八 『仕方ないからコロシアム!』
その後、城から出て、城の裏側にあるというヤムヲエズコロシアムに行った。
その道中もおかしなやつらばかりで、少し絡まれそうになったり、連れていかれそうになったりしたが、何とか逃げ切って、コロシアムに着いた。
コロシアムは人が犇めきあっていた。
コロシアムの参加者だと思われる人、戦士みたいな頑丈そうな装備をした人が多い。強そう。
しかし途轍もなくデカイ! とりあえずデカイ!
「参加者のエントリーはこちらでーす。人、魔物、魔物とともに出る人で順々に、左手、中央、右手となっておりまーす」
緩い声で、ピエロのような格好をした花の赤い男性が、エントリー案内看板を両手で挙げて ながら言っている。と、そもそも魔物の参加って何なんだ……
王の言っていた魔物使いに関係があるのか……? 俺らも一応そういう扱いになるらしいし……
エナに右手に行くぞ、と言って、左の入り口に向かった。
魔物使いの部門には、人はあまり並んでいない。数人くらいだ。王の言い分から、魔物、人間、魔物使いとそれぞれ部門ごとに分かれているとは思うが……ここまで少ないと割といけそう……? な気もする。
中にいる仮面を被った人にエントリーをお願いすると、数字で番号が書いてあるカードを一枚渡された。数字は本当に世界共通らしい。少し変に書いてある気はするが、おそらく『六』と書いてあるのだろう。
それと、一応仮名で『ニェとルナ』という名でエントリーをした。俺が魔王とバレることはないし、エナの名もバレることはないはず。そして、奥にある選手控え室に入った。
部屋の中には、フードをかぶって顔が見えない人や、顔つきの悪い人が数人、その人らに使える魔物と、可愛らしい毛皮のふかふか帽子を被った、白髪の女の子が座っていた。その女の子が、丸い目を鋭くしてこちらを見てきた。
一瞬、口をあっと開けたが、すぐに顔をそらしてそっぽを向いた。あの子を見ると、凄く懐かしいような感覚がする。
この世界に来てから、一回も会ったことなんてないよな……?
頭がおかしくなってるのかもしれない。いやそもそも今は頭なんてないんだけどもね。
「おうおう、おめぇさんよ」
筋肉がもりもりで、ゴツい男が俺らを圧倒するかのように近づいてきて、よく分からないけどイキっている。
「おめぇみたいな華奢な奴がこんな所きて大丈夫なんか? まぁ、死なない程度にな! はっはっは」
男はバカにするように笑った。
あー、うぜぇ! こういうのを特に捻り潰してやりたい!
てかなんでこんな奴が魔物使いになったんだよ。武闘家にでもなってハッサンしてろ!
と、怒りを露わにすると、スライム体から湯気が出てきた。おそらく溶解液が大量に分泌されたのだろう。
エナはこの溶解液に耐えられるのだろうか。同じスライムだから……? か。
そうしているうちに、部屋の中に誰かが入ってきた。
「魔物使いの皆さん、これからコロシアムの要項を説明します。まず、一つ目ですが、このコロシアムでは、一人一人の勝負ではなく、全員同時参加のコロシアムです。まぁ定番すよね」
そうでもないと思うけど……
「二つ目ですが、この勝負で勝った者には、二つ目の勝負、他の部門の残った一人と闘う、要は三人勝負をします。そして三つ目ですが、その二つ目の勝負に勝利した者が、このコロシアムの王座にある勇者、マモン=グアリス様と闘っていただきます。その勝負に勝った者は、このコロシアムの王座に立つことができます。説明は以上でございます。では皆様、魔物使いの試合はすぐに始まりますので、会場にご案内いたします、私に着いて来てください」
その男性はそれだけ言って、部屋から出て行った。部屋にいた人や魔物らは、ほとんど部屋から出て、その男性について行った。
少し遅れて、白髪の女の子が出て行った。
その瞬間、少し体に寒気が走った。さむっ! ってあれ、あの子魔物連れていなかった気がするんだけど……いいのか?
「エナ、俺たちも行こう。仕方ないけど、何としても勝たなきゃいけないんだ」
俺がそう言うと、エナは頷いて、部屋から出て行った。
さて、どう闘うかな……
そんなことを考えながら、会場に続く暗い道を進んで行った。
次話もよろしくお願いします!




