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無敵の隠密おじさん、国境を超えて爆破してきたが、Xのフォロワーは3人  作者: ゼンショー・シマァス


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第15話 フォロワー一万人と、震える指

 通知が止まらない。

 四畳半のアパートで、佐藤は熱を帯びたスマートフォンを、まるで不発弾でも扱うような手つきで眺めていた。


【フォロワー:12,408人】


 昨日まで、エロスパム、投資勧誘など怪しいフォロワーしかいなかった俺の世界が、一晩で一変してしまった。


『おじさん、次の爆破はどこ?』

『正直、カチナイーヨ要塞のやつはガチだと思ってる。特定班が解析してたけど、あの炎の色、本物の金属粉の燃焼反応らしいぞ』

『動画まだ?』

『動画期待してます!』


「ど、どうすればいいんだ……」


 リプライの数は数千件。

 かつて戦場で、四方八方から敵に囲まれた時でさえ、これほど心拍数が上がったことはない。

 何か返信しなければ。フォロワーを大切にしろと、SNS攻略本にも書いてあった。


 佐藤は震える指で、気の利いたお洒落な返信を考えようとしたが、結局、おじさんらしいの簡潔すぎる言葉しか出てこなかった。


【無敵の隠密おじさん:@lonely_shadow_45】

『ありがとうございます。次は、ちゃんと撮ります。』


 送信。

 その瞬間、またしてもいいねの嵐が吹き荒れる。

『ちゃんと撮るって、次もやるってこと!?』『おじさん、不謹慎だけど最高www』『これもう犯行予告だろ』


 佐藤の意図とは裏腹に、ネット上では伝説の爆破師が沈黙を破ったと勝手に解釈が進んでいく。


 だが、佐藤はそれどころではなかった。

 次と言ってしまった。

 失敗したままでは終われないというプロの矜持と、せっかく増えたフォロワーを失望させたくないという承認欲求が、彼を突き動かしていた。


「次は……フォロワーやアンチも喜ぶような動画を撮ってやる」


 彼は貯金残高を確認した。前回のバズで得た広告収益……はまだ入っていないが、ネット民の熱狂が彼に勇気を与えていた。とりあえずは、当面の活動資金の為に定期預金を崩した。もう戻れないぞ。


 その後、前回の失敗の原因だったBluetoothリモコンをゴミ箱に捨て、有線の物理シャッターを買いに走った。


 その頃。

 ポエム垢こと諜報員・アナ(@poem_lonely_night)は、佐藤の次は、ちゃんと撮りますという投稿を、血の気が引く思いで見つめていた。


「ちゃんと撮る……? 今までは遊びだったっていうの……?」


 彼女の脳内では、佐藤のこれまでの行動が最新兵器のプレゼンテーションと結び付け、やっかいな勘違いを生み出していた。

 カチナイーヨ要塞での精密な爆破は、ピンポイント攻撃能力の誇示。

 霧の要塞での何も見えない投稿は、隠蔽能力の誇示。

 そして次の動画は、全世界に向けた、圧倒的な武力のライブ配信――。


「阻止しなきゃ。彼が本気で撮影を始めたら、この国の、いや世界のパワーバランスが崩壊するわ……!」


 本人が四畳半で次の動画に悩んでいる一方で、たった一人のバズりたいおじさんを巡って、世界が動き出す。


犯罪予告は犯罪です。

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