始まりの朝
朝、小鳥の囀ずりで目が覚める。
「ふぁー・・・よく寝た。」
府抜けた声が出てしまう。そんなゆったりとした時間を過ごしながらふと時計に目をやるとすでに時間は8時を過ぎ30分を回ったところである。
「今日は入学式だったような・・・遅刻する?!」
飛び起きて急いで制服に着替える。入学式そうそう遅刻は目立ちすぎる。先生方からも不良に思われるのもよくないし何とか・・・。
(おはよう、何度も起こそうと試みたんだけどね。ぐっすりでいくら呼び掛けても起きなかったもの。急いで怪我しないように気を付けなさいよ。)
「もー、もっと大きな声で起こしてよ!まぁ、私が起きなかったのが悪いんだけどさ。おはよう、ベル。」
おっとりとした声で話すのはベルフラワーのベル。彼女は私が物心ついた頃からずっと一緒に生活している花。
なんで花と会話が出来るかと聞かれると上手く答えることが出来ないんだけど、彗星の見える日の夜から花の声が聞こえるようになったみたい。私が本当に聞けるようになったのはもう少し時間がたってたからだったんだけども・・・。
顔を洗い、手早く髪を整え、制服に腕を通す。
ついに私も高校生になる。高校からは親から離れ、全寮制の高校に進学した。一人暮らしを許してくれた親には感謝しないといけないな。
寮からなので近いからとつい寝過ぎてしまったのが悪かった。明日からは気をつけていかないといけないな。
「じゃあベル、行ってきます!」
(はい、行ってらっしゃい。ちゃんと寝ずに起きているのよ?)
「大丈夫だよ、心配性なんだから。」
そう言い残して足早に家を出た。
大丈夫、まだ間に合う。近道を聞きながら急いで行こう。
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青い空、白い雲、暖かい春の日差しの中駆けていく。
(そっちよりこっちの道の方が少しだけ近いよ。)
「そうなの、わかった!ありがとね。」
道辺に咲く花に近道を教えてもらいながら急いで向かう。
こうした事が出来るのはとても助かっている。
獣道のような所を通ることもあるが仕方無い事だ。
ふと分かれ道に差し掛かるとき。
(どちらの道も同じ距離、だけど後悔の無い道を選んでね。)
そう声をかけられ、突然目の前が真っ暗になる。
「えっ?これは何?!」
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「残念ながら・・・」
「○○!どうして・・・」
「悲しいお知らせが・・・これから・・・」
「鈴、今日も・・・だったの・・・」
「さようなら・・・」
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「入学そうそう遅刻なんて・・・」
「あの・・・ありが・・・」
「貴女は選ばれ・・・」
「この学園を守る覚悟は・・・」
「○○先輩やめて・・・」
「さようなら・・・」
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(右が始めみたもの。左が後からみたものだよ。)
断片的に見たことも聞いたこともない記憶が流れ込んできた。まるで今までに経験してきたかのような感覚を感じた。倦怠感、焦燥感、悲愴感。
どちらも最後の結末は同じ感覚に見舞われた。
この花は確かクロタネソウだ。この独特の花の中央にある黒い種子。花言葉は未来、だからってそんな事が出来るの?!
(これで僕の仕事は終わりだよ。また会えるだろうからその時までバイバイ。)
「ちょっと待って!・・・って消えた・・・」
どういう事なんだろうか・・・しかし時間は待ってくれない。距離が同じなのに左側に行くと遅刻するなんて・・・何かあるんだ・・・確かめないと。
分かれ道を左側に向かって走り出す。
しばらく走ると声がする。
(誰か助けてあげて!)
遅刻する理由がわかった。この道に来てよかった。
声のする方に行くとぐったりと倒れている女の子がいた。私と同じ制服を着た女の子が。
(あぁ・・・貴女には私の声が届いたのね)
「助けに来たよ。この子はどうして倒れてるの。同じ学園の子だと思うけど、同じ新入生かな」
(それは*ЖЁθ∃☆£※ЙКДΩΨΞ)
突然耳鳴りが響く。痛い、痛いこの激痛は何だ。初めての感覚。花の声を聞いて初めての出来事。
(あぁ・・・大丈夫?もしかしてこの子の事を話すと痛くなるのね。)
痛みが和らいでくる。どうやらこの花の言っていること通りなのであろう。
(このままここにいると危ないから早く学園へ連れていってあげて。)
「わかったわ、任せて。」
手早く女の子を背負い急いで向かう。
そうして学園の鐘が鳴り響く。
入学式そうそう遅刻が決まる鐘の音が・・・。
ゆっくり更新。