表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
✴︎追放令嬢は闇魔法で無双する✴︎第二章  作者: ちょこだいふく


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

10/18

10話✴︎アーリントンへ

金色の陽が、サマールの空に傾きはじめていた。


王宮の一角、古くから封印されていた転移魔法陣の間に、クラウディアとレオンハルトが静かに立っていた。


石造りの床に刻まれた魔法陣は、まるで呼吸するようにかすかに光を帯びている。その中央には、布に包まれた竜の卵が、静かに置かれていた。

レオンハルトとクラウディアが両手を広げ、足元に広がる古の紋様へと魔力を流し込むと、石床に刻まれた文様が淡く浮かび上がる。

最初はただの微光だったが、やがてそれは脈打つように鼓動を始め、空間そのものが揺らぎ出した。


「……動いた。眠っていた術式が応えている」


レオンハルトの声は低く、だが確かな手応えを含んでいた。


クラウディアは魔力を流しながら、中央に置かれた卵に目を向ける。

その殻もまた、魔法陣に反応するようにほのかな光を帯び始めていた。


「……今のうちに、転移を」


「そうだな」


二人は目を合わせ、そっと頷き合う。


魔法陣が黄金の輝きを強める中、クラウディアは卵を胸に抱き、レオンハルトはその背を守るように立つ。


「クラウディア、お前は先に――私は後ろから魔力を支える」


「わかりました。……行ってきます!」


その瞬間――


光が炸裂した。


まばゆい閃光と共に、クラウディアと卵の姿がかき消え、続けてレオンハルトも空間の揺らぎに飲み込まれる。


音も、光も、気配すらもその場から消え去り、魔法陣は再び静寂の中に沈んでいった。


ーーー


数瞬の沈黙の後、王妃が静かに息をついた。


「……成功、したのですね?」


「あの輝きは、正しく転移の証」


アゼル王は深く頷き言った。


「クラウディア嬢とレオンハルト殿が無事にアーリントンに到着していれば……この使命は、大きく前進する」


同じ頃、王宮の上空に黒き影が舞い降りていた。


漆黒の翼を広げたニブル・アドゥム。その背には、フィン、セレナ、アレクの三人がしっかりと腰を据えていた。


「本当にいいのか、乗っかっちゃって……!」


セレナが言いながらも、楽しそうに笑う。


「心配するな。お前たち程度なら余裕だ」


ニブルが低く唸るように応え、翼を一閃させた。


風が巻き起こり、空が震える。


「さあ、空を翔けよう。約束の地――アーリントンへ」


その言葉と共に、黒き竜は空へ舞い上がった。


「準備はいいか?」


ニブルの低く響く声に、アレクはぐっと手綱のような棘にしがみつき、フィンとセレナも必死に体勢を整えた。


「……い、いつでも……っ!」


アレクが返すや否や、ニブルの巨体が一気に大地を蹴り、風を裂いて飛翔する。


「うわああああああっ!!!」

「ちょっ……速っ……!!」

「!!!!!!」


竜の背を風が叩きつけ、息もできないほどの圧力が襲う。眼下の景色は、もう見えない。風と空と疾走感だけが体を包み込み、しがみついていなければ飛ばされそうだった。


「ニブルっ!あんた速度出しすぎぃ!!」


セレナの悲鳴に、ニブルはくぐもった笑いを喉の奥で鳴らした。


「この程度で騒ぐとは……まだまだだな、人間よ」


その速度は、まさしく雷のごとく。転移魔法陣には及ばないものの、常識では考えられぬほどの速さだった。


やがて竜が一声低く吠え、進路を緩める。


視界に広がったのは、見慣れた緑と石造りの館、そして風格ある塔の尖塔……

アーリントンの領地だった。


「……ついた……」


アレクががくがくと膝を震わせながら呟いたとき、地面に優しく着地したニブルの背から、ふわりと風が巻き起こった。


その風の中に、迎えの影が現れる。


「おかえりなさい」


クラウディアが、にっこりと微笑んでいた。

その隣にはレオンハルト、そして侯爵夫人のセリーヌ、柔和な笑みを浮かべるシリル、そしていつものように腕を組んだままのルーファスだった。


「ようやく着いたな」

「お疲れ様」

「……竜に乗ってくるとは、さすがだな」


三者三様の言葉が、どこか懐かしく温かい。


「……あぁ、ただいま!」


アレクが笑い、セレナとフィンもそれに続く。


竜の背で駆け抜けた風の旅は、こうしてアーリントンの大地へと帰着した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ