愛しい人
惜しみなく与える愛。
●好きだった人。
彼女はいつも不思議な匂いを漂わせていた。
僕はその匂いを嗅ぐたびにいつも腹の底が重くなるような感覚を感じていた。
好きだったが知り合い以上にはなれぬまま僕はじきに彼女じゃない人を抱いた。
全てが終わって気付いた。
隣に寝ている彼女からあの日の君と同じ匂いがしていた事に。
恋の終わりを知った。
●愛しい人。
今日は何をしよう? 二人で料理しようか。
手の込んだ料理が良い。一日かかるシチューとか。君とずっと居られるならどんな料理でも良い。
おや? シチューはもう出来ていたのか。君は本当に優しいね。
さあ一緒に食べよう。でもおかしいな、君の姿がない。
そうか記念のケーキでも買いに行ったんだね。
●愛されていた人。
ドアを開けた瞬間すえた臭いが鼻を突く。
部下の警官に入り口で待機してるよう指示すると中に入る。
異臭に耐えながらゴミしかないとしか思えない室内を行くと、一箇所だけ全く別の空間を見つけた。
磨き上げられた金属テーブル。その上には被害者と思われる少女の入ったホルマリン水槽が飾られていた。