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花に咲く星々。  作者: すもちー
18/19

side:夏無&空木②


少女が扉の前で何かをしている。

何をしているのだろうか。本を動かしている様だけども。そう思っていると本棚が回転し少女はそのまま外へと出ていった。

しかしこの場合司書が目を離した隙に変わっている事とのつじつまが会わない気がする。どういう理屈なのだろうか。


「さーて夏無殿、彼女は動き始めました。我々も向かいますか。」


考えを閉ざすように空木は私に話しかけ手を引く。

考えるのは後だ、まずは何をしているのか見ることから始めよう。


「では連れていってもらいますよ。」


---------------------------------------------


少女は歩く。何処かに向かうあてもなく、校内を歩いている。


ふと立ち止まったかと思うと何もない壁に何かをしている。するとその壁は動き少女はその中へと進む。中に入ると同時に壁も閉じていた。


「これがあの少女の能力ですか?」


空木に質問する。どうせあらかたの事を知った上で泳がせているんだ。


「ええ、まぁ私としても半信半疑ではありましたよ。そうですとも、まさか学校内の造りが変えられていたなんてね。」


「は?造り替える?元からあったわけではなくですか?」


こんな学園だ、元から隠し扉や地下通路なんてものがあったところで驚かない。現に生徒会室がそれを象徴している。


「まぁわかってくださらないと思いますので確認方法としては私がした徒歩による測定ですかね。校舎の外と中の歩数を数えてみると十数歩足りなかったのでありますよ。最初は私のように空間を作り出してると思えば違いました。秘密基地のように造り出しているのですよ。私の能力と違う点はいくつもありますが、あの能力は他者からでも使用可能なのが大きいですな。だから秘密にしてたでありますよ。」


つまりこの少女を会長が知れば空木を用無しとして見限られると?いや普通に考えると空木の能力の方が優れている。私はそう感じる。他者が使えるのが大きいのか。空木の能力は空木がいて初めて発揮されるが、少女の能力は造ってさえいれば誰でも使用可能な抜け道と。


「まぁいずれわかることですので今回で会長に明かしますよ。まぁどうでもいいですがね。」


空木らしからぬ発言だなと思いながらもどんな関係なのかわからず言葉が出てこない。


「消してしまおうか。」


はっと空木の顔を見る。


「どうしたでありますか?夏無殿。鬼か化物でも見たように怖い顔をして。」


いつもの空木だった。今の低く冷たい殺気染みた声はなんだったのか。冷や汗が垂れる。空木の深淵の一部を覗いてしまったのかもしれない。早く終わらせないと少女が危ない、そう思えて仕方なかった。


「そ、それでどうしますか?乗り込んで何をしているのか暴くのですか?わざわざ学園を造り直して秘密の部屋を造って。」


「それはですね、彼女は隠しているものが多いでありますよ。落とし物を拾っては隠し、そんなことを日頃からしているであります。」


そんなことをしているのに見過ごしていたのか。この人はどういう神経をしているんだ。


「まぁ夏無殿がそう感じるのも仕方ないでありますな。私からすると落とした方が悪いでありますよ。落としてもないのに落とされる気持ちを知ればこうもなりますよ?」


まただ、空木の声色が変わった。いったい過去に何があったんだ。聞けば教えてくれるかもしれない、だけど引き返せなくなり私まで巻き込まれそうな感じだ。この感じは駄目だ。私はもう失うことが出来ないのだから。


「いいですよ、空木先輩にも色々な事情があるようですし。とりあえず司書さんも解決してほしいようですし早いところ済ませましょう。」


「そうでありますなぁ。どこで決着をつけますかな?やはり当初の問題の図書室ですかな?」


空木に言われ私は頷く。決戦は今夜、図書室で待ち伏せと行きますか。


---------------------------------------------


夜も更け生徒は居なくなっている。私達二人を除いて。そして空木の能力により普通にはわからない裏の世界にいる状態で待ち伏せをする。


「まぁ彼女の能力は人に見られていると発動しないようですよ。この裏の世界は別の場所にあるので見ているとしても見られていないようになっているでありますな。」


簡単に種明かしのように説明を受ける。司書が見ていても発動しなかった理由はそこにあるようだ。

さてそれよりも本当に現れるかどうか。そこが心配なのだが空木が言うには、


「彼女はここで寝泊まりしているようでありますし安心してくだされ。」


とのことだ。なんとも信用しがたい話だが実際に見ていたのであろう。信じるしか他はない。


そうこうしていると扉が開く。来た、あの少女だ。

扉を閉めスタスタとあの本棚の前へと赴いている。

空木に合図を送り私達は表の世界へ戻ってくる。


「そこで何をしているのかな?」


私は少女に話しかける、ばっと振り返る少女は驚きに満ちている。


「んーどうしたのかな?怖い幽霊でも見ちゃったかな?」


私は煽るように少女の本性を見るためにそう言い放った。


「貴女は誰、ここには誰も居なかった筈だわ。なのに何で居るの。今日は司書さんも居ないのに。」


「まぁまぁ、ゆっくりお茶でもして話をしない?貴女の秘密基地も気になるし。」


少女の驚きはさらに大きくなる。キッと睨まれる。おぉこわいこわい。


「貴女も神隠しに会いたいのかしら、それなら招待しますよ。私以外は出入りできないのだから。」


「それじゃあ試してみますか?それより自己紹介してませんでした。私は一年の伊吹夏無です。アイドルしてるよ☆君もファンにならない?」


そう言って私は手を差し伸べる。もし握手してくれたのなら話は早いのだがそうはならないだろう。


「へぇ、貴女一年なの。私は二年の音切千草よ。その汚い手は引っ込めて?一年風情が私に触れようなんて。」


思ったよりこの少女、千草は性格が歪んでそうだ。ここで三年だった場合の反応が知りたいがまた今度だ。


「連れませんねー千草先輩。それであの秘密の部屋で何をこしらえているんですか?せっせと盗んでいるみたいですけど。」


「貴女には関係無いことだわ、でもいいわ。そこまで知っているのなら入れてあげる。二度と出られないようになるけどもね。」


「それはやってみないとわからないんじゃありません?最初から決まっているなんて未来でも見てきましたか?」


「大口を叩くじゃない。泣いて這いつくばったって許さないから。」


さて当初の予定通りに事は進んでいるがどう丸め込むか。


千草が本棚を触りそして動き出す。私は誘われるままに中に入ると構図が変わっていた。最初に見た部屋とは違う。


「あら?怖じ気づいてしまったかしら。でももう許してあげないから。」


千草は勝ち誇ったように話す。私が別のことで驚いているとは知らずに。


「それじゃあアイドルの夏無ちゃん?だったかしら。春無ちゃんかな?どうでもいいけど忘れ去られるのだから。」


「夏無ちゃんだぞ☆もー千草先輩も人が悪いな。でもこれが貴女の力なんですね。秘密はいくつもあると。」


そう言う私の顔を千草はまた睨み付ける。図星のようだ。そろそろ空木が来てくれると思うんだけどなぁ。


「まぁいいわ、貴女は知りすぎた。ただそれだけよ。さようなら。」


そう言って千草は外に出ていった。


「空木先輩、早く来てくださいよ。逃げられちゃいますよ。」


私の言葉が消え去りシーンと静まり返っている。まさか居ない?私は捨てられたのか?焦る、どうなるんだと。このまま終わるのかと。いやそれは駄目だ。必ず抜け出して夢を叶えなければいけないんだ。


---------------------------------------------


「まさかあそこまで知られているとは、恐ろしい一年もいたことだわ。」


「一年だけじゃないでありますよ。」


「誰!」


「初めまして、私は二年の空木。どうも千草殿。」


「空木?あぁ生徒会長の犬ね。」


「ははは、いつもなら笑って流しますが今虫の居所が悪いのでありますよ。」


「へぇ、それでどうしてくれるのかしら。貴女もあの一年のようになりたいのかしら?」


「千草殿は逆にその立場になられたらどうなるのでしょうかね。逃げられない、どこまで行っても果てはない。そんな空間に。」


「変なことを言うのね。あたかも私がやっているかのように貴女も出来るって言うの?」


「百聞は一見にしかず、では貴女を消し去ります。」


「へぇ、貴女もそんな顔が出来るんじゃない。ただの犬じゃ無かったのね。」


「それ以上喋るな。」


---------------------------------------------


いくら本棚を蹴飛ばしても上に登っても抜け道ひとつない。困った。窓はあるのにびくともしない。この場所は本当にいったい。


「すみません夏無殿、お待たせしたでありますな。」


諦めかけたその時に空木は現れた。


「ちょっ先輩、本当に見捨てられたかと思って泣きそうになりましたよ。やめてくださいよ。」


「まぁまぁ、全て終わったので帰りましょう。」


全て、千草をどうしたのか私は怖くて聞けなかった。空木は謎が多いと思っていたが闇が深すぎる。でも一人にしていてはいけない。そんな気がする。私の中の私もそう答えている。だからこれはそう言うことなんだ。


「空木先輩がどんな人でも私は一生ついていきますからもうこんなことはこりごりですよ。」


「ははは、またまた。では帰るとするでありますよ。明日はみな生徒会室に集まっているでしょう。」


そう言って私達は外に出た。


司書には今後変わることがない。変わったときにあった本はもう無くなってしまった、申し訳ないと伝えこの話は幕を閉じた。


会長になんて報告すればいいのか悩む、全てを打ち明けない方がいいだろうと思いながら空木の顔を見る。いつもの顔だ。こっちを見て微笑む。作られた仮面をつけているかのように。次に深淵を見るときは全てを知った時になるのだろう。

空木さん、どうしてしまったん。

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