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無敵の隠密おじさん、国境を超えて爆破してきたが、Xのフォロワーは3人  作者: ゼンショー・シマァス


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23/28

第23話 最後の聖戦、独裁者の秘密宮殿(脱出編)

 ネットカフェの裏口。湿った路地裏に飛び出した佐藤の耳には、表通りで急ブレーキをかけるSUVの重苦しい音が響いていた。

 フォロワー5万人。その代償は、一国の軍隊と国際調査団を本気にさせたことだった。


「おじさん、聞こえる!? その路地を左に曲がって! 30秒後に衛星の監視が途切れるわ!」

 スマホの画面越しに、アナ(ポエム垢)の悲鳴に近いDMが届く。


 だが、佐藤は走らない。走ればそれは「逃亡者」の動きになり、プロのハンターたちの本能を刺激するからだ。

 彼はあえて、路地の隅にあった清掃用具のカートを手に取った。そして、腰を少し曲げ、覇気のない、どこにでもいる「深夜の清掃員(新人)」になりきった。


 角を曲がった瞬間、フル装備の特殊部隊員たちが銃を構えてなだれ込んできた。

「止まれ! 誰だ!」

 ライトの光が佐藤を射抜く。


「あ、すみません。ゴミ、出しに来た新入りです。表の車、お兄さんたちの? 通れないからちょっとどけてくれないかなぁ……」

 佐藤は、眩しそうに目を細めながら、完璧な「新人顔」でぼやいた。


 隊員たちは互いに顔を見合わせた。

(……なんだ、この緊張感の欠片もないおっさんは。ターゲットは独裁者の玉座で不敵に笑う『隠密の魔術師』だぞ? こんな、生ゴミの匂いがするおじさんなわけがない)


「……チッ、一般人か。危ないからさっさと失せろ!」

「へぇー、怖いですねぇ。お仕事頑張ってください」


 佐藤はカートを押しながら、隊員たちの横を悠々と通り過ぎた。

 かつて戦場で、数多の死線を超えてきた彼のステルス能力は、今や「社会の歯車」として完全に背景に溶け込んでいた。


 大通りに出ると、そこはさらに混沌としていた。

 宮殿爆破の速報を聞きつけた群衆や、SNSで『おじさんがこの近くにいる!』と特定を始めたファンたちが集まり、騒ぎは拡大していた。


「あ! あの人、おじさんに似てない!?」

 一人の若者が佐藤を指差す。

 佐藤の心臓が跳ね上がった。特殊部隊は騙せても、スマホ片手に「ネタ」を探す現代の群衆は、時にプロ以上の観察力を発揮する。


「……あ、自分、今日入ったばかりの警備員っす。あっちに有名人がいたって誰か言ってましたよ?」

 佐藤は適当な方向を指差し、再び「新人スキル」を発動させた。

「マジで!? 」「おじさんあっちか!」

 群衆は津波のように反対側へ流れていく。


 その隙に、佐藤はあらかじめ手配していたオンボロの軽トラックに乗り込んだ。

 スマホを開くと、アナからの新しいメッセージが届いていた。


『……脱出したのね。信じられない、あの包囲網を歩いて抜けるなんて。……おじさん、あなたは一体、何者なの?』


 佐藤はハンドルを握り、少しだけ誇らしげに口角を上げた。

「……何者でもない。ただの、承認欲求が強めの45歳だよ」


 彼はアクセルを踏んだ。

 動画は公開できなかった。それでも、5万人の期待と、たった一人の「仲間」の心配が、彼を次のステージへと押し進めていた。


昔からの友達。20代の頃から「巨匠顔」。ベテラン扱いだった。

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