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13.月影の告知姫の真実

 トントンというよりも、ダンダンと表現できるほどに荒く叩かれる扉を見て、柚緋は表情を強張らせた。


「・・・元老院か?」


「いいえ、違います。お迎えの方です」


「―――じゃあ、迎え入れて大丈夫なのだな?」


 自信たっぷりに告げる流佳に、柚緋は確認をする。


「ええ」


「そうか。君がそう言うなら問題はないんだろうな」


 柚緋はそう言って扉の鍵を開ける。


 と同時に勢いよく扉が開かれる。


「柚緋っ!無事か!?」


「わっ!?―――磨大!?」


 飛び込んできた“迎え”が地皇・磨大本人であることに気づいた柚緋は目を瞠った。


「柚緋!」


「ふふ、お早いご到着ですこと、磨大陛下」


「―――月影の告知姫、そなたか?高雅の術を解いたのは」


 一瞬で冷静さを取り戻した磨大に、流佳はにこりと笑って頷いた。


「今現在の状況では、“勇砂”を“柚緋殿下”に戻す方が安全ですから」


「まぁ、それもそうか・・・しかし、焦ったぞ。高雅の術が完全に解かれてしまって、元老院に捕らえられてしまったのではないかとな」


 ホッと息を吐き出しながら言った磨大に、流佳は苦笑した。


「私が傍にいるのですから、そのようなまねはさせません。―――月影の告知姫とは強い占星術を使える者の呼称ではありませんよ」


 確かにそれだけで天涯と地涯の両国王に対して発言力があるというのには説明がつかない。そう思って柚緋が流佳に視線を向けると、流佳は前髪をかきあげて額を見せた。


「「っ!?」」


 柚緋と磨大は思わずといった様子で息を呑む。なぜならば、流佳の額には小さな魔方陣のようなものがうかびあがり、その中心に鍵穴のような痣があったからだ。


「“鍵の王子”と“魔力の根源の乙女”その関係性は充分にご存知のはずですね」


「馬鹿な、月影の告知姫が“錠”の役割を担っているなど、聞いたこともないぞ」


 磨大が呻くように言えば、流佳は当然といった様子で頷いた。


「それもそうでしょう。魔導協会が情報を操作してきたのですから」


「・・・じゃあ“錠”がさまざまな場所にランダムに現れるという記述は」


「ええ、偽の情報です。―――天涯国王弟・豪殿下が掴んだ“錠”の情報も魔導協会が流した偽の情報ですが、“鍵の王子”が捕らわれたとあってはいずれそのことにも気づかれましょう。ですから、柚緋殿下の存在を隠すことを提案させたのですよ」


「そうか、それで“錠”をあけた際に現れるという魔力の根源というのは女性の姿をしているっていうことになっているのか・・・」


 柚緋が納得したように声をあげると、流佳はにっこりと笑って頷いた。


「ええ、そういうことです。ご理解が早くて大変に助かります。―――では、地涯城に参りましょう。私の結界がありますが、元老院の手の者に勘付かれると厄介です」


「わかった。では“死人の森”に急いで―――」


「それでは意味がありません」


 磨大の言葉を遮り、流佳は首を横に振る。


「ではどうしろと」


 いらだたしげに問いかける磨大を見つめ、流佳は足元を指差した。


「ここに“光の道”を作ります。少々魔力を使いますが“鍵の王子”とセットであればさほどの反動はありませんから」


 その言葉に磨大は目を瞠り、それからゆっくりと息を吐いた。


「私は、とんでもないものを目にしようとしているのだな。これが“鍵”と“錠”の力か」


 “光の道”は決まった場所にしか現れない。―――今まで信じてきた常識が目の前で崩されるというのはなかなかに受け入れ難いのだろう。


「磨大、説明は後で聞こう。それよりも元老院の動きが怖い」


「っ、そうだな。―――頼む」


「わかりました。お二人とも、目を閉じていてください」


 二人がその言葉に従い目を閉じると、瞼の裏からでもわかるほどの強い光がその場を満たした。


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