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魔王二世は充実しない  作者: 桜木はる
第一章 『強欲勇者討伐隊(一人)』
12/22

一 『へんたい』

 んで……とことん変な理由で、結局俺だけ行くことになってしまった。スライムは俺が一人で行こうとした時に、付いて来てくれたんだが、やっぱちっと、二体じゃもの寂しい。それに、魔王を一人で行かせる魔物たちも魔物たちだ。しかもあんな盛大に魔王の出を祝うとは。

 ……てか、回想が長すぎて、もう王国の城下町の正門あたりまで来ちまったじゃねえか!

 どうしようか。新しい毛皮の服はもらってきたけれど、さすがにこの姿で城下町の中入ったらめっちゃビビられそう。

 すると、頭の上に乗っていたスライムが俺の前に出てきて、ぴょんぴょんと跳ね出した。

 俺はしゃがんで、スライムの上部を撫でた。


「どうした? 手伝ってくれるのか?」


 そう言うと、スライムはまた更に高く飛び跳ねた。そして、森の方に行ってしまった。その後を俺は追う。


「どっ、どうした!?」


 息切れしそうになりながらも、何とかスライムに追いついた。

 森の中に戻ってきてしまったが、一体どうしたと言うのだろうか。スライムは、疲れている俺に向かって、顔に向かっていきなり飛んできた。

 俺は地面に倒されて、息ができないからもがいた。


「ふっふいほふひはんはほひふふは!」


 一体どうしたというんだ!

 と、言いたかったが、口が塞がれていて口を話すことはできなかった。

 口の中にちょっとスライム入っちゃったし、飲み込んじゃったし。でも、ホイップクリームみたいに甘かったなあ。


 ――何だか変な感じがする。

 頭の中が真っ白になる。

 苦しいという感情が溶けて無くなっていくみたいだ。

 気がつくと、目の前にスライムの姿は見えなかった。

 それに、体が何かに縛られているらしく、身動きが取れない。

 一体何が――っ!?

 俺を縛っていた、正確に言うと、抱きついていたのは、艶のある金髪の、髪の長い女の子だった。

 それに、服も何も着ていないらしく、丸裸で俺に抱きついている。

 やばい、これ事案になるぞ。変態になっちまう! いや俺からはやってないから大丈夫か?

 だとしても、なんかこの女の子の胸部がお腹あたりにくっついて、何とも言えない感触をどうしても感じてしまう!


「あ、あのー……」


 気が付いたのが分かったらしく、女の子は抱きついたまま俺の顔を笑顔で見てきた。

 そして、俺はあることに気づく。

 この丸っこくて濃い青の目にきめ細やかな綺麗な肌……そしてこの可愛らしい笑顔、えくぼ……

 妹の娘が、超が付くほど大好きだったアニメ、かつ俺が陰でちょくちょく見ていた、俺も大好きな【一人で異世界アイドル 〜気づいたら、メンバー探して二百年経ってた〜】のメインヒロインの【桜井(さくらい) 真中(まなか)】ちゃんにめっちゃ似てる!

 まさか、こんな間近で見れるとは……! とは言え、裸はダメだ。

 俺は、目を逸らしつつ、何とか立ち上がった。だが、女の子はくっついたままである。

 俺は視線を横に逸らして、女の子に話をかけた。


「あの、服を、とりあえず服を着ていただけませんかね」


 女の子は俺の体を揺らして、視線を逸らしていると言うのに、映り込もうとして無理やり入り込んでくる。

 揺らさないでくれ! 胸ががっつりあたってるから!

 すると、女の子は悲しそうな顔をして、少し離れたところに歩いて行き、いきなり溶け始めた。


「ちょ――」


 そして、白いスライムの姿になった。

 

「お前……スライムだったのか」


 スライムは俺の足元に近づいてきて、ふかふかブーツにくっついた。


「ごめんな。まさかお前とは思わなくて。手伝ってくれようとしたんだよな?」


 スライムは動かない。


「今度はちゃんと見てやるから。ただ、その前に、俺の問題を解決しなきゃいけない」


 俺がそう言うと、くっついていたスライムは少し下がり、俺に飛び跳ねてきた。

 またいきなりだったので、慌てて腕で抱える。

 スライムは、また姿を変え始めた。


「な、なんだ!?」


 スライムの姿はまた、女の子の姿に変わった。

 すごく、可愛い。

 女の子は笑って、強くしがみついた。

 この姿を変える行為は、ユニークスキルによるものなのか。

 ユニークスキル……ユニークスキル……?

 いや、待てよ……?

 俺って確か、体の中に取り込んだ物に体質を反映させるスキルだったよな……それなら……!


「スライム体質に!」


 俺がそう言うと、体が溶け始めた。

 これは……!

 そのまま、俺は体が薄黒いスライムに変体した。そう、スライムが俺の顔にくっついた時、スライムが俺の中に少し入った。

 だからこそ、できた技なのである。

 体質が変わるだけだから、プニプニにでもなるかと思いきや、マジでスライムになるのは予想だにしていなかったが、この可愛らしいキュートでチャーミングな姿なら町の中に入りやすくなるぞ! 女の子はしゃがみこみ、俺のぷるぷるぼでぃを見ている。


「とりあえず……俺の着ていた服を着てくれ……あとブーツもな」


 女の子は俺の周りに落ちていた毛皮の服を持って、自分の身を包み込み、少しブカブカのブーツも履いた。

 肩を上げ、毛皮の服に顔を擦り付けて、幸せそうな顔をしている。

 これで普通に見れるようになった。

 まあ、下着を履いていないのは少々気になるが、見てくるような下品な奴はいないだろう。そういえば、俺のパンツもなんか、一緒に溶けちゃったな……

 割とカッコいい柄だったから気に入ってたのに……


「よし、スライム! 俺を抱えて町に出発だ!」


 女の子は満面の笑みで頷き、俺を抱えて町に向かった。

※【一人で異世界アイドル 〜気づいたら、メンバー探して二百年経ってた〜】は存在しません。

次話もよろしくお願いします!

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