第14話 インフルエンサーの反応
四畳半のアパート。
佐藤は、どん底の気分でスマートフォンの画面を眺めていた。
手元にあるのは、霧の要塞で撮り損ねた爆発直前の、ただの灰色の写真だ。背景には何一つ映っておらず、手前には緊張で顔を強張らせた中年男性が一人。
「……もう、どうにでもなれ」
彼はヤケクソだった。
期待させておいて「動画撮れませんでした」と言うのも癪だ。彼はその、あまりにも何も映っていない写真を、短いコメントと共にポストした。
【無敵の隠密おじさん:@lonely_shadow_45】
『いや、マジでごめん。失敗です。』
投稿してすぐにスマホを放り出し、佐藤はふて寝した。
どうせインプレッションは一桁だろう。明日からまた警備員のバイトで、通行人に頭を下げる日々だ。承認欲求なんて、俺のような存在感の薄い男が持つべきじゃなかったんだ。
だが。
その三時間後、世界が動き出した。
きっかけは、チャンネル登録者数200万人を誇る超人気インフルエンサーであるスゲエの投稿だった。
彼はネットの面白いネタを紹介してバズらせるのが得意な、今をときめく若者のカリスマ配信者。
【スゲエ@公式:@Sugee_official】
『ちょ、待ってwww この隠密おじさんってアカウント見て。
昨日、某国の秘密基地が爆発した瞬間に、その場所で自撮り上げてる。
これ、ガチの現場にいたとしたらヤバすぎるし、ネタだとしたらタイミング神すぎて草。
#隠密おじさん #今週のクソコラ大賞』
スゲエのフォロワーたちが一斉に佐藤のアカウントに押し寄せた。
『え、これって昨日のニュースの場所じゃん!』
『おじさんの顔、ガチで焦ってて草』
『このおじさん、大物すぎるだろwww』
通知の嵐。
眠りから覚めた佐藤が恐る恐る画面を見ると、そこには見たこともない数字が並んでいた。
【2,400件のリポスト 8,000件のいいね インプレッション:150万】
「……ひ、ひゃくごじゅうまん……?」
佐藤の指が震える。
待ち望んでいたバズ。だが、それは大失敗した自撮りによってもたらされたものだった。
さらに、皮肉なことにスゲエの紹介によって、過去の基地爆破やカチナイーヨ要塞の七色爆破も再発掘され始めた。
『待てよ、過去の投稿も見てみろ。カチナイーヨ要塞のやつ、これCGじゃないって検証出てるぞ』
『このおじさん、何者? 』
一晩にして、佐藤は謎のダークヒーローへと押し上げられた。
佐藤のフォロワーが、一気に一万人を超えた。
だが、本人の心境は相変わらず四畳半の畳の上で「え、どうしよう、これどう返信すればいいの?」とパニックに陥っているだけだった。
以降、毎日投稿します。
完走目指すので、よろしくお願いします。




