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王太子の真似をやめると言っても、勿論平民の冒険者だと暴露するという意味じゃない。

ただ俺の地を出す事にしたと言う意味だ。


性格を豹変させれば、別人だとバレるなり疑われるかもしれないが、もともとクソほどにプライドの高い騎士達に言うことを聞かせる為に王太子という地位がベストだっただけだ。


入れ替わって一年が過ぎたいま、今更別人だと気づく者がでても、王家の人間に連なる者だとでも匂わせておけば従いはするだろう。


これまでの王太子としての振る舞いは完璧だったし、これだけ顔が似てるのだから血縁者だと納得するはずだ。

対外的な()()()()()、王国の王太子が勇者という前提さえ崩さなければいい。


実際品行方正で温厚なアイツの真似をやめれば多少驚かれはしたが、思ってた以上にすんなりと受け入れられてこちらの方が面食らった。

側近達など、驚く貴族連中達に対して『戦場へ長く出られればご気性も代わりましょう。』とフォローしたくらいだ。


つまり大なり小なり、側近達の多くが元々俺達の入れ替わりに気づいていながら知らぬ存ぜぬを貫いていたということだ。

それなのに一年も馬鹿正直にあいつの真似を続けていたのだから、間抜けなこったと苦笑が漏れた。


彼らにしてみれば、勇者が()()()()()()戦ってくれることが重要なのであって、そこさえバラさないでくれるなら俺と言う男がどんな人間性だとしてもいいのだろう。


身代わりを務める俺のことは本当に目に入っていなかったんだなと思うと悔しい気持ちになったが、それならばそれでこちらも遠慮なく振る舞えるというものだ。


これまでは極力あの野郎のイメージを崩さないように、傲慢で堕落しきっている貴族連中にさえ温和な態度を取って戦場への出兵を要請したり、説得に当たっていたが、問答無用で戦場へ放り込んでやった。


貴族共は当然反発したが、魔王が侵攻を開始してから一年半もあったのだ。

どんな言い訳を並べ立てても国難に対し何もしていなかった事実は覆せない。

出兵の為の準備だって十分すぎるほどあった。

剣を突きつけてやれば、震えながらたちまち沈黙した。


『やり過ぎではございませんか?』


側近の中には、俺とあいつとのやり方が違いすぎる事に不平を漏らすやつもいたが


『これが()のやり方だ。不満があるなら()()()に戻ってもいいぞ。』


と伝えれば、こちらもまた引き下がった。 


俺に苦言を呈した側近は、王太子の品位が下がることを懸念したようだが、戦は品行方正で勝てるものじゃない。

やると決めたからには貪欲に勝ちに行く。

今まで戦に出たこともない貴族どもだって、囮や肉盾くらいには使えるのだ。

使えるものなら何でも使うのが俺のやり方だ。

王国軍と周辺諸国の少ない援軍で魔王討伐を成し遂げるのならば、やれる事は全てやり尽くしてもまだ足りない。

理想の王子様なんて演じている余裕はない。

貴族のプライドや見栄なんて要らないもの持ち込むようなら、容赦なく処断した。


戦闘スタイルもガラリと変えた。


これまでは防衛戦が主軸だったものを、攻撃をメインとした戦術に変化させた。


防衛と攻撃ならば防衛の方が圧倒的に戦力を温存出来るしリスクも低い。

攻者三倍の法則(攻撃側は防御側の3倍の兵力が必要)なんて言葉もあるくらいだ。

戦力差があるなら、当然防衛に力を入れるべきだ。


だが防衛戦は防戦一方が続けば、兵の精神的疲労を蓄積させ士気も下がる。

それに魔王軍は王国に聖剣がある以上、どれだけ防衛し侵攻を防いだとしても、決して戦いをやめることはない。

防戦一方で脅威の欠片も感じられない相手なら尚更だ。


このままではどのみち負ける以外の道はなかった。


だからこそ、討って出なければならない。


勿論真正面からぶつかっては勝ち目はないので、奇襲や待ち伏せなどのゲリラ戦になるが、これまでずっと防衛戦ばかりだった王国に攻撃はないと魔王軍は油断しているはずだ。


(油断しているならば隙をつく!)


何時までも続けられる戦い方ではないし、兵を失うリスクも高い。


しかしこちら側からも攻撃の手数があることを示せば、敵は警戒して攻撃のスピードを緩める。


少しでも魔王軍の勢力を押し返す事が出来れば、未だ高みの見物で様子見を見せている国へ揺さぶりをかけることも出来る。


王国が魔王を討伐した際に自分の国だけが援軍を送らなかったとなれば、臆病者の国と誹りを受ける事になるからだ。 


更には既に援軍を送ってくれた国に対して増援も期待出来るだろう。



その為にも俺は勇者として常に最前線に立った。


どんな泥臭い作戦も俺が全て指揮を執った。




俺が本気で王国の王太子として魔王を討つ為に動き始めれば、クソ女神は当然憤慨した。


『ちょっとお!!あんたまさか本気でこのまま王太子の身代わりに魔王を倒すつもりなのぉ?

あたしへの嫌がらせなら一年も苛つかせたんだから十分でしょ!

何時までも遊んでないでいい加減帝国の勇者としての使命を果たしなさいよぉ!

本当に勇者から外されたいのぉ!?』


『俺を勇者から外したけりゃ、前から勝手にしろって言ってんだろ!

だが王国はいま周辺国と協力し合って魔王軍の討伐にあたり成果を生み始めている。

それなのにお前が別の勇者を任命して、王国へ帝国軍を送り込むなら、帝国は頼まれもしないのに勝手に魔王討伐を掲げて侵攻してきた侵略者になるぞ。

お前の大事な千年前の勇者が作った帝国を侵略国家と言わしめたいなら、新しい勇者と共に王国に責めてくればいいさ。」


「なっ、なんですって!?あ、あんたまさか女神であるあたしを脅してるの!?」


「どうとってもらっても構わねえぜ。どのみち俺は勇者から外されても、()()()()()()()()()魔王を倒すと決めたからな。」


「嘘でしょ!?何でよ!?どうしてそうなるのよ!?

仮に勇者じゃなくなったとしても、あんた帝国の第二皇子でしょうが!!

王国は帝国にとって宿敵の相手なのよ!?王国の味方なんてしたら第二皇子としての地位も失うかもしれないわよ!?」


「ふん、千年も昔の恨みなんて、俺に関係あるかよ。

それに第二皇子って言われても、誰かさんのせいでガキの頃から人生のほとんどを戦場で生きてきたんたぞ?

宮廷でチヤホヤされる生活になんて馴染みもねえし、平民の冒険者にでもなった方かよっぽど性に合ってるんで困らねえな。

第二皇子として帝国から受けた恩なら、これまで戦場で上げた数々の勝利で十分お釣りがくんだろ?」


「だ、だからってどうしてわざわざ苦労する道を行く必要があるのよぉ!?

あたしのシナリオ通りにすれば、地位も名誉も名声もあの娘だって簡単に手に入るじゃない!

だいたい本当に上手くいくとでも思ってるのぉ!?

千年前と比べて武器も防具も良くなったから勝てるかもとはいったけど、それはあくまで帝国の戦力でならって話よ?

周辺国の援軍が来たって、あれっぽっちじゃ焼け石に水でしょ!

あんたが頑張ったところで、直ぐにやられちゃうわよ!!」


「はっ、そう思うなら黙って見てろよ。

王国が負けたなら、それこそ帝国は魔王討伐の名のもとに大手を振って侵攻出来るぜ。

ああ、それとも本心では俺を勇者から外しても魔王討伐を成し遂げちまいそうだから焦ってんのか?

もし聖剣も女神の加護もない状態で俺に勝たれたら、御大層な伝承まで残したのに女神の面子丸潰れになるもんな!?

だったら素直に俺に頭下げてみたらどうだ?

俺にこのまま魔王を倒されると困るからお願いしますって、王太子みてえに地に(ぬか)ずいて懇願するなら考え直してやってもいいぜ!」


「はぁ!?ふざけんじゃないわよ!!慈悲をかけて言ってやったのに何て不遜なの!!

このまま魔王を倒せるなんて自意識過剰も大概にしなさいよね!


もういいわ!そんなに王国と心中したければすればいい!!

癪に障るけどあんたの言う通り今帝国を動かすと侵略者の汚名を着せかねないから、あんたと王国が共倒れになるまでは高みの見物してあげる!!

すぐに後悔する事になるでしょうけど、あたしは絶対助けてなんかあげないから覚悟することね!」


「ははは俺の活躍を指くわえて見とけクソ女神!」


怒りの沸点の低いクソ女神を挑発すれば、アッサリと『俺と王国が共倒れになるまでは高みの見物をしてやる』と挑発に乗った。


掛けではあったが、女神が挑発に乗ったことに内心ホッとした。

俺が王国の王太子として魔王討伐するには女神の横槍が一番の脅威だからだ。


これで女神の意思に逆らった俺がボロクソに負けるまでは、女神は動かない。。


短慮だがプライドの高い女神の事だ。言質を取った以上、一度口にしたことは覆さないだろう。



その日以降、女神の声は聞こえなくなり、聖剣はただの剣になった。


そしてそこからはもう生死をかけた怒涛の日々だ。


毎日が死と隣り合わせ。


何度も死にかけたし、生死の境を彷徨うような手酷い傷も多く負った。


棺桶に片足を突っ込むたびに『一体俺は何してんだ?』と自分の正気を疑ったりもした。


綱渡りの作戦の連続に側近達から反発され、激しくぶつかり合って無茶を罵られた時には、何もかも止めてしまおうかとも思った時もある。


それでも、その度にあの馬鹿げた感情が俺を戦場へと引き戻した。


(……………こうなりゃ意地だ。)


断崖絶壁に立たされながら、時に泥水を飲むような戦いに明け暮れながらも少しずつ勝利をつかんだ。


そして小さな成果を積み重ねていくうちに


俺を見つめる周りの目は、いつのまにか『王太子の身代わりの男』から、『王国軍を導く勇者』へと確実に変わっていった。





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