桜の日課
今日は何しようかな。
放課後になり、私はこれからの事を考えていた。
仲良くなった回りの子達は陸上部や吹奏楽部等に入っている。
運動してこなかったから文化部になるんだけど、帰宅部はベルがダメって言うから困ったものである。
演劇部、美術部、書道部。私にしっくりくるものが見当たらないのである。
悩みながら歩いていると桜ちゃんに会った。
「おー鈴、苦虫を噛んだような顔してどうした?」
「桜ちゃん、私はこれからどうすれば・・・。」
「んーよくわからないけど私に任せなさい。とりあえず今花壇の手入れしてるからそれを手伝いながらでよければだけどな。」
えっへんと胸を張り、こっちに来てと手招きされる。されるままに私は花壇へ向かう。
「そっか、部活ねぇ。私は部活には入ってないからなぁ。そう言う話は困るんですけど。」
「ごめんね、私なんかの話聞いてくれて。それより何で花壇の手入れなんかしてるの?」
「それはよく聞いてくれた鈴。私は花が汚くなるのが嫌なのだ。だからこうしていつも綺麗にしてるんだよ。一人でするのには少し辛かったから助かった。」
「美化委員とかではなくですか?美化委員の人達もそう言うことをされるのではないのですか?」
「んーそうなんだけどな?花壇とかは週に一回しか見ないんだよ。そら校内やら学園周辺やら頑張ってくれてるんだけど。だから私が日々の事は見ているのだよ!」
「桜ちゃんは偉いですねー。」
思わず頭を撫でてしまう。可愛い。
「こら鈴、そんな暇があるのならちゃんと花の手入れを・・・って汚れた手で撫でるなよ!困るんですけど!」
「あぁごめんね、つい。」
「つい、でして良いことと悪いことくらいわかれ?はいはい他にもあるから頑張っていこー。」
「おー。」
雑草を抜いて肥料を撒き、空いた花壇にはこれからの季節の種を蒔く。
今日は撫子に鳳仙花、マリーゴールドの種を蒔いた。
夏になるのが楽しみ。早く育って欲しいな。
「ふぅ、いつもより作業が捗るから助かった。ありがと、鈴。」
「桜ちゃんの頼みなら聞きますよ。そうだ!部活には入らずに一緒に花壇の手入れをすることにします。花は大好きだからそうしよう。」
「んー嬉しい話なんだが、放課後にすることはあまり無いんだ。今日は別件でいられないからこうして手入れをしに来たんだ。」
「別件・・・ですか?部活には入られてないと言ってましたけど、どちらに?」
「薊の所だよ。私は副会長なのです!」
とても誇らしげに言ってのけたので撫でてあげた。
「今日蒔いた撫子見たいに可愛いですよ桜ちゃん。」
「だから汚い手でってもう洗ってたか。じゃなくて!それよりも聞いてくれよ鈴。副会長なのに『貴女は席を外してくれないかしら。』とか言うんだよ。副会長ってなんだっけ?空木はいいのにずるい!」
「空木さん?その方も生徒会の人なんですね。まぁ桜ちゃんには難しい話なんですよ。仕方無いですよー。」
「私これでも学年のトップなんだぞ!それなのに難しいとは・・・なんだかイライラしてきたぞ。よーし鈴、乗り込むぞ!」
「えぇ・・・私もですか。と言うか大事な話をしているのに私も言って良いんですか?」
「為せば成るなさねばならぬ何事も!そう、やってみたら全てわかるのだ。」
この人本当に学年首位なのかわからなくなってきた。わかったことは桜ちゃんは可愛い。
「失礼なことを考えずにほら、生徒会室に行くぞー。」
「お、おー。」
「それに私はおねむだから早く眠りたいのだよ。」
「本当に子供みたいですね。やっぱり小学生なんじゃ・・・。」
「あー言ったな。鈴なんてもう嫌いだ!」
「ごめんね、嫌いにならないで。アメ持ってるよ、これあげるから許して?」
「仕方無い、今回だけ多目に見てやるとする。早く早く。」
不意に手を引かれ走り出す。楽しみが待ちきれず走り出す子供のように。転びそうになりながらも手を引かれついていく。
花壇には枯れかけた花が1つもなく綺麗に咲き誇っている。どこを見渡しても枯れそうな花は1つもなかった。いつも桜ちゃんが手入れしているから枯れないんだと思い込んでいた。
いつもなら花が話しかけてくるのに今日は話してこなかった。昨夜にベルに言われて自分から話しかけることをしなかったからそう言うものなのだと思い込んでいた。
この不自然な事を変だとは思わずに私達は生徒会室へと向かっていく。
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あの子供みたいなのは誰。あんなに仲良く鈴ちゃんと話をして。綺麗な手で花壇の手入れなんかしたら手が汚れてしまう、傷つくかもしれない。
何処にいるか視るのに痛みを伴うが一瞬だけ見えたら学園内なら十分にわかる。それで見つけたと言うのに。
私なんかあんなに親しげに話してくれたことなんて・・・もっと話をしたいのに。
写真部に入っていつも姿を撮ろうと思っていたけどあそこは駄目ね。私がいる場所ではなかった。品の無い集まりでヘドが出る。
部活には入らずにこうしているのが一番ね。委員長になれたのはよかった。話す口実が出来るから。そのための気配りはしてきたつもりだ。先生の相手をするのは少しめんどくさいが必要経費だ。プリント等を手渡しできるのはとてもいいことだ。
あぁ鈴ちゃん。私は貴女の事を見続けているのに貴女は・・・。
あのお子様アメまでもらって!私は鈴ちゃんから何も貰ったこと無いのに。
しかもどさくさに紛れて手を繋いでいるじゃない!私なんて入学式の日しか触れられないでいると言うのに・・・。
許せない・・・一緒に何処に行こうってのよ。
何処に行っても私は貴女の事を見ているからね。
撫子は撫でたくなるほど可愛い花と言うことからつけられているそうです。
撫子みたいに可愛い。撫でたくなるかわいさ、可愛い(確信)