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4.2人の生活

「まだ見つからぬか」


 (うな)るように訊ねる主の声に男は震えあがってひれ伏した。


「申し訳ございません・・・国中を探しているのですが・・・」


「・・・アレの行方がわからなくなって5年。一体何をやっているのだ、無能共め!」


 腹立たしげにひれ伏す男に書類を叩きつける。


「もうよい!・・・途中経過などを報告している暇があったら探せ!!」


「しょ、承知いたしました・・・我が君」


 そそくさと部屋を出て行く男を見送り、男の主は呟いた。


「・・・“鍵”がなければ“錠”が開かぬ。・・・どこに行ったのだアレは」



***



「勇砂~、朝ごはんできたよ?」


「ん?・・・お~、さんきゅ」


 2人暮らしが始まって数日。


 初日は違和感があったが、流佳は意外にもあっさりと勇砂の生活の一部として馴染んだ。


 近所の住人も流佳の大らかな性格に好感を持ったようで心配するまでもなくあっさりと受け入れていて、流佳の占星術に期待する声まで聞こえてくるようになった。


「ねぇ、勇砂。私も仕事しようと思うの・・・ほら、ただ“おさんどん”してるだけじゃ申し訳ないし」


 2人で向かいあって食事をしていると、不意に流佳がそう言う。


「別に気にしなくても・・・お前を養うくらいはできるぞ?」


 居候(いそうろう)状態を気にする流佳に、勇砂は首を傾げる。


 家事をしてもらっているだけで充分助かっているのに、まだ気にするのか、と。


「うん、それはわかってる。やっぱり魔導師って色々頼りにされるのね」


「まぁな・・・簡単に言えば何でも屋みたいなものだからな」


「何でも屋かぁ・・・なんか楽しそう」


「楽しそう、かぁ・・・確かに、仕事してるのは楽しいな。皆の役にたってるって実感できるから」


「あ、それ、なんとなくわかるなァ・・・というわけで、仕事したいな?」


 流佳がおねだりするように首を傾げると、勇砂は苦笑して頷いた。


「・・・まぁ、やり過ぎない程度にな。・・・占星術は影響力があり過ぎるからな」


 占星術師の予言は人生を左右させることができる。どっぷりとハマってしまう人間も中にはいるという。


 勇砂が心配するのも当然と流佳は笑みをうかべた。


「うん、心得てます。・・・視えたもの全てを告げたりはしないから」


 危険を回避する、幸運を招き寄せる、流佳が口にするのは諭告(ゆこく)(※口頭でさとし告げること)だけだ。


「まぁ・・・月影(つきかげ)告知姫(こくちひめ)の予言がこの世界を動かしてるわけだし・・・お前の一言で世界が変わるとまでは思ってないから。構えずにやればいいんじゃないか?」


「―――そうだね、わかった」


 わずかな沈黙の後、流佳は頷いた。


2012/10/29 改編

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