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嗚呼!私立ドミニオン学園!!2

1月 元旦


「ガツクお兄ちゃん!あけましてーおめでとうございまーす!」


隣家に住む小学3年生のモモコ・クロックス8才は華やかな、しかして年相応な振袖姿で挨拶した。

それを受けるのが


「おめでとうモモコ。今年もよろしくな」


今年と言わず、永遠の「よろしく」を込めた新年の挨拶を返す覇王、いやガツク・コクサ18才、高校3年生。


「みてーお着物ー!お母さんに着せてもらったんだ!」


新年にしか着せてもらえない、雅な着物を着て満面の笑みでくるくると回ってみせる無邪気なモモコ。そんな彼女を


(白無垢もきっと似合うだろう・・神式の結婚式でも構わないかもしれないな)


などと、小学生にけして向けてはならない煩悩で一杯のガツク。ちなみに無表情だ。


「とても、似合っている」


隣家の兄ちゃんの言葉とは思えないほど情感たっぷりの言葉。は しかし、


「えへへー。あ、ガツクお兄ちゃんも着たい?」


という何の脈絡もないあさっての方向による天然によって滑っていった。


「いや着たくはないが・・第一俺には入らん」


当たり前だ。想像すらさせるな。


「お前の魂ロックオン✩」の大男とそれすら上回るド天然の少女の、問題過ぎる2人の一年はこうして始まった。





2月 st.バレンタイン


今日はバレンタインデー。製菓業界に踊らされた日本国民達がやたらと甘いものを消費する一日である。


ガツクは朝からそわそわしていた。

勿論あの少女のせいだ。

遅刻ギリギリまで待った。

しかし、恋焦がれている少女からはなんのアクションもなかった。

しょうがなく登校した。

途中、違反者キングを見つけた。

保健室送りにしてやった。

おかげで遅刻した。

シスが滅多にないガツクの失態をからかおうとした。

既に刀身が半分ほど出ている状態に気づいた。

結果、寸でで命拾いした。

不気味なほど静まり返る午前の授業が終了した。

昼食・昼休み、クラスメイト全員ガツクを残し教室を出る。

5時限目、体育の授業、男子はバレーボールだった。

暗黒王ガツクのスパイクでベント体育館外に飛ぶ。

6時限目、理科の授業、薬品を一切使わせてもらえず、記録係に徹する(徹せられた)。

放課後、各委員会による会合。だが、

「今日は臨時休業!来ちゃらめぇ!」と絶叫され、追い返される。

傍からみると尋常ではない緊張感に包まれたガツクは家路を辿った。


「あ!ガツクお兄ちゃーん!」

(モモコ!!)


愛しの少女だ!この変態!

駆け寄る(怖いっ!)ガツクにモモコはリボンをかけた赤い箱を差し出す。何の変哲もない市販用だがガツクの目にはどんな高価な物よりも輝いて見える。


「これは・・」

「今日ねーチョコあげる日なんだよ!」←お中元感覚。

「知っている」


(将来を誓い合った者達が互いの思いを確かめ合う日だ)


合ってるような合ってないような。あと相手はそんな事微塵も思ってないぞガツク。それはお前の願望だ。


「でね、これガツクお兄ちゃんに」←お歳暮感覚

「・・・そうか」←すんごい嬉しい。世界が爆発しても構わないぐらい嬉しい。てかお前が爆発しろ。



「うん!はい!友チョむふっ!」


我々の期待をけして裏切らないモモコ。

しかし、己に都合の悪い事はたとえ神だろうと許さんガツクは目にも止まらぬ速さでモモコの口を塞いだ。(手で。・・あれ?口がよかった?でもほんとマジで犯罪になっちまうから、ね?…うん、ね?)。


「モモコ・・お前からの贈り物・・喜んで受け取ろう」

「う、うん。あのそれ、友tむふっ」

「ありがとうな」


果敢にも最後まで言おうとしたモモコであったが、微笑んでいるらしいのに常の無表情より怖くなってしまったガツクに口を塞がれたままコクコクと頷いたのであった。


本日も街は平和である。





3月 ひな祭り


今日ガツクはモモコの家へとお邪魔していた。


「ガツクお兄ちゃん、今日は手伝ってくれてありがとねー」


モモコはニコニコとご機嫌でガツクに茶を運んだ。お茶請けは色取り取りな雛あられだ。


モモコが接待している、それも己だけに。


それが例え、押入れの奥から大仰な雛段を出す荷物持ちな的役割で、指示されるままが従い雛壇を設置する手でしかない、そんな存在のガツク。に、ちょっとでも労おうと子供ながらに空気を読んだモモコの些細な気遣いであろうとも、モモコが行う全てに過大な期待、そして続く妄想を抱くガツクの脳内には都合よく変換された「モモコは己を特別に思っている」と確信・・し、満足した。


「あ、そう言えばさ、ガツクお兄ちゃんは知ってる~?」


でも男の人だから知らないかもと続いたモモコにわずかに首を傾げたガツクに、モモコはやっぱり知らないんだ~と満面の笑顔で言い放った。


「えっと、お雛様のね?三月三日飾るでしょ?それが、えっと、終わった毎日がたくさんあればあるほど、そこのおうちの女の子がお嫁さんになるのが遅れるんだって。それのせいなのかモモコ分かんないんだけど、お父さんったらズ―――――――ットお雛様飾ってるんだよ?それって分かんないんだけど、たぶんダメなことだとモモコ思うんだけど…ガツクお兄ちゃんはどう思う?」


己の身体、自我全てを溺れてしまうほど愛している少女からの邪気のない言動にガツクは凍りつく。


なん…だと…飾る期間が長ければ長いほど己がモモコを娶る事が長引くと…


出会った瞬間に己が嫁と決定したモモコと自分に立塞がる壁。


無理

却下

処理

殲滅

最初から其処にはなかった


「今出したばっかだよ?なんで片付けようするの?モモコもっと見ていたいな~」


ただそれらに思考が、物の数秒で思い立ったガツクが雛壇を切り刻もうとする極端な行動に止める声が掛った。


木端微塵に跡形も残らず切り刻もうとするガツクが、どうモモコに映ったか知らないが都合よく言われたセリフに周囲の者、作者は深い安堵を得る。


お茶でも飲もうよ。そう言って笑顔のままガツクの、刀の握ってない手をくいくいと引いて、座敷にある座布団に座らせるモモコ。

全身が震えるほどの焦燥と怒気を忘れさせる笑顔に呆気にとられるガツク。

暴走直前、未曾有の大災害をもたらすガツクがモモコに手を引かれるがまま、大人しく座った事実が驚愕と共に学園に、町に、市に、国に、世界に影響を与える事など微塵も考えないモモコはただニコニコと隣に座るガツクにこう言った。


「あっ、でもモモコ、お嫁さんとか考えてもいないんだよね。モモコ、じゃーなりすと?になる予定だし~」


生涯独身、という意味なのか。

そんな事絶対許さん、お前の伴侶は俺に決まっている。

その他等始末してやる。


と極端な考えに到るガツクと、周囲に構わず自身の夢を語るモモコ。

端と端にいる2人の通ずる終着点は遠い。

意味ありませんから。

四月以降あるかわかりませんから。

脳内構想あるだけですから。

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