side:夏無&空木①
はぁ、なんでこんなことになっているんだろうか。
私はアイドル活動をより良くできると聞いて生徒会に入ったと思ったのだけれども。
「おーい、夏無殿ー。こっちですぞー。」
あの人本当にのらりくらりと。居なくなったと思えば突然現れて、もう少し人間らしい動きをして欲しい。
「それで、依頼の場所はここなんですか?」
私達はご意見BOXの中の1つを解決しに三階にある図書室に来ている。
ここで何があったかと言うと、本が日毎にあったり無かったりするようだ。
「しかし本が突然無くなったり、無くなったかと思えば出てきたりって誰かのイタズラで決まりでしょ・・・。」
こんな事を会長は解決しろと言うんだから変な話である。
「夏無殿?大丈夫、会長は無駄なことに時間は割かないタイプですから何かしらの意味があると思うのですよ。ささ、ぱぱっと解決いたしましょう!」
空木は会長に全信頼を置いてるかのような、いや置いているのであろう。しかし未だに何故会長にここまで尽くしているのかわからないものである。
「空木先輩はなんで会長の事をそんなに信頼してるんです?好きなんですか?」
気になるものはそのまま置いておけない。からかいながら本音を聞き出せればと思うけど無理だろうな。
「ふむ、まぁ古くからの付き合いと言うことだけで。好きか嫌いかで答えるのなら嫌いですね。はい。」
んんー?想像を遥かに越える返答を貰ってしまった。
しかし本音なのか冗談なのかわからないのがこの空木の悪いところ。しかし古くからの付き合いとは、何かしらあるんだろうな。本家だ分家だめんどくさい話になるのなら切り上げよう。
「まぁ会長はあれな人ですからね。それでは依頼人から話を聞いてみて」
「質問しておいて反応が薄いのは些か悲しいものがありますなぁ。流したいのであればつつきませぬがね!では行きましょうか、夏無殿。」
つついてるっての。今に始まった事ではないからいいけれど、本当に空木はやりづらい。
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「中庭で騒いでる子と会長の後ろをいつも歩いている方ですね。どうも初めまして、今回の依頼をさせていただきました三木です。ここの司書をさせていただいております、以後お見知りおきを。」
「騒いでるのを訂正していただいても?アイドル活動を兼生徒会広報の伊吹夏無だぞ。よろしくね☆」
「会長の小判鮫こと空木と申します、三木殿今回はよろしくですぞ。」
おしとやかで物静かな人かと思えば開口一番に私のことを蝉か何かかと言うとは最低な人だな。人は見かけで判断してはいけないな。
ついいつもの癖で口調を変えてしまった、物凄く変な顔をしている。ヤバイヤバイ。
「一応生徒会の仕事ですのでアイドル口調は今後控えさせていただきますが、と言うか求められてないのはわかっていますので。それで今回の話ですがただのイタズラでは無いのですか?」
「はい、イタズラかと思って全ての本の位置を把握、写真で場所の確認等色々試してみてわかったのですがある一角の本棚がごっそり変わっているのまでは最近突き止めました。」
そこまでわかっているのなら話は早い。その本棚を調べて見張ればすぐに解決するだろう。と言ってもそれはすでにしていそうなものだが。どうだろうか。
「それで調べてみても1日見ていても変わらず次の日になると入れ替わってしまっていると。面白い話ですな!マジックみたいで楽しみですぞ。」
「そうなのですよ。1日夜も見張っていて変わりなく、次の日になると目を離している隙にまるで手品のように入れ替わってしまっているのです。これにはもうお手上げです。」
目を離している隙に誰かが入れ換える?短時間に数百は入る本棚の中身を入れ換えるなんてこと出来るはずが・・・無いとは言いきれないか。
「それでは三木さん、今夜私達にこの図書室を預からせていただけませんか?我々も実際に見てみたいのもありますので。」
「我々もっと言うことは悲しい。ですが夏無殿と一夜を共に出来ると考えると胸が高まりますな!」
この人は本当に解決する気はあるのだろうか。しかし空木で良かった。この案件は空木の能力があれば用意に看破できそうだ。
この依頼は能力によるもので間違いないと思う。
「それではこちらへ」
私達は案内され、問題の本棚の前へと案内される。
しかしこの広い図書室に膨大な量の本。どんな人が来ても納得のいく本が見つかるであろうくらいには種類がそろっている。この学園はどれだけの資金や裏があるのかますます気になる。
「こちらが問題の本棚です。」
見ると他の本棚と変わり無いものであった。
変わる前と変わった後の写真を見せてもらったが中の本の内容が違うだけで見た目もなにも変わりがなかった。
「それではお願い致しますね。薊会長でないので過度な期待はしていませんが、その会長が推薦してくれた方なので最低限の期待はしておりますので。」
何処に行っても会長会長と。会長に洗脳でもされているんじゃないのか?
そんな疑問を浮かべながらも私はお任せくださいと返事をした。
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「それで夏無殿の推理は判明していない生徒の能力によるものだと思っているようですな。その推理は正しいと私も思いますぞ。」
空木は二人きりになるとそう口にしていた。
この人はなにも考えていないようで他の人より深く考察し、そして他人の考えを読み取ることが出来る。
今回の件は考えを読み取るのは容易だとは思うが。
「その通りです空木先輩。まず間違いないと思います。一瞬で変える、しかしそれをする意味も理由もわからないのがモヤモヤしているんですよ。」
「そんなの簡単な話ですよ。その本棚の裏に謎があるのですから。」
本棚の裏?つまり何かを隠している?
「ものは聞くより実際見てみましょう。」
そう言うと私の手を取り裏の世界へと移動する。
見た目は変わり無い。そんな気がする。
「この能力は裏に居るとき通過することも出来るのですよ。つまりこの本棚の後ろ側に行くことも可能。」
そう言って手を引いたまま本棚に向かって歩き出す。
「いや、ちょっと、ぶつかりますって!」
目を閉じたが痛みはなくただ手を引かれ歩いている。
おそるおそる目を開くと目の前には少し広い空間が広がっていた。
その場には色々な物が散乱していた。
その一角に一人の少女がいた。
「さて、夏無殿?これからどうしますか?あの少女が今回の犯人と言うわけですが。」
スピード解決にも程があるだろうと感じながらも少し考える。
「1日泳がせてみませんか?ここで何のためにこうしているのかを突き止めてからで無いと意味がない気がします。」
「流石夏無殿です。大正解ですぞ。まぁ私は目をつむっていたのですがこの問題を解決しましょうか。」
目をつむっていた?この人は知っていてそのままにしていたと。何をしているのか教える気はないから自分の目で確かめろと言わんばかりだ。
「それではこのまま待ちましょうか。この先どう動くのか見ものですね、何を見てきたのか私にも見させてもらいますからね。」
と言うかこの人は全て知っててあんな馬鹿みたいな知らないフリをしていたのか・・・本当に謎な人だ。
鈴、桜ペアは走り抜けれたけれどこのペアは長くなったので2分割です。
夏無、空木ペアは相性よさげですよね。