第06話 洋上プラットフォームの戦い
深夜の洋上。荒れ狂う波の音に紛れ、テロリストたちの小型ボートが巨大なプラットフォームへと接近する。
「一気に制圧するぞ!」
親玉が銃を掲げて叫ぶ。男たちは「おおお!」と士気を高めているが、当のジャックこと俺は、ボートの隅でスマホの画面の明るさを最小にして設定を確認していた。
(海の上は暗いから、シャッタースピードを遅くしないと……。いや、爆発の光があるから大丈夫か)
「おいジャック! お前も来い!」
「あ、はいはい。お疲れ様ですー」
俺は新人らしく元気に返事をして、男たちと共に梯子を駆け上がった。
プラットフォーム上では、警備兵とテロリストたちの激しい銃撃戦が始まった。飛び交う銃弾。耳を劈くような金属音。まさに戦場だ。
だが、俺には関係ない。
俺は銃を構えるふりをして、スルスルと戦場の中心を通り抜けた。誰も俺を撃たない。警備兵も、俺と目が合うと「あ、作業員の人? 逃げ遅れたの? 危ないからあっち行って!」と親切に誘導してくれる始末だ。
「ありがとうございます。お仕事頑張ってください」
丁寧にお礼を言いながら、俺は心臓部であるガス加圧ユニットに特製爆弾を設置した。
今回の仕掛けは豪華だ。ただ壊すだけでなく、海面にガスを噴出させて火の輪を作るように計算してある。
「よし、設置完了。あとは……シャッターのタイミングだ」
俺は、タイマーを起動した。
テロリストたちは「爆破準備完了だ! 退避しろ!」と叫びながらボートへ戻っていく。俺もドサクサに紛れてボートに飛び乗り、プラットフォームから数百メートル離れた地点でスマホを構えた。
――ドォォォォォン!!
計算通り、海面から巨大な火柱が立ち上がり、プラットフォームを包み込んだ。夜の海が真っ赤に染まり、地獄の業火がガスコンロのような円を描いて広がる。
今だ!
俺はボートの縁に腰掛け、背後の大炎上をバックに、テロリストの親玉が勝ち鬨をあげている隙に自撮りをした。
火柱とその周りを囲む円状の炎、俺の顔は少しブレたが奇跡的の一枚が撮れた。
「撮れたぁぁ!」
俺は歓喜した。これこそ、世界が求めていた臨場感だ。
翌日、帰国した俺はすぐさまXにアップロードした。
【無敵の隠密おじさん:@lonely_shadow_45】
『プラットフォーム爆破。ちょっと火力が強すぎたかも? #海上プラットフォーム #爆破 #大炎上』
今度こそ。今度こそ1万いいねは固い。
だが、一時間後にアプリを開いた俺の目に飛び込んできたのは、赤い警告メッセージだった。
【あなたのアカウントは一時的に制限されています。】
「な、なんだって……!?」
通知欄を見ると、そこには警告する文章が並んでいた。
『この投稿は「テロリズムを助長するコンテンツ」または「暴力的な表現」として多数のユーザーから通報されました』
『不適切な投稿を削除しない限り、機能制限は解除されません』
さらに、数少ないリプライにはこうあった。
『うわ、不謹慎。テロ事件の動画を使って自撮りとか正気?』
『コラの技術は凄いけど、人間性が終わってる。通報しました』
「違うんだ……! コラじゃないんだ! 俺が! 俺が現地でやったんだよ!」
俺は倫理観の欠如したコラ職人としてネット社会から叩かれた。
通報しないでね。




