第08話 カチナイーヨ要塞
今回のターゲットは、某国の切り立った崖の上に建つ古城カチナイーヨ要塞。中世の趣を残す美しい外観だが、今は軍のアンテナが林立し、無骨な軍用車両が石畳を埋め尽くしている。
ニュースは続ける。
『軍は歴史的価値を無視し、ここを電子戦の拠点にする構想です。ユネスコは強く抗議していますが……』
アナウンサーの声を聞きながら、俺の脳内では自撮り予想図が組み上がっていた。
「月夜に浮かぶ古城。そこから噴き出す紅蓮の炎。そして、瓦礫の中でチェロでも弾いているような俺の姿……。いや、チェロは重いから縦笛か? ……いや、やっぱりピースサインだな。原点にして頂点だ」
コンセプトは決まった。
アート。これなら、見た目重視な若者も喜ぶだろう。やはり映えだ。
俺はすぐさま、押し入れの奥から本気用の火薬原料を取り出した。
今回は色にもこだわる。
炎の色を鮮やかな青や緑に変えるため、炎色反応を利用した金属粉を調合する。図工というよりは、もはや化学実験だ。
「よし、完璧だ。このレインボー爆弾なら、AI生成でも作れない美しさを表現できる」
その時、スマホがピコンと鳴った。
Xの制限が解除されたのだ。
4人のフォロワーに向けて、ポストした。
【無敵の隠密おじさん:@lonely_shadow_45】
『しばらくお休みしてましたが、準備は整いました。次は、世界を色で驚かせます。乞うご期待。』
返信はなかった。
相変わらずインプレッションは『5』。
だが、俺の心は折れていなかった。
「待ってろよ世界。今度こそ、トレンドの1位を爆破してやる」
俺は登山靴の紐を締め直した。
俺は再び、成田空港行きのバスに乗り込んだ。
リュックの中には、自作のレインボー爆弾と、新調した自撮り棒が詰め込まれていた。
花火師って凄いよね。どうやって計算してんだろ。




