゃうんだよな。電車を乗り継ぎ乗り継ぎで約一時間で、バイトをしているファミレスに向かう。アパートから駅まで約一時間だから、大体二時間くらいで着く。

 バイトを募集しているところが少なかったからか、この遠い場所しかなかった。

 ファミレスは八時から始まり、俺は十二時であがる。その後十三時からラーメン屋でバイト。十八時までしてから、十九時から二十三時までコンビニで働いている。

 今で言うワークシェアリングでことを繋いでる。

 複数人で時間をしっかり決めてやっているため、時間はほぼ間違いがない。だからこそ良いのもある。

 で、ファミレスでは朝からカップルがイチャイチャ。

 チッ、性の喜びを知りやがって!

 そんでもって、昼はパワハラーメン屋の店主に怒られるばかり。

 やってらんない。

 そして夜はコンビニ……のはずだったのだが……

 ラーメン屋からコンビニに向かう途中、女子高生が俺のすぐ近くを歩いていた。

 あんなに制服のスカート短くして、下着とか見えないの? もう少しで見えそうなんだけどなあ……

 俺は横目で見ながら思った。

 すると、前から来た他の女子高生二人組が俺の顔を見て、いきなり悲鳴をあげる。


「「「きゃーー!」」」


 そして、バッグからスマートフォンを取り出し、何故か俺の目の前で警察に百十番通報する。


「は、え? ちょっと、なに?」


 二人は俺に戦闘態勢をとる。周りは騒ついて、みんな俺の方を見ている。

 あれ、俺なんか悪いことしたか? いや――そんなはずはない。

 十八年間フリーターでずっと特になにも考えずに生きてきた人生だ。何も問題を起こす行動はしなかったはずだ。


「あの人です! あの人がきっとここら辺をうろちょろしている変質者です!」


 警察がやってきたらしい。

 パトカーが一台、通報した女子高生の近くに停まっている。

 変質者なんて、聞いてないぞ。

 警察官二人が、何かの紙を持ちながら、俺の目の前に来た。威圧感。半端ではない。


「体格、身長、格好、そっくりですね……!」


 女性警察官が、男性警察官に紙を見せながら話す。

 男性警察官は、何かに納得しているらしく、顎に手を当て、うんうんと頷いている。


「少しお話をお伺いしたいので、警察車両の中まで来ていただけますか?」


 どうやら任意同行ではないらしく、強制らしい。男性警察官の方が俺の背中をパトカーの方まで押してきたし。

 一体俺が何をしたって言うんだ。

 俺は、二人の警察官に引き連れられ、パトカーの後部座席に入らさせられる。

 前の運転手席には、女性警察官が。俺の隣にはいかにも暑苦しそうな、黒光りの男性警察官がいる。

 どっかの日焼けサロンで日焼けでもしてきたのか? そして、事情聴取という名の尋問が始まった。


「この顔、見覚えありませんか?」


 そう言って見せてきたのが、先程女性警察官が持っていたと思われる紙だ。

 表には大きく、男性の顔写真が貼られている。

 写真の下には、

『身長はだいたい百七十センチメートル、体格は細めで、黒いコートを着ている、圧倒的変質者です。見つけたらすぐ警察署に連絡をください!』

 と、書いてあった。

 確かに、目、体格、身長、服装は結構似ているところがあるが、鼻の位置や、耳、輪郭などはまるで違う。

 警察のことだ。どうせ整形でどうたらこうたら言うつもりだろう。

 残念ながら、普通の生活でいっぱいいっぱいの俺には、そんな金はないのであるが。


「これ、お前だよな? 整形でもして輪郭とか変えても、分かるものはわかるんだぞ」


 俺が話をする間もなく、いきなり強気の口調になり、俺を何とかして怯ませようとしている。

 関係がないのだから、知るはずがない。


「違いますって!」


 俺は強く否定をする。

 聞くところによると、どうやら一昨日の夜、黒い厚手のコートを着た不審な男が、女子高生の前に突然現れ、黒いコートを両手で左右に大きく広げて、笑いながら近づいてきていたらしい。

 ……なんとコートの中身は全裸だったらしい。

 『アレ』を女子高生達に見せて喜ぶような変態。

 要は露出狂だ。

 ……てか俺はそんなことしねえ!


「まったく、こんな良い大人が……同じ人間として恥ずかしいです」


 女性警察官がため息をつきながら俺に向かって言葉を発した。

 そもそも俺じゃないのに何で犯人として確定されてるみたいになっているんだ。


「だから、一昨日の夜、俺はコンビニでバイトしてたんですって。俺が働いているコンビニの店長に聞けば分かりますよ」


 コンビニの店長の電話番号を聞かれて、教える。

 男性の警察官はすぐにその電話番号に自分のスマートフォンで連絡をする。

 ちなみに俺はスマートフォンという便利機器は持っていない。ガラケーだ。だってスマホ、高いし。

 その後、無事連絡をとれたみたいで、俺にはちゃんとしたアリバイがあり、犯人ではないということが分かった。

 よかった。

 ……いや普通なんだけどさ。

 車から出ると、外には先程俺が犯人だと警察に通報した二人が前にいて、何かそわそわしていた。


「あの……」


 女子高生の一人が、俺を上目遣いで見てくる。


「さっきは……すいません。なんか、危ないことしそうな雰囲気あったので、つい」


 へ? どういうこと?

 俺が危ない雰囲気醸し出しているように見えたか?

 寒いからコートを着ていただけなのになあ。


 俺は、「もう終わったことだしいいよ」とだけ言って、その場を去る。


 人が憎い。


 もし、生まれ変わっても、人間になりたくない。

 そんな事を思いながら、身が凍るような寒さの中、俺はコンビニまで走って行った。

引き続きよろしくお願い致します!

プロローグのみ一日に一回更新いたします!

他は四月まで一週間に一度に(´・ω・`)

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