プロローグ2~血まみれの降誕祭~
――血まみれの降誕祭――
そう呼ばれる災厄がある。
血を見ることを好む、神々による祭典。
それは世にも醜き怪物の大量発生であったり、国々の王が同時に発狂して互いに攻め滅ぼしあったりなど、形はさまざまであったが、等しく多くの血が流れた。
血まみれの降誕祭は神々の気まぐれで開催され、いつどのようなことが起こるかは、その時になってみなければわからない。
神の声を聴くことができる人間など、この世にはいないからだ。
もっとも身近な血まみれの降誕祭はキュルトゥス歴1985年に起きた、異世界人たち同士の争い。
世界を司る神々が、各々の力を貸し与えることによって成立した、神々の擬似的な力比べ。
血まみれの降誕祭に参加した神々は十二柱。
雷と天空の神・ゼウス
海と地震の神・ポセイドン
死と大地の神・ハデス
縁と結婚の神・ヘラ
炎と鍛冶の神・ヘパイストス
陽と医療の神・アポロン
月と狩猟の神・アルテミス
美と恋愛の神・アフロディテ
旅と泥棒の神・ヘルメス
風と植物の神・ペルセポネ
悪と策謀の神・アテナ
そして、主神であり、もっとも多くの信仰を集める善と英雄の神・アレス
神々の力を得た異世界人たちを、人々は代理神と呼び、恐れた。
彼らの力はあまりに大きく、気まぐれで国が亡ぼせるほどであり、互いに争えば、その余波だけで多くの人々が死んでしまうからだ。
無論、彼らに自制心があり、互いに争うようなことをしなければ、誰が死ぬということもない。
しかし、彼らは争いを止めた際に生じるペナルティを恐れて、互いに戦うことを止めなかった。
彼らが争いを止めた時、どのようなペナルティがあるか。それは代理神たちのみが知る事項だった。ゆえに、人々は彼らがなぜ争いを止めないのか知らなかった。
代理戦争が始まってから四年。
たった四年の間に三つの国が亡び、二柱の代理神が命を落とした。
いまだ争いは続き、大勢の人間が血まみれの降誕祭を嘆いた。この度の血まみれの降誕祭はまだまだ終わる兆しを見せないためだ。
事実、代理神同士の争いは泥沼化していた。
終わりなき争い。人々は、この先、子子孫孫に至るまで、血まみれの降誕祭は終わることなく、争いの起きない世は来ないものだと疑わなかった。
――あの少女が現れるまでは。
本編の内容がわかりづらいと思ったので、プロローグを追加してみました。