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喫茶アトリ - COFFEE & CAFE Atori -   作者: sungen
☆喫茶アトリ番外編☆
9/33

【番外編】旧アトリのバレンタイン❤


喫茶アトリがオープンして、もうすぐ三ヶ月。


来週は2月の大イベント、バレンタインです。


「小雪、味見してみて」

カウンターで、隼人さんが私を呼んだ。

カウンター内には、寿さん、速水さんもいます。


「はい」

私は、フォークでチョコレート・キャッスル・プディングを切り分けました。


ココアパウダー、アーモンドパウダーを混ぜた生地を、小さなプディング型に入れて焼き上げ…、その上に、溶かした熱々のチョコレートソースをかけて食べるイギリスのスィーツだそうです。

熱々のチョコレートソースが…!上にかかっていて、美味しそう…。


アトリでは、バレンタイン特別追加メニューとして、明日から一週間。

このデザートをお店で出す事になります。


「…おいしい!」

「だろー!俺の百十八番目のスイーツだ!さすが俺!」

寿さんが言いました。

「小雪、じゃあこっちのガトーショコラも食べてみて――どっちがいい?」

隼人さんが美味しそうなガトーショコラを取り出しました。

「もう一種類?」

カウンターの段差で見えなかったけど、もう一種類あったみたいです。

「そうそう。これは実は――イテッ」

隼人さんが何かを言おうとして、無言の速水さんに蹴飛ばされていました。


「…美味しいです!すごい」

一口食べて、私は感動しました。

開店前、隼人さんと一緒に、色々なお店にお茶を飲みにいきました。

隼人さんはチョコレートも、お菓子も好きなので、色々食べて。

でも、こんなに美味しいのは初めて…。どちらも美味しいです。幸せ…。


「なあなあ!小雪ちゃん俺とサクの、どっちが美味かった?スイーツのプロとしてコイツに負けてたまるかー!」

寿さんが身を乗り出して言いました。

「あ」

と速水さんが言いました。

「あ…速水さんが作ったんですか?すごいです」「いえ…」

速水さんは苦笑して目をそらしました。


私は少し考えました。

「どっち……どっちも、凄く美味しいです。イギリスのお菓子は珍しいし、溶けたチョコをかけるとお客様は感動しそう…。ガトーショコラは定番だけど、表面のデコレーションも可愛いし、味も甘すぎなくて、けど甘くて美味しい…。隼人さん、どちらかだけなんですか?」

困ってしまいます。


「うーん、じゃあ、やっぱり両方出そうか」

「まあ、そうするか。お客様に選んで貰った方が良いよな。よっし!負けないぜ!」

寿さんが宣戦布告します。速水さんはスルー。

「何かサービスとかできたら良いんだけど」

速水さんが呟いた。

「ひひふふふっ!こんな事もあろうかと――じゃーん!ほら俺特製のお持ち帰りチョコ!うち親父のおかげでチョコは山ほどあるからなー。そうだ愛のキャッスルプディングって名前にしようぜ!ガトショは情熱のガトショーとか。キャスはハート型にしても良かったんだけど、真ん中で割ると縁起悪いって確かにそうだよな!あ小雪ちゃんそうそう、俺、親父がショコラティエやってて、母ちゃんはパティシエでじいちゃんは――」

三人は楽しそう。


「そうなんですか?」

私はメモします。


寿さんは、スィーツ界のサラブレット…。

速水さんはお菓子作りが趣味?

…速水さんのページには、はてなマークを付けておきます。


速水さん…彼は私のいる時間はあまりお店に居ないので、お話する機会が少ないし…ちょっと、とても恐そうで、今まで話かけられませんでした。これから…頑張りたいです。


寿さんは何か忙しげに働いています。――実は寿さんもいつも隔離室にいるので…お店にいるのを見る事は滅多に無いです。寿さんはとてもお話好きな方です。


「小雪、一杯どう?」

隼人さんが、珈琲を煎れてくれましたが――。

「あの、隼人さん…今――」


「コラ!隼人!サボるな!」

そう言ってキッチンをのぞいたのはカオルさんです。

そうなんです。今は営業中なんです……。

…今日は朝からとても寒いせいか、お客様はいないのですが。


「サボってないよ。ほら、これ」

隼人さんがカオルさんにお皿を見せます。

「あら、美味しそう」「味見してみて」


「――美味しい!」

「で、これを今日から出そう」

「え?明日からじゃないの?」

「もう今日からでもいいんじゃないかな」

隼人さんが苦笑して言った。カウンター内では寿さんが張り切っています。

「じゃあ、そうしましょうか」

カオルさんが笑って言った。


「つか、誰も来ないなー」

つかの間、手を止めて寿さんが言いました。

…本当に今日はさっぱりです…。


お客様、来るかしら――。


カランカラン。


「「「あ、いらっしゃいませ!」」」

私達は、笑顔で言った。


〈おわり〉


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