異能力
「さあ話していただきましょうか、この生徒会について。」
「何ですか来て早々、もう少し落ち着きを持ちなさい。」
落ち着いていられるものか。こっちは勉強に手もつかず、と言うか勉強は元から出来ないんだけども。じゃなくて、こんな秘密を知れて夢まで叶うかもしれないんだから知りたくて仕方がなかったんだから。
「話すに当たってもう一人のメンバーの副会長には席を外していただいておりますわ。あの子がいると話がなかなか進まないものですからね。こちらも話す準備はしてますわ。」
「副会長なのに席を外してるんですか?それは本当に副会長?」
「えぇ。彼女の能力は群を抜いて必要不可欠なものです。あの子の学園での地位のためにと思ったのですが要らぬお節介に終わったのですけれどもね。」
「ふーん、話をややこしくするような人で会長さんが手回ししても無駄に終わるのに手を焼くような人物ですか。どんな人なのか是非会いたいものですね。」
「いずれ会いますわ。話が終われば会う機会もあるでしょうね。」
ふぅ、と息を1つ吐いた。よいよ話が始まる。生徒会の全貌を知るときがくる。
「何故隠す必要があるのかと貴女は聞きましたね。それは私達の存在を隠すためとも言いました。では何故?それは他の人と違うから。違う人物は迫害に合う。出来ることが違う人物は忌み嫌われる。簡単にはこんなところかしら。ただ求めているものは違うわね。前振りに言ったことも要因の1つよ。本当はこの能力を持つものを殺そうとする集団がいるのよ。能力に目覚めても悪さをする人は直ぐにこの世から消される。善行をしたとしても消されるのよ。」
意味がいまいちわからない。伝わらない。この能力を持ったから殺される?馬鹿なことを言い出した。だとしたらそれはニュースにでも取り上げられてわかることなのではないだろうか。そんな話は一度として聞いたことがない。
「まぁ最初から信用しろとは言いませんわ。聞かれなければ話すことも無かったことですからね。そんな中で誘った大きな理由は貴女が夏無さんが目立ちすぎたからよ。我々生徒会の本当の目的はその集団の排除、能力者たちの保護よ。」
「待ってください、消されると仰いましたがそんなニュースは聞いたことありません。消されるとはどういう。」
「言葉の通りですわ。文字通り消されるのよ。この世界からね。あったものが無くなるのよ。貴女には存在してたと分かりやすくするために生徒会の役員でライブをしてもらうようにしていただきます。これで消すことはかなりの労を使います。消される心配はほとんど無いでしょうね。」
「私はその集団に狙われていた・・・と?」
「断言は出来ませんけれどね。しかしこの集団が何か仕掛けてくるのは間違いないですのよ。卒業した先輩の能力でわかったことなのですけれどもね。この学園が襲われる未来を視たそうよ。」
「未来のわかる能力なんて最強じゃないですか!その先輩は?なんで助けてくれないのですか!」
「彼女は能力を失っていますわ。使う度に視力が落ちていき最後にみた光景は学園が襲撃されていたそうよ。嘘をつくような人ではないから間違いありませんわ。」
「視力が無くなっても視ることは・・・。」
「出来ませんわ。彼女の視力が未来を視るものですわ。今こうしてみているものを未来でも視えるようにしている。その場の未来を視ることが出来る。こうして貴女と会ってる未来も視ていたそうよ。目星の付け方はこう言うところにもあったのよ。」
「能力で治療は!そう言う能力があってもおかしくは無いはずですよね。そうすれば未来を見続けることも可能なのでは。」
副会長の能力を知らないとは言え未来視なんて私からすればこれ以上に無い最強の能力だと思う。そうすればいつどこで襲撃されるかもわかる。対策をたてやすい。
「もう1つ話しておかなければなりませんね。この能力は成人を過ぎる頃には無くなるのですわ。その時が過ぎると能力での影響をもとに戻すことが出来なくなりますわ。それを隠していた彼女は優秀過ぎた。」
「ゆ、優秀?それは無能ではないですか!何故早くに話さなかったのか。優秀であるのならより多くの未来を視ることではないですか?」
「そうね。私もそう思いましたわ。でもね夏無さん。桜の、副会長の能力を使わせまいと彼女は行動してたの。副会長の能力は治癒。傷は癒え穢れを浄化する能力ですわ。」
「治癒の能力!あるのであればなぜ・・・。」
「この能力はね。副会長自身の活動エネルギーを能力に変換しますの。例えば指を紙で切れたとします。それを治すのにはそれほど力は使いません。ですが事故で腕が折れたとすれば治すのには命を削る必要もありますわ。正確には寿命を減らしているわけではありませんけれどね。能力の使用後彼女は寝るのです。能力に見合っただけのエネルギー分眠ってしまうのよ。」
「この能力は万能ではない?視力が失い寿命を減らす?私も何かしらあるってことですか!どうなんですか!」
冗談じゃない。私はこの能力をかなり使用している。これでは何が起きても・・・夢が叶わなくなるなんてことあってはならない。そんなの許さない。
「夏無さんの能力上そうね、何故夢に固執しているのかしら?」
「それは見返してやるために。」
「誰に?」
「私を馬鹿にしてきた奴らを。」
「どうして?何のために?」
急に何を聞いてくるのか。調べて分かっていることだったのではないのか。気がすむまで答えてやりますけども・・・。
そう言えばどうしてここまで固執しているのだろう。私自身?憎かった?あれ?何か大事なことを・・・。
(大丈夫?)
そうだ、大丈夫。忘れるはずなんて無い。こんなことを忘れるわけなんて無い。そう、思い出せないことなんて無かったのに。
「自身で違和感があったのであればそれが代償かしら。記憶が薄れているのでは?夢を見るための原点の記憶が。」
「会長さんは何でも知っているって感じですか。味方になれて光栄ですね。」
「厳密には知らないわ。過去の経験と推測によるもの。夏無さん、理解したとは思いますが必要な場面では能力を使用してもらいますわ。決定事項ですからね。」
こいつは命が削れようとも使用させる気でいる。味方になったとしても疲弊しそうだ。どのみち選択肢は1つしかないのだからそれに頷くしかない。
「そうだ、空木さん。空木先輩の能力は?あの人は一体どういう・・・。」
「ふむ、夏無殿は私についてもご熱心なようで。嬉しい限りでありますな。」
突然わいて出たように現れる。もう驚いてやらないからな。
「ふむ、顔が強張ってますぞ。まぁ隠す必要もないと思うので言ってしまっても構わないですかな?会長殿。」
「えぇ、好きにしなさい。」
「では能力を知るには体験するのが一番です。私の空間にご案内しますぞ。」
「え?こことは違う場所に移動するんですか?」
「ささ、夏無殿。最初はピリッとしますがなれると気になりませんゆえ。行きますぞ!」
そう言うと空木は一歩踏み出したと思うと目の前から消え私を一緒に連れ込む。
その時全身にピリッと電流が走る感覚を受ける。前にもこの感じは合ったような・・・。
気がつくと同じ場所に立っている。どういうことだ?
「夏無殿、これが私の能力ですぞ。物事には表と裏があるのです。私の能力はその裏側に行く能力。そう思っていただくのが解りやすいかと!」
「裏側に・・・会長さんは目の前にいるけども私達の声は聞こえているの?逆にあちらの声は?」
「こちらの声を聞こえるようにすることも、逆にあちらの声を聞こえるようにすることもできますぞ。そうして私は情報収集をしてますからな。」
なるほど。これで突然現れてと言うのが理解できた。この能力を使うことで隠密行動も簡単にできてしまうと言うことだ。なるほど。会長がこの格好でも許すわけだ。
「ん?何か付いているでありますか?っと?夏無殿、少しの間お静かに。誰かきます。」
副会長が帰ってきたとか?それならそのご尊顔見るとしましょうかね。