表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
無敵の隠密おじさん、国境を超えて爆破してきたが、Xのフォロワーは3人  作者: ゼンショー・シマァス


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

21/25

第21話 動画なら信じてもらえるか?(リベンジ編)

 独裁者の玉座。本来なら一国の主のみが座ることを許されるその場所に、佐藤はどっしりと腰を下ろしていた。

 だが、彼の心にあるのは権力への野心ではない。凄まじいまでの「自撮りへの執念」だ。


「よし、今度は絶対に失敗しない。物理ボタン、ヨシ。予備バッテリー、ヨシ。レンズの汚れ、ヨシ」


 彼は三脚を玉座の正面に立て、最新のウェアラブルカメラを胸に装着し、さらに予備のスマホを柱の陰に隠して定点観測の準備を整えた。

「バックアップは三重だ。これなら軍用機が墜落しても映像は残る」


 佐藤は爆弾の起爆装置を膝の上に置き、カメラの録画ボタンを一つずつ丁寧に押し込んだ。

 液晶画面に、赤い「●REC」の文字が灯る。


「……動いてる。動いてるぞ! 俺の姿が、生きたまま記録されてる!」


 彼は感動に震えた。これまでの人生、卒業アルバムからも、戦場の記録からも、ことごとく消し去られてきた。だが今、この瞬間、45歳のありのままの姿がデジタル信号として刻まれているのだ。


 佐藤はカメラに向かって、静かに語りかけ始めた。

「……えー、フォロワーの皆さん。無敵の隠密おじさんです。今、私は某国の宮殿、その心臓部にいます。これから、この豪華すぎる内装を、私の特製爆弾で『清掃』したいと思います。……あ、宮殿自体は壊しません。軍事用サーバーと、この成金趣味な金メッキのアンテナだけを狙います」


 彼は立ち上がり、玉座の前で一礼した。

 そして、手元のスイッチを優雅に押し込んだ。


 ――ドォォォォォン!!


 瞬間、宮殿の裏側にあるサーバー棟が七色の火柱を上げ、衝撃波が玉座の間を駆け抜けた。

 天井の金箔が吹雪のように舞い落ち、窓ガラスが芸術的な音を立てて砕け散る。

 その光の渦の中で、佐藤は渾身の「いいね」ポーズを決めた。


「どうだ……! これが、加工なしの、45歳の実力だぁぁ!!」


 爆風で髪がボサボサになり、顔は煤で汚れている。だが、その瞳はかつてないほど輝いていた。

 録画時間は約2分。爆発の開始から、衝撃波の余韻、そして最後に佐藤がカメラを止めるために駆け寄る「ドタドタ音」まで、完璧に収録された。


 佐藤はカメラをひったくるように回収し、混乱に陥る宮殿を後にした。


 数時間後。隣国へ逃れた佐藤は、カフェの無料Wi-Fiに接続した。

「……いよいよだ。世界が、俺を見る」


 彼は、一切の編集を加えないRAWの動画ファイルを、震える指でアップロードした。

 タイトルは、『宮殿で自撮りしてみた(本物)』。


 だが、その瞬間。

 佐藤のスマホに、一通のダイレクトメッセージが届いた。

 送り主は、あの「ポエム垢」――アナだった。


『おじさん、逃げて。今、あなたのIPアドレスが軍の衛星にロックされたわ。その動画を上げたら、あなたは英雄になる前に、跡形もなく消される。……お願い、私を信じて』


「……え?」


 佐藤の指が、送信ボタンの数ミリ上で止まった。

 初めて届いた、フォロワーからの真剣な警告。

 英雄か、生存か。おじさんの承認欲求が、最大の岐路に立たされていた。



成金趣味の何が悪い。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ