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やったね!ベントさん!

前から合ったけど、モモコとガツクの話?になるかわかりませんが興味がある方は是非是非遊んでって下させ!笑

「大変申し訳ありませんが此度の縁談なかった事に・・あ、あの、伯爵も申し訳ないと・・ええとあの・・本当に・・真に、あの・・遺憾であります」


ベントは絶望のあまり呆然と縁談先の使者を見た。

あまりに呆然としていたので、使者がそそくさと執務室を出て行った事にも気付かなかった。


ヒュウゥゥウ鬱ゥゥウ・・・


荒廃した大地のさらに果ての様な風が吹いた。


「旦那・・・気をしっかり」


数分の間があり、恐る恐るローが声を掛けた。小山のような赤毛の大男から返事はない。口も半開きで目も開いたまんまだ。


・・・どうしよう。きょわい。


30を大分過ぎ、もうすぐ40の大台にのる男は、しかし思わず浮かんだ言葉というか感情に蓋をした。

なんかしなきゃ。なんか俺が言わなきゃ。

ローは居た堪れなさにそわそわする体を動かし、何にも考えず窓を開けた。


「おっいい天気ですぜ、旦那」


取り敢えずなんか言っとけ。

しかして1月の猛烈に吹雪いたブリザードが容赦なく顔に叩きつけられた。部屋に入った雪混じりの風が席巻し、様々な物を散らかす。


なんか違うな。うん違う。


ある意味今のベントにあった天気と言えなくもない。ローの動揺も激しいようだ。ローは窓を閉めるとため息をつき


「・・・旦那、まだ日は高いですが、今日はもう店仕舞いと致しやしょう」


さっさとデスク上を片付ける。今日までの書類もあったがこの状態でまともにできるはずもなく、関係各所には後で謝っておくしかない。事情を話せばわかってくれるだろう。ローはコートとマフラーを首にかけるとベントのバカでかいコートを手に取った。そして、ショックのあまりまだ動作できないでいる上官に声をかけた。


「旦那、呑みに行きましょう。今夜はとことん付き合いやすぜ」




ベント軍隊長がまた破談になったらしい


その真実な噂は翌日瞬く間に広まった。


「マジー?今度こそは大丈夫って」

「バカ。あれはなんつうか、ベント軍隊長の悪い予感を紛らわす呪文みたいなもんなんだよ」

「お相手の伯爵令嬢は出戻りで後がないんじゃなかったか?」

「・・それって軍隊長と結婚するよか独り身の方がマシかという」

「今回で堂々の70回目だったよな」

「もう国内にゃ残ってないんじゃ」

「いても親が差し出さんだろ」

「いやまだ、一般人とか。ほら」

「馴染みの全くない軍隊のそれも第一軍隊長にか?」



軍人達は一様に思い浮かべた。彼らの赤毛のでっかい暑ッ苦しい軍隊長を。


「ムリ。俺が女だったら絶対イヤ。あんな暑苦しさ日常生活ではムリ」

「いい人なんだけどな。暑苦しいけど」

「そうそう。面倒見はいいし真っ直ぐだし優しい所だってある。暑苦しいけど」

「コクサ大将には及ばないがあの年でも十分強いしな。暑苦しいのもじゅう・・あっ」


―――ズルリ、ベタッ。ズルル、ベタッ。


その時、何時もの嵐を巻き起こすような勢いの足運びはカケラもなく、すり足のようなといった怪奇音を伴わせ。

彼等は唐突に口を噤み、長年のシゴキによって培った無表情に戻ると流れるような動作で最敬礼した。

その前を目を見開き、口も半開きな彼らの軍隊長が通る。

服はローが頑張って別段乱れてはいないが、空気が、空気が重い。顔を背けて咽びたくなるような哀れさだ。しかしてその全体像は


・・・きょわい。


各人、寸分の狂いなく同意見。

―――別段、この単語がべリアル帝国軍に流行ってるわけではない。

ちなみにベントのこの状態は約一ヶ月以上続いた。



「ふむ」


「……陛下、考えているようで全く関心のない事を表さないで下さい」

「軍部には影響などないのだろう?ベントの婚活など」

「あなた」

「いや、でもベントの婚活なのだろう?」

「あなた?」

「……わかった。どうにかなる…ように善処を…計ろう」


満足げに頷く皇后コロナにワイズムはやれやれとため息を付き、側近に命じてベントの婚活に様する情報を集めた。その結果、ほんとにしょうもないなと思い至る。深々とため息を吐きながらこの馬鹿馬鹿しい事案?をある人物に依頼する事にした。


「公式に書籍を発行する。準備せよ」



所変わってここはドミニオン自治領国。


『もしもしモモコ?実は少しお願いがあって。仕事が終わった後、時間取れないかしら?』


お昼休みも半ばを切った頃、涼やかな声のテンレイから連絡をもらった。モモコは


「ちょっと待ってね」


と返し、正面に座るデカくてウザくて無意識に威圧を放つ魔お、いや夫を見上げた。


「ガツクさん、仕事帰りにテンレイさんとこ寄って行ってもいい?なんかお願いがあるんだって」

「…テンレイが?また着せ替えではないのか。だったら断れ。いい加減人の妻をなんだと持っているのだあいつは」

『失礼ね着せ替えじゃないわよっ!それに私は貴方に依頼してるわけでもないわ!許可も求めてないわよ!』


ガツクの重低音な声は易く向こうに届いたようで、間髪入れずに反論が返された。御もっとも。


「・・・なら何の用だ。どうせ面倒な事だろう。断る」

『―――ガツク、何時からそんなに耳が遠くなったの?筋肉なのはオツムだけじゃなかったの?まさか神経にも逝っているとは思わなかったわ。貴方には関係ないと何度言ったら――』


ビシリ。


ガツクの手の中の茶碗にヒビが入った。


「もっ!もっしもしー!では6時前には寄るねー!多分ガツクさんも一緒だと思うけどよろしくお願いしまーす!

『ええ、わかっていてよモモコ。しょうがないからそこの脳筋の耳が遠いお年寄りにもお茶を出してあげるわ』

「・・あ、ありがとー!じゃその時に!」


もう浮いている青筋をもう一本増やしたガツクを見て慌ててモモコは連絡機を切った。


「何でしょうね、テンレイさんのお願いだなんて。ちょっと気になるなぁ」


黙って怒りを発散させているガツクを横目に見ながらモモコはカインに話しかけた。


「そうだね、あまり神経に障る話ではないことを祈るよ・・・」


カインは若干青ざめた顔で上官を見やるのみだった・・・・。



「これを見て」


モモコとガツクが席に着き、それぞれに茶を用意したあとテンレイは一通の封書を差し出した。


「・・・ワイズム皇王?帝国が何の用だ」


そこには流麗でいながら力強い筆使いでベリアル帝国皇王、ワイズムの名があった。


「ガツクの好敵手、ベント軍隊長だけれど」

「好敵手などではない。奴が勝手に名乗っているだけだ」


すかさずガツクから否定の声が上がる。意外と意識しているようだ。しつこすぎる戦い要請の果てとも言えるが。


「貴方達の間でどう呼び合っているのかなんてどうでもいいのよ(笑顔)。とにかくそのベント軍隊長の事で・・何と言うか、助けを請われているみたいなの」

「はぇ?」

「ほう」

「と言う訳でね、モモコも同行してくれないかしら」

「うん全然オッ」

「駄目だ」

「貴方には聞いてないの(目が全然笑ってない氷る様な笑顔)。ご免なさいね、こんな事頼んでしまって」

「全くだ」


テンレイの涼やかな瞳が細められる。室内が不自然な程静まりかえった。


カーン!

あれ?モモコの耳に何かのゴングの様な音が聞こえた。空耳、じゃなかったら脳内変換、ちなみにリンドウもした。


「・・・ガツク、まさかのまさかと思うけど付いてくる気なの?」

「当たり前だ。俺が行かなくて誰がモモコを守るのだ」

「戦いに行くのではなくて、ただの…ふっ…」

「お前は…また良からぬ事でも考えているな」

「あら心外ね」

「ふん。何を言ってもモモコ一人行かせるわけなど」

「だいじょーぶっ!だってベントさん、好」



「す・・・・・・・・・?」



生涯聞いた事もないようなド低音でガツクが「す」を波動、いや発音した。


爆発というか爆裂というか今にも・・しそうだ。


モモコのこめかみを汗がツツーッと落ちる。

給仕のためイヤイヤ居残っていたリンドウが血走った目でモモコに救いを求めている。

テンレイはなんとも思わないのか優雅に紅茶を啜った。


「もう結婚という名の鎖、いや絆で繋いでいるはずの」夫から瞬時に溢れ出した(バカバカしい)緊張感をひっしひっしと感じながらモモコは「す」に繋ぐ言葉を足りない頭を使って弄り出す。


す・・す・・ス・・酢・・素・・㋜・・


「あっ、えっと、えっと、ほら、あの・・べ、ベントさんって、あの・・す・す・・・・・・・・・・・・・・スルメだし」


進退窮まったモモコの口から出て来たのはなぜか乾き物代表の食物だった。


ha?


モモコを除く3人が正しくそういう表情をした。そりゃそうだ。


「するめ?するめって、あのおツマミとかに出てくる?」

「えっ……えっと、う~ん?、えっと」


ヤンデレ気味の激重愛の夫と、愛娘が心配で過保護な母っぽい才女のビームのような(ここ重要)視線を受け、汗を流すモモコを。


リンドウは気の毒そうにただ眺めるばかりだった。

勿論壁と同化しながら。


ここからテンレイ劇場とベント恋愛?話と、皆さんお待ちかね?のガツクホラーハウス始まりまっす。

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