捜査開始
現場を検証するセイレンは集中してもうこちらの話を聞いていない。
「あ、あの…」
まだ若い保安官が恐る恐る声をかけてきた。
「なんだい?」
「蒼海連合の、立会人の方、ですよね?予定だともう少し後にくるはずでは?」
「あぁ。それね。それは」
「わたしが無理やり速く来たからな。変に準備された歓迎より、とっさの対応が見たかったんだ。」
一通り見終えたのか、セイレンが手を拭いながら戻ってきた。
こういう場所で顔色を変えないのは彼女らしいし、頼もしい。
「従業員を集めてくれ」
「へ?」
「この店の従業員を集めろと言ったんだ。」
少し強い口調でセイレンが言うと保安官は慌てて走っていった。
しばらくすると1階のフロントに従業員が集められる。
ちなみに現場は3階。フロント係の話だと、みなが集まる間、誰も外に出ていないらしい。
「まぁ、彼が犯人じゃなければか。」
あまりこういう考え方は好きではないが人が殺されている以上、疑いは必要だ。
「これで全員?」
何をすればいいかは聞いているし察している。
名簿を見ながら確認していく。
「はい、店内にいたのはこれだけです。」
緊張した面持ちの保安官に苦笑する。
確かに自分やセイレンの立ち位置を考えれば妥当だろう。
まぁ、下手に媚を売ってくる輩よりだいぶマシだろう。
「いないのは…」
一人ずつ名前を読み上げた結果、一番人気の娼婦と、経営者がいない事が分かった。
しばらく待っていると検死官からその2人が被害者であるという報告が上がってきた。
「と、いうことらしいがセイレン何かあるかい」
「2人を最後に見たのはいつだ?」
セイレンが従業員の一人一人に話を聞いて回る。
私はその後ろで嘘感知の呪文をかける。
証言が嘘かホントかを大別する魔法だ。
ただし、意図された嘘しか見分けられないので「それが真実だと思い込んでいる」状態であると、あまり意味は無いが。
まぁ、気休めの役には立つ。
今回は誰も反応しなかったが。
一つ分かったのは被害者2人が昨晩までは生きていた、ということだ。
「分かった。じゃぁ、次行こう」
いつもの調子でそう言うと、セイレンはさっさと出て行ってしまった。
「あぁもう、後よろしく」
保安官にそう言うと、私も急いで後を追った。