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11.流佳の告白

ながらく更新せずにいました。申し訳ありません。

なろうコンに参加しようかと思い立ち、更新再開いたしました。


ちなみに、先日1話~10話まで改編しました。

お話の流れはほとんど変えていませんが、10話はかなりいじったので読み返すとアレっとなる方もいらっしゃると思います。すみません。


今後ともよろしくお願い致します。


 いつものように階下から美味しそうな匂いがして、勇砂は爽快な朝を迎えた。


「今日はいい天気だな~」


 窓を開けて外を眺める。


 盟の町のど真ん中に立つ月影の塔が視界に入ると、心がざわつくのを感じた。


「・・・月影の塔・・・か」


 塔に籠り、世界の行く末を予知しているという月影の告知姫。会ったことはないはずなのに、いつも夢で見る“彼女”が月影の告知姫ではないかと妙な確信を持っていた。


「どうして、俺は逃げようとしたんだろう?」


 夢の中で勇砂はどうしても逃げなくてはならないという強迫観念のようなものに突き動かされていた。


 一体何から逃げようとしていたのか。


 そして、なぜ追われていたのか。


 疑問は尽きないが、その夢はただの夢ではなく何かを暗示しているのだということだけはわかっていた。


「・・・流佳に、()てもらおうか」


 占星術師であれば、その夢が何を意味しているのかがわかるだろう。


 詳細は教えてくれないまでも、何に注意したら良いのかくらいは諭告(ゆこく)してくれるはずだと考えて、勇砂は階下に降りていく。


「おはよう、流佳」


「あ、おはよう、勇砂。朝ごはんできてるよ」


「おお、いつも通りうまそうだ」


「ふふ、どうぞ召し上がれ」


 流佳に勧められるままにテーブルに並べられた料理に手をつけていた勇砂は、咀嚼(そしゃく)していたものを呑み込むと、先程考えていたことを口にした。


「なぁ、流佳。・・・食事が終わったら俺のことを視てもらえないか?」


 流佳はピタリと手を止めて、勇砂を不思議そうに見つめた。


「・・・何か、あったの?」


「いや・・・何かあるかも、っていうか、夢見が悪いっていうか・・・」


 言い淀む勇砂に、流佳は一つ頷く。


「うん、良いよ。視てあげる」


 軽い調子で了承した流佳にホッとしながら、勇砂は食事を再開する。


 そんな勇砂を見つめて、流佳はよく見なければわからない程度に眉をひそめた。


「・・・もう、効果が薄れているのね」


 ポツリと呟いた言葉に、勇砂が反応して顔をあげる。


「ん?何か言ったか?」


「ううん!なーんにも。・・・さ、食べて食べて」


「おう」



***



 食事を終えると、後片付けを協力する。流佳が一緒に住むようになってから暗黙のルールとして決まったことだ。


 家事は壊滅的にダメな勇砂だが、後片付けは薬を作った後の道具の片づけとほぼ同じなので問題なくできる。


「ねぇ、勇砂」


「んー?」


 流佳が皿を洗いながら声を掛ければ、流佳が洗った皿を拭いていた勇砂が振り返る。


「夢見が悪いって言ってたけど、どんな夢を見るの?」


「あー、なんていうか・・・俺は何かから逃げてて、一緒に逃げようって女の子に手を差し出してるんだけど、その子は一緒には行けないって断るんだ。・・・いつもそれで夢は終わる」


 勇砂の説明に、流佳はそっと溜息をもらした。


「・・・そう。さすがは勇砂だよね」


「は?どういう意味だ?」


 首を傾げる勇砂を見て、流佳は残った一枚の皿を水切りに立てかけた。


「これからする話はとっても大事な話だから・・・勇砂、そこに座って」


「?・・・あ、ああ」


 勇砂は不思議そうにしているが、占星術師である流佳の言葉に大人しく従う。


 向き合う形で座った2人。


 先に口を開いたのはもちろん流佳だ。


「まずは謝らなくちゃいけないことがあるの」


「謝る・・・?」


「私ね、勇砂のことはずっと昔から知ってたの。だから、勇砂に会うために死人の森に行った」


「ちょ、ちょっと待て。なんであの時に俺が死人の森に行くって・・・あ、そうか、流佳は占星術師だったな」


 一瞬忘れていた流佳の力を思い出して、勇砂は軽く息を吐く。


「そう、あそこに行けば勇砂に会えるってわかってた。けど、“光の道”を無理矢理作って行ったから力尽きちゃって・・・」


「で、倒れてたワケだ。・・・というか“光の道”を無理矢理作るって、お前は一体何者なんだ?」


「――――――月影の告知姫・・・って言ったら、信じる?」


「あー・・・そりゃ、有名人だな」


 能力的なものも鑑みて、月影の告知姫であるというのは嘘ではないだろうと確信するが、天涯国・地涯国共に言葉一つで動かせる立場にいる人間であるとカミングアウトされて、どう反応したらいいのかわからない。


「戸惑うのも当然だと思う。でも、私がいなければ、勇砂はとっくの昔に元老院に見つかってたわ」


「元老院?・・・ッ」


 その単語を聞いた瞬間にズキリと頭に痛みを感じた。


 戸惑いながら頭を押さえる勇砂に、流佳は困ったような表情をうかべた。


「ごめんね、無理矢理術を解いたら痛いよね・・・今、術を返すから」


「術?返すって・・・」


「大丈夫。かけられた術は敵意のあるものじゃないから、返しても術者に反動は無い。むしろ魔力が回復する」


「なぁ、待てって・・・ちゃんと説明してくれ・・・」


 勇砂が頭を押さえながら懇願すれば、流佳は苦笑をうかべた。


「ごめんね・・・でも、術を返せば、理解できると思うから。・・・ごめん、勇砂。ごめん」


 流佳がそっと勇砂の額に触れ、光が放たれる。


「――――――ッ!!」


 記憶が奔流となって頭の中を駆け巡る。


「ああ・・・そうだ。“私”は・・・」


 自分にかけられた術がどういったものであるのかを知った瞬間、“勇砂”は“柚緋(ゆうひ)”に戻った。



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