表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/10

やっちゃったよ!!モモコVSガツク!!~魔王城死闘編~

ここは魔王城。

そこでは魔王モモコ(笑)が今か今かと勇者達を待っていました。


「魔王様!ただ今見張り台からの報告にございますが…!とうとうあの勇者達一行の姿が確認された模様です!」

「なんだと!」


バサァ!


魔王モモコ(笑)は黒く長いマント(笑)を翻しながら、部下その一エルヴィ・フレクを振り返りました。


「聞いたか皆の者!遂に遂に最終決戦の時が来た!勇者達を倒し!全ての人類を…えーと…すいません、忘れちゃっ…あっちょっと見えない、ごめん指、指で見えないなーあっうんオッケー!えーと、全ての人類を我が前へ這い蹲らせるのだ!世界の全てを我らのものに!!」

「おー!!」

「頑張るぞー!!」

「魔王小さくて見えないぞー!」


どうやらごく短いセリフを覚えきれず、カンペを見ながらというぐだぐだ具合ですが…なんとかなったようです。


「じゃー皆さん持ち場について下さーい!くれぐれも無茶はしないで下さいねー!ダメかなって思ったら降参して下さいよー!」


ガヤガヤと広間を後にする部下の皆さんに声を掛けながら、魔王モモコ(笑)は喉が渇いたのでお茶を入れる事にしました。


「あっ魔王様私がしますよ」

「いいのいいの、お茶くらい自分で入れるよー。あっエルヴィさんのも入れよっか」

「すいません、モモコ殿。あっ魔王様」

「いいよいいよモモコで。そんな畏まらなくてもさー」


魔王モモコ(笑)は、にゃははと締りのない顔で笑うと緑茶を人数分注ぎました。


「今日はねー取って置きのお茶受けがあるんだよー」

「なんですか?」

「これこれ!シスさんが南の国からお土産に買ってきてくれた塩せんべい」

「魔王様」

「はぁー見た事のない食べ物です」

「これすっごくおいしいんだよ!おすすめ!」

「魔王様」

「では戴きます」

「どうぞどうぞー」

「魔王様!!」

「あっごめん何?クーザのも入れてあるよ?」


部下その二、クーザ・ショットは最後大声で魔王モモコ(笑)呼び、返された言葉に脱力しました。


「お茶なんて要りませんよ。そんな事より戦いの準備しなくていいんですか?勇者達がやってきますよ」

「大丈夫だよー部下の皆さん強いもの。心配ないって」

「そんな呑気な…」

「ささっ座って座って。お煎餅食べる?」

「戴きます。相手はあのガツク・コクサですよ?生きる伝説の…そんな舐めた態度で」

「クーザも落ち着いてさー、ね?勇者がガツクさんだからって―――」



ガタタッ!



そこまで言って魔王モモコ(笑)は青ざめた顔で立ち上がりました。


「大変じゃん!!!!!」






さて、所変わってここは魔王城城門前。

そこにはノルド・ノーフェ・グリードのチンピラ魔物3体が勇者達を待ち構えていました。


「いいですか二人とも。ここで一気に勇者達と戦いになったら、その混乱に乗じて魔王モモコを暗殺するのです。そしてその後は……言わなくてもわかっていますね?」

「任せろノーフェ!」

「あのお方に我等の―――」


そこまでチンピラ魔物が言った時、真上から巨大な何かが……


ズズズゥゥウ ―プチッ☆― ウウウウンンン!!!


勇者ガツク(笑)とその一行はとうとう魔王城に降り立ちました。


「おいガツク、お前今なんか潰さなかった?」

「知らん」

「そう?」

「ゴミだろう」

「まっいっか」


ホクガンは乗って来たドラゴン(…ん?)、ジ・トリックから降りると魔王城の正面玄関をドンドンとノックし、


「おじゃましまーす」


と言って扉を開けて――



「ふははははッ!!!待っていたぞぉ!!!ガツク!!!」



そして閉めました。

ホクガンは眉間をぐりぐりと揉みながらフーとため息をつきました。


「アレ―?おっかしいなー戦ってもいないのにもう疲れてんぞーどうなってんだこりゃ」

「……ベントがいたの」

「言うなよ~なかった事にしてぇんだからよ~」

「なかった事にしてどうするんじゃ。どうせ進まんといけんじゃろが」

「え~」

「どけ」


ガツクはホクガンを押し退けると扉をブレイドで一閃して破壊しました。

目の前の玄関ホールには心の底から願っていた「幻だったんじゃねーの」という願望を打ち砕く、フード姿の(まだ名前決めてなかった)・ベントとロー・レルモが立っていました。


「ふははははッ!!!待っていたぞぉ!!!ガツク!!!」(二回目)

「相変わらずうるさい男だ」

「よっロー。お前も大変だな」

「今日こそ長年の戦いに決着を付けようではないか!!!」

「決着も何もお前が勝った事があったか」

「久しぶりだなァ、ホクガン。まぁしゃァねェやなこれが旦那だからよ」

「問答無用!!!」

「またこの流れか」

「あ、ロー次の飲み会だけどよ」

「いざ!!!尋常に勝負!!!」


ガツクはため息をつくと突進してきたベントの剣を受け止めました、激しい打ち合いに火花が散ります。

魔王城最初の敵はさすがに強いようです。剣同士の残像が見えるほどの激しい攻防が5分ほど続いた頃でしょうか、飽きたホクガンがガツクに声を掛けます。


「おーいガツクー俺ら先行ってていいか」

「殺すぞ」

「コエー。うーん…どうすっかなー…あっそうだ!おい、ロー!」

ホクガンは疲れたようにベントとガツクの殺し合いをみているローに呼びかけました。

「どうしたいホクガン」

「ごめんな☆」

「おェ何する気でぇ!!」


喚くローに構わず、ホクガンはテンレイに向かって一礼しました。


「じゃ、テンレイ様お願いします」

「任せなさい」


テンレイは鷹揚に頷くと前に進み出て偉そうに命じました。


「ガツク、ブレイドを納めなさい。ベントは私が倒すわ」

「…お前が?」

「あら、何なら貴方から再起不能にしてもいいのよ?」

「やれるものならやってみろ」

「はいはいはーい!姑と婿の面倒くせぇのは次回にしてねーただでさえ面倒くせぇ事態ですからぁー」


確かにそうだとガツクとテンレイは睨み合うのをやめ、ガツクはテンレイに譲りました。


「テンレイ!!貴様に用はないぞ!!俺はガツクに―――」




「そう言えば先週お見合いしたんですってね」




時が止まりました。


「確か…75回目だと聞いているけど」


テンレイは可愛らしく小首を傾げて続けます。

ベントの目が虚ろに、剣を握った手がカタカタと震え始めました。

それを楽しそうに見てテンレイは半笑いで止めを刺しました。


「で、どうだったの?」


…………………………。


「わぁぁああああぁぁあああぁぁあああああああああ!!!!!」


ベントは奇声を上げながら飛び出して行きました、なんだかキラキラした水滴を飛ばしながら。


「旦那ァ!!!」


その後をローが追いかけていきます。「旦那!そっちは崖ですって!」などと言う声もかすかに聞こえました。


「ベント…強く生きるんだぞw可哀そうに何だってあそこまで言われなきゃなんねんだ。なぁ?」

「お前がやらせたんじゃアホウ」

「フフン。バトルというものはこうやってスマートに勝つものよ。わかって?ガツク」

「くだらん。行くぞ」


ガツクはブレイドを元の形状に戻すと先へ進みました。

ところがそれから敵が現れません。数名の雑魚はいるものの皆逃げていき、バトらないまま魔王モモコ(笑)が待つ最上階まで来ました。


「おーこっちこっち。この先が魔王の待つ広間だぜ」


この扉の先に魔王モモコ(笑)が待ちかまえているのです。


「モモコ……やっとお前に会える…これからはずっと一緒だ」

「何度も言うけどこれ討伐ね」


ガツクはホクガンをシカトすると両開きの扉を万感の思いを込めて開きました。


ギギギィ…


そこには――


「よく来たな!勇者ガツクよ!w」

「シスじゃねぇか」


背凭れの高い真っ黒な椅子に座ったジジィがいました。


「ステルスもいるわ」

「おい……話が違うではないか。そんなにブレイドの錆になりたいのかホクガン」

「ちょちょちょっと待て!どういう事だシス!」


シスは肘掛に置いた手に顎を乗せると言いました。


「落ち着けって。魔王モモコは野暮用だよ。おっつけやってくるから安心しろ」

「何やってんだよぉあのちんちくりんが。俺らより緊張感ねぇじゃねぇか」


ホクガンが脱力したようにがっくりと肩を落とします。


「モモコは来るんだな。確実に」

「来る来る」

「そうか…では」


…ヒュン


ガツクは頷くと同時にブレイドを握り直し宣告しました。


「死ね」

「ええええええー!!」


ビュウオォと風切り音を響かせながら高速のブレイドがシスへと振られます。慌てて飛んだシスの背後で椅子が真っ二つになりました。


「ちょっ!待て!お前マジだろ!」

「無論」

「何でだ!?こういうのってこう…魔王が来てからだろ!『我こそは魔王が側近、四天王の一人シス・フェザーラン!よろしこ!』とか言わせてよ!」


紙一重でギリギリかわしながらシスが必死です。ちょっと笑えるくらいです。


「忘れたのかシス」


魔王よりも魔王らしい圧力でガツクが仁王立ちしました。


「えっ…俺なんかしたっけ」

「した」

「な、何かなー?」

「貴様の胸に聞いてみろ」

「わかった!ちゃんと考えるからタイム!」

「…いいだろう」


ガツクが不服そうに頷くとシスは深く深く考えました。そしてハッとした顔になると悲痛に顔を歪めてガツクを見ました。


「…………………アレな」

「そうだ」

「クッ…」


シスは暫らく項垂れていましたが意を決したように顔を上げてこう言いました。


「……すまん!”大吟醸・嵐・羅・嵐”をお前の留守に飲んじまって!前から飲みたかったんだ!」

「アンタ何しにドミニオンに来てんだ!」

「追放された身とか全く考えておらんじゃろ!」

「そう言われるとツラ…うおっ!」


ブウン、とブレイドがシスの胴めがけて振られました。それをバックステップしてかわします。

ガツクは憎々しげにシスを睨みつけると絞り出すようにして言いました。


「そんな瑣末事ではない」

「えっ違うの!?俺だったら暴れてるぞ!」

「違う。貴様、モモコの頬にキスしただろう。あの許しがたい蛮行の後、不覚にも俺は貴様を逃してしまった…あの時から俺は…俺は…何時か必ず貴様を殺そうと…」



…………… あ~ あったね~ そう言えばそんな事。



「え…もう時効」

「貴様が生きている限り許さん」


お前の執念深…いや想いの深さに脱帽!満場一致の合意を得られたガツクはブレイドを斜め下段に構えました。その体から痺れるような殺気が迸ります。その姿、さすがに魔お…いや選ばれし勇者 (笑)。


(ヤバい)


四天王 (笑)シスは本能的に悟りました。これは殺られる。と。


「ステルス!援護してくれ!社長死にそう!」


たまらず部下であり四天王の一人ステルスに助けを請いました。ですが、


「今、もう少し持ち堪えて下さい。大変気になる事が」

「この緊急事態に何!?」

「―――枝毛があるんです」

「マジで言ってんの!?」


あっさり見限られました。


「ちょマジで!マジで社長死ぬから!お願いステルス様!」

「しょうがありませんね…」

「おおっ!頼むぞ!」

「もうひと思いに殺っちゃって下さい勇者ガツク」

「ステルスゥゥウウウ!!!」


-40℃の追い打ちをかけられたシスは精神的ダメージ…ではなく、勇者ガツク(笑)の巧みなブレイド捌きによってとうとう壁際まで追い詰められてしまいました。


「積年の恨み…今こそ果たす」


手持ちの武器を叩き折られ、青ざめたシスに勇者ガツク(笑)の正義?の剣が振り下ろされんとしたその時でした。


バターン!


両開きの扉を勢いよく開けて入って来たのは…




「お待たせ―!皆の避難終わったよー!」



魔王モモコ(笑)その人でした。

シスの神経はワイヤー製でそれを寄り合わせた上、丸太のように太い。

あ、ホクガンもそれぐらいです。

さすがカブり師弟。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ