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無敵の隠密おじさん、国境を超えて爆破してきたが、Xのフォロワーは3人  作者: ゼンショー・シマァス


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第18話 隠密vs特殊部隊

「隠密おじさん」の正体を突き止め、その脅威を排除せよ――。

 要塞の爆破を受けて結成された謎の組織『ワルソー』。各国の特殊部隊から選りすぐられた精鋭たちが、佐藤の住むボロアパート周辺に展開していた。


 彼らは最新の熱源感知器、音響センサー、そして人工知能による行動予測システムを駆使し、半径五百メートルを完全に封鎖していた。


「ターゲットは極めて高い隠密能力を持っている。瞬き一つするな。ネズミ一匹通すなよ」

 指揮車の中で、隊長が無線に鋭い声を飛ばす。


 その時。

 アパートの階段を、サンダルをペタペタと鳴らしながら下りてくる一人の男がいた。

 佐藤(45歳)である。手には、コンビニで買ったゴミが入ったレジ袋。


 彼は、建物の陰に隠れたフル装備の特殊部隊員の、わずか三十センチ横を通り過ぎた。

 隊員の目は、佐藤の姿を捉えている。だが、脳が信号を拒絶した。


(……なんだ、この『ただの背景』のような質感の男は? 殺気も、目的意識も、存在感もゼロだ。これは……通行人Aか? いや、通行人Aですらない『動くシミ』か?)


 隊員が困惑している間に、佐藤は「お疲れ様ですー」と小さく会釈し、ゴミ捨て場へ向かった。


「こちらアルファ。不審者……らしき影を確認。……いや、訂正。ただのゴミ出しのおじさんだ。脅威度はマイナス。無視する」

「こちらベータ。同じく。あまりに影が薄すぎて、照準が合わない。……というか、見るのが苦痛なほど普通だ」


 最新鋭の照準器は、佐藤の「新人顔」と「存在感レベル99」のせいで、彼を『風景のノイズ』として自動的に除外してしまう。


 ゴミを捨て終えた佐藤は、ふと、アパートの向かいに停まっている不自然な黒塗りのバンに目を止めた。

「……なんだ、あの車。あんなところに停めてたら、近所の迷惑なのになぁ」


 佐藤はトコトコとバンに近づき、スモークガラスの窓をコンコンと叩いた。

 中には、息を殺してモニターを見つめていたアナ(@poem_lonely_night)と、三人の狙撃手がいた。全員が凍りつく。


(……見つかった!? 世界最強の特殊部隊の偽装を、この男は歩いてきてノックしたの!?)


 アナが冷や汗を流しながら窓を開けると、そこには、コンビニの袋を下げた冴えないおじさんが立っていた。

「あのー、ここ駐車禁止っすよ。さっき警察が回ってたんで、気をつけたほうがいいですよ」


 完璧な「親切な近所の新人住人」のオーラ。

 アナは、反射的に「あ、ありがとうございます……」と答えてしまった。


「いえいえ、お仕事頑張ってください。失礼しますー」


 佐藤は再びペタペタとサンダルを鳴らし、自分の部屋へ戻っていった。

 車内に沈黙が流れる。


「……隊長、今の男がターゲットの……」

「馬鹿を言え! あれが世界を震撼させた爆破師なわけがあるか! 我々をからかっているのか、それとも本物はもうとっくに包囲網の外だ!」


 一方、自室に戻った佐藤は、こつぶのジュースを飲みながらスマホを開いた。

「……なんか、外が騒がしいな。あ、フォロワーがまた100人増えてる。みんな『動画まだ?』って……よし、そろそろ本気出すか」


 最強の追っ手たちが目の前にいることすら気づかず、佐藤は「独裁者の秘密宮殿」へのフライトを予約した。




駐禁はやめよう。

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