二 『勇者』
ようやく城下町に着いた。
割と森から離れていやがるから少し面倒だった。
俺を抱える女の子は、ずっとニコニコしたまま歩いている。持たれる側から持つ側に立場が逆転して嬉しいのか、人型になれて嬉しいのか分からない。
城下町の入り口には大きな門があった。その門の両脇には、兵士が二人、刺さったらすごく痛そうな鋭い先がある槍を持って、ピシッと立っている。
そもそも町に魔物とか入れるのか?
門の前に着いた。兵士二人は俺らを見て、何かを警戒している様子であった。
「そこのスライムと女、止まれ!」
兵士二人が近くに寄ってくる。俺を抱えている女の子は戸惑い立ち止まってキョロキョロしている。
「町に魔物を持ち込むつもりか?」
女の子は俺を強く抱きしめて、下を向きながら恥ずかしそうに大きく頷いた。
やはりダメなのか……そりゃ普通の対応だろうけど。
すると、もう片方の兵士が話し出した。
「この町には魔王を倒した勇者の一人がいる。そいつに見つかったら殺されてしまうし、君まで面倒なことになる。それでも行くというのなら、行ってもいいが、呉々も見つからぬようにな」
割と優しかったじゃん。普通に通してくれたじゃん。
女の子は兵士二人に天使のような満面の笑みで頭を下げて、門を潜り抜け町の中に入った。
城下町は賑わっていた。
家は西洋にあるような家ばかりだ。
門から続く大通りは、そのまま城まで続いているらしく、途中途中には大きな噴水があったり、誰かの 像が立てられていたりと、比較的平和そうな国である。それに、道の脇にある小さな小川の水も、とても綺麗で、太陽の光に反射してキラキラと輝き、透明度も高く、蒼空が綺麗に水面に映っている。
が、よく見てみると、店は怪しい雰囲気のあるところばかり。
看板の文字は日本語でないから読むことができないが、雰囲気だけはわかる。
体は変わって話せても、俺の頭では文字を読むことはできないということだろう。
何となく悔しい。
それに、店に行くには気が引ける。
とりあえず、城に行くとしよう。王様が待ってるらしいし。
「このまま大きい通り抜けて、まず城に行こう」
俺が言うと、女の子は言葉を発さず頷いた。
そういえば、スライムになっている時でも話すことできるけど、スライムってどこに口あるんだ? 某 ゲームのスライムは口や目やら、顔があってよく分かるけど、顔がないスライムってどこから声出してるんだろう。
それとも俺にだけ与えられた特権だっりして?
俺を抱えている女の子、要はスライムなんだが、人型の時もスライムの時も話せないしな。
ぽちぽち考え事をしていると、前からチャラそうな金髪の男が、派手な露出度の高い服を着た複数の女性を周りに引き連れて道のど真ん中を歩いて来た。変なのに関わるのは嫌だと思い、俺は女の子に道の脇に行くように言った。金髪の男は俺たちが横を通ったのを見て、急に話をかけてきた。
「そこの可愛い嬢ちゃん! そんな汚い色のドロを持ってないで俺と遊ばないかい? 俺といれば金にも困らないし、遊び放題になるぜ」
ファッションセンスの一欠片もないダサい私服に、赤いマントを揺らし、金髪を片手でサッと解して変なキメ顔で話をかけてきた。
汚いドロとは何事だ! せめてダーティスライムと呼べよ!(日本語か英語かの違い)
俺を抱えた女の子は首を横に振って、何とかこの場を振り切ろうとしている。すると、金髪の男が無理やり女の子の腕を掴み、連れて行こうとする。
「いいじゃねえか、可愛いお嬢ちゃん」
衝撃で少し揺れて、俺は落ちそうになった。
落ちないように必死に踠いていると、俺の体は金髪の男の手に触れた。
「あっちぃ!」
金髪の男は女の子から手を離し、自分の手に息を吹きかけた。
あれ、熱かったの?
すると金髪の男はいきなり腰につけていた鋭い剣を取り出し、俺に向かって構えてきた。
「このスライムごときが! ぶっ殺してやる!」
周りにいる派手な服を着た女性たちはみな、オロオロしている。金髪の男はそのまま剣を上げて、俺に向かって振り下ろそうとした。俺を抱えた女の子は、自分の背を金髪の男の方に向けて、俺を守ろうとした。怖いのか、女の子の涙が俺のぷるぷるボディに当たった。
「勇者様! そんなスライムや女の子なんていいですから、私たちと一緒に遊びましょうよ!」
そう言い、金髪の男の手を抑えたのは、周りにいた複数の女性のうちの一人である、チャイナドレスのような赤い服を着たピンク色の髪をした鋭い目つきの女性だった。
こいつが、勇者だと……?
金髪の男は剣を不満そうに鞘にしまい、俺を睨んでから、複数の女性と一緒に去って行った。先程助けてくれた女性が、歩いて行く最中、俺たちの方を見てウィンクをした。
どうやら助けてくれたらしい。感謝感激雨霰である。
女の子は少し震えていた。やはりかなり怖かったようで、泣いている。
「ごめんな、俺が不甲斐ないばっかりに」
俺がそう言うと、女の子は首を振ってすぐ笑顔を作った。
強がってるのか、それとも俺に心配させないために無理に笑顔で振舞っているのか。どちらにせよ、素直ではない。怖いなら怖かったと言ってくれればいいのに。話すことができないから無理か。そして一つ、俺はあることを思いつく。
「なあ。こんな時に何なんだけどさ、お前に名前つけてもいいか?」
突然言われたからか、女の子はキョトンとした。
次話もよろしくお願いします!




