謹賀新年。
銀色の甲冑に身を包んだ二人の兵士に両脇を抱えられたまま、私は引きずられるようにして回廊を歩く。
やがて豪奢な扉の前で止まると、それがゆっくりと開かれていく。
目に入ったのは両端に金色の刺繍をほどこした赤い絨毯で、それがずっと先まで伸びているようだった。
ようだったというのは、私は押さえつけられて頭をあげることができないからで、ずっと自分が歩く数歩先の絨毯を見つめる。
玉座へと続くであろう段差が見えたところで、私は膝の裏を蹴られ、その場にへばりつくようにひれ伏した。
私の左側に立つ兵士が、「罪人を連れてまいりました」と報告する。
そうだ。私、罪人なんだ。
でも、何の罪を犯したのだろう……思い出せない。
「貴様の犯した罪はわかっているんだろうな」
頭の上から降ってくる声は、しわがれていたが、それでも反論を許さない厳格な響きがあった。
これが王様の声なのだろうか。
しかし、その声が次に
「では、王女から直々に貴様に裁きをくだすから心して聞くがいい」
と言ったことから、大臣か何かなのだと悟る。
私は目をつむって、王女の言葉を待つ。
「セ、セリカちゃんが悪いんだからねぇ」
え? と思った次の瞬間、
お兄ちゃん、もとい、王女様の裸足が私の横っ面を踏みつけた。
何という!
何というご褒美!
お兄ちゃん、もとい、王女様全然運動してないから足の裏ふにふにだー!
「そ、そんなもんですか!」
私はさっきまで死んだ魚のような目をしていたであろう目を尖らせて続ける。
「王女様の罰とはそんなもんですか! 全然こたえませんね! 踏むなら真正面から踏んだらどうですか! なんですか、恐いんですか?」
そう言って、私は「さあ!」と、仰向けに寝転がる。
「も、もぉー! 絶対許さないんだからねぇー!」
そう言うと、お兄ちゃん、もとい、お兄ちゃんはドレスの裾を掴んで真上から私の顔を踏んずける。
すると当然スカートの中が丸見えになる。
すばらしい光景。
そしてすばらしい感触。
「な、なんでぇ~! 何で笑ってるのぉ~!?」
そう。気が付けば私は声をあげて笑っていたのだ。
はっはっはっ!
はっはっはっはっ!!
はっはっはっ――
「はっはっは……」
自分の声で目を覚ますと、そこにはよく知った天井があった。
もちろん絨毯ではなく、ちゃんとお布団に包まっている。
カーテン越しの朝日の眩しさに半目になりながら枕元の時計を見ると、九時を過ぎたところだった。
私はパジャマのまま部屋を出ると、そのまま一階のリビングへと降りる。
思った通り、学校があろうがなかろうがまったく生活リズムを崩さないお兄ちゃんはすでに起きていて、リビングで丁寧におモチにのりを巻いているところだった。
ミリ単位のずれも許さないとばかりにモチに注いでいた視線を、私に向けると、そのかわいらしいお口を「あ」と開く。
「セリカちゃん。あけましておめ」
「お兄ちゃん、ちょっと顔踏んでくれない?」
「え、えぇー!」
新年早々、私は新たな扉を開いてしまったようだ。
おしまい。
昨日ので夢ネタ使っちゃったから面白味半減だけど仕方ない……。
本当はリアル元旦に書こうと思ってたネタだったんだけど、もう桜が舞ってますね。
って、ことでおまけ(?)でしたー。
続くようなら、またこちらで連絡させていただきます。
ではでは~。
双六