桜の嵐
目が覚めると涙が出ていた。
どんな夢を見ていたのだろう、もうなにも覚えてない。
「おはよう、鈴。今日はちゃんと目覚められたわね。二日続けて遅刻なんてしなくて済んだわね。」
「おはよう、そんなことしないよ。私だってやれば出来るのです!」
えっへんと胸を張ってみせた。
簡単に朝食をし、身支度を済ませる。ゆっくりとしていても今日は遅刻せずにすみそうだ。
「身だしなみはちゃんとしなさいよ。荷物は確認した?忘れ物は無いかしら?大丈夫?」
「もーベルは心配性なんだから。今日は大丈夫・・・じゃなかった。鞄に何も入ってないや。あれれ?」
「言ってて何だけれども、流石にそれはどうかと思うわよ。」
ベルに少し引かれ気味に言われたけれど今日は楽しみだから気にしない。気にならなかった。
いつもなら少し言い合いになるところ何だろうけどもね。
「これでよしっと。それじゃあベル。行ってきます。」
「行ってらっしゃい。気をつけてね。」
学園へ向けて歩いていると後ろから声をかけられた。
「おはよう鈴ちゃん。今日もいい天気だね。何かいいことが起きるかもね。私としては鈴ちゃんに出逢えたことがいいことかな、なんて。」
そう声をかけてきたのは葵だった。さらっとした長い黒髪に微笑まれ、同じ女だと言うのに少し見惚れてしまっていた。
「んー鈴ちゃん?起きてる?もしかして無視されてるのかな?そしたら私は悲しいかな。」
「あぁぁぁああ、ごめんね!葵ちゃんが美人過ぎて見惚れてしまってたなんて・・・おはよう。」
「ふふっ、おはよう。そう言われるとなんだか照れちゃうわね。嫌われてなかったようでよかった。」
「そんな、嫌うだなんて。葵ちゃんは社交的だし、優しいし。嫌う要素はないよ。」
「そっか。ありがとね。一緒に学園へいきましょ。」
「はい。よろこんで!」
朝一番に葵ちゃんに声をかけられて一緒に登校するなんて。今日はとてもいい1日になりそうだな。
「鈴ちゃんって何処から来たの?私は学園に近くの場所からやって来たの。」
「私は東京って言っても田舎の方で。自然がいっぱいで東京って思われないような場所に住んでたよ。この学園は緑もいっぱいで親に頼み込んでここに来たんだ。」
「へぇー東京から。東京の田舎って言ってもここよりはずいぶん都会でしょ?回りに何もないもの。」
「そんなこと無いよ。私の住んでた町にはスーパーが1つあるだけで映画館もゲームセンターとかなかっよ。」
「それは東京の意外な一面?かな。でもここも映画館も何もないよね。」
「でも木々も花もいっぱいで私は好きだよ。」
「鈴ちゃんは自然が大好きなんだね。」
「うん。小さい頃から緑に囲まれて育ってきたから。この学園はそう言う緑化に力を入れているって聞いて。」
「それはもうこの学園は鈴ちゃんの為に出来たような学園だね。運命的なものを感じて少し妬けちゃうなぁ。」
「妬けちゃうって。またまた。葵ちゃんは近くだからこの学園を選んだって感じなの?」
「んーそう言う感じかな。他にもあったんだけどなんだかこの学園に魅力を感じてかな。」
「じゃあ私と同じだ!えへへ。なんだか嬉しいな。」
「そうだね。鈴ちゃんみたいな可愛い子とも出会えて私はこの学園を選んで良かったって思ってるよ。」
「もーからかわないでよ。」
そんな会話をして学園の1日が始まった。
------------------------------------------
今日は無事遅刻もせず辿り着けた。
昼休み、購買へと何か買いに行きながらふと思う。
そういえば今日はあの子が倒れてた道を通ってないけど元気にしてるのかな。
そんな心配をしてると目の前にひょこひょこ動くリボンが目につく。
「あのー。鈴さんでいらっしゃいますか。私昨日助けていただいた桜です。」
リボンが喋りかけてくる。
どういう仕組みなんだろう。ツンツンつついて触っていると。
「わざとだろ!やめろよ、目線を下に!」
目線を下に下げると小さくて可愛い女の子がいた。
なるほど、リボンが喋っていたのではなくこの女の子が喋りかけていたんだな。うんうんと一人で納得していると。
「はぁ、お礼を言いにわざわざ来たけどもう帰る。」
そう言ってリボンがくるんと百八十度回って動き始めた。慌てて私は
「ごめんね、気づいてたけどあまりにも小さくて可愛くてリボンで大きく見せようとしてる感じがしてからかいたくなっちゃって。話すのは初めてだね。おはよう桜ちゃん。」
「むー。一応先輩なんですけど。ちゃんはやめてほしいです。」
「え?またまた、桜ちゃんったら。」
「本当の事ですのよ。」
背後から声が聞こえる。凛とした透き通る声。聞き間違えることは無い声。
「せ、生徒会長さん。おはようございます。今日は遅刻しませんでした。」
「遅刻しないのは当然の事です。それよりも桜は貴女の2つ上の三年生。身長で間違えることは仕方の無いことですわね。」
「こら薊。私も怒るときは怒るんだぞ。」
「へぇ。道端で倒れてて助けられた子の言う台詞なのでしょうか?」
「あぅ・・・それは、ずるい。」
「えっと、私はおいてけぼりなんですけども。お二人はやっぱり知り合いですか。それよりもごめんなさい!桜先輩!」
「だそうよ、桜先輩。」
「ほら薊はそうやって私をいじめる。今日こそ嫌いになるからな。」
「鈴さん。桜の事は先輩って呼ばなくてもよくてよ。」
「ちゃんは嫌だけど先輩の方がもっと嫌だから。鈴にはちゃんで呼ぶ権利を授けよう。」
「は、ははぁ。ありがたき幸せ?これからもよろしくね桜ちゃん。」
「話はそれくらいでいいかしら?終わったのでしたら行きますわよ桜。」
「はーい。それじゃあまたね鈴。」
嵐のような二人だった。桜ちゃん。あんな子だったのか。とても可愛くて次にあったときはナデナデしよう。そう心に決めたのであった。
「あっ!お昼の時間が・・・」
急いで購買へと向かった。
------------------------------------------
「なぁ薊。あの子本当に能力者なのかー?」
「えぇ。間違いなく。空木さんにも調べてもらったけども、昨日も花に話しかけていたそうよ。能力としては花と会話かしらね。」
「むー。それは役に立ちそうでたたなさそうだな。本人次第で入れるか決めるのか?」
「えぇ。それに一人は入れる子の目星はつけているわ。間違いなく入ってくれる子がね。」
「その子はどんな子なのさ?」
「推測が正しければ情報共有の能力。彼女はとても使えるわ。今の使い方は誉められた事では無いけどもね。」
「むー。それじゃあその子を揺すりに行くか。」
「桜は生徒会室に戻ってなさい。いると話をややこしくしそうですもの。」
「またそうやってのけ者にする。嫌いになるからな。」
「それじゃあまたあとでね。」
桜をいつものようにスルーしてあの子のいる場所へ向かう。
私はなんとしてもこの学園を守らなければならない。どんなことをしても。
------------------------------------------
私は東京の事詳しくないです。調べてもないので雰囲気でお願いします・・・。多分あるだろうそう言う場所は。