そして動き出す
「動けないようにして話をするのが紳士的だとは思いませんけれどもね。」
そう言うと葵はその場から歩き中央にある椅子に座る。
端から見ると何でもないように思える事も会長と空木には驚いて見えた。
「そうね、それは失礼したわ。貴女はその能力でこの場所に来た。間違いないですわね?」
「そうかな?鈴ちゃんとの愛の力かな?なんて。」
「えぇ、あああ愛の力?!」
突然の発言に私は驚きが隠せなかった。ただのクラスメイト、憧れる友達。そんな葵からまたからかいなのかわからない言葉に戸惑う。
「それはいいのですが葵殿?私の能力を如何にして抜けられたのですかな?」
「能力には能力で対応するまででは?まぁそこのアイドル気取りの奴とは能力の格が違うのよ。」
「また馬鹿にしたな?お前は私の操り人形になりたいとみた。」
「その話は後で個人的にしてもらえないかしら?想像とは違うことをするのね、日向葵と言う人間は。」
「あら?想像と違うとはどんなことを想像されてたのでしょうか?まさかただのストーカーか何かだと?だとしたら会長さんは頭の中空っぽなのでは?」
「貴女の能力はそうね、ストーカーに最適なものだとは思ってましたわ。ただ空木さんの能力看破。そこは思いもよらなかった。」
「それはバレないように隠してあったのですから。この生徒会は能力者を消す組織から身を潜めるものか何かなのでしょ?わかっていたのであれば何故私は泳がされていたのですか?」
「それは夏無さんと違い貴女の能力は一目ではわからない。ストーカーのようにしか見えないようなもの。私の見える位置に居なくとも上手く立ち回れると踏んだからですわ。」
「なるほどね?それで?私の能力が検討違いだったのを知ってどうされます?」
「生徒会に入りなさい。そう言って貴女が簡単にはいるとは想像もつかないけれど?」
「それはその通り。私には入る意味がない。得もない。アイドル気取りの馬鹿とは違いますからね。」
夏無のことを目の敵にしているのかとことん否定する。ただ単に嫌いなのだろうか。
「そうね、鈴さんはこの生徒会に入る。そう言えば貴女はどう動くのかしら。」
「えっ?私がですか?」
突然話が振られる。横では夏無が怒り殴りかかろうとしているのを空木が静めている。
「会長さんも人が悪いですね。でも鈴ちゃんは入らないですよ。だって会長さんは鈴さんもスカウトしてなかったじゃないですか。」
「それはどういう事なの?」
「簡単な話だったんだよ鈴ちゃん。貴女も能力でしょ?そして貴女の能力が何なのか私はわからないけど会長さんはその能力ならいらない。バレないだろう。そう思って泳がされていたのよ。」
そうだったのか。最初に出会ったときに何か話を切り出せずにいた感じがしたがそれがこの話だったのだろうか。本人にしかわからないことだが。
「鈴さん、貴女にこの学園を守る覚悟はあるかしら。いえ、言い方が悪かったですわ。貴女に私達を助けてほしい。」
「守る?助ける?一体何がなんだかわからないです。」
「ほらね会長さん。鈴ちゃんには無理なんですよ。ですのでこれ以上はやめてくださいね?」
そうやって勝ち誇る葵。その場から私をつれて去ろうとするその時に奥の扉が開かれる。
「五月蝿いぞ薊。何をしているの。私が寝ているの知っているよね。怒るよ!」
「この小さいのは会長のお子様ですか?隠し子ですか?」
「なんだ?あぁストーカーの葵とか言うやつじゃないか。どうした?ここまで鈴のおしりを追いかけてくるとは凄い執着だな。」
「何をこのガキが。」
さらにややこしくなる。次から次へと葵は火に油を注いでいく。その行為を返すように桜もまた火に油を注いでいく。
「と、とりあえず皆さん落ち着きましょう?私は何がなんだかわからないんですけど。一つずつ終わらせていきましょう?ね?」
「鈴ちゃんがそう言うのなら私はそうしてもいいよ。」
「むー鈴には色々助けられたから今回は奴を許そう。」
「私はそんなのどうでもいいからあいつを(モゴモゴ)」
「私も夏無殿も鈴殿の意見に賛成致しますぞ。」
「それで会長さん。いいですよね。私にも詳しく話を聞かせてくださりませんか?」
「貴女はやっぱりここに必要なのですわね。いいですわ、話しましょう。この学園で何が起きているのか。」
私は間違ったのかもしれない。ベルは何て言うかな。でも私はここでやらなければいけない気がした。葵、夏無、桜、空木、薊。私達能力者6人がここで出会ったのは偶然ではなく必然なのかもしれない。
これから私は生徒会の一員になる。