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少女を拾った探偵事務所  作者: 桐原コウ
第1章 帰宅は危険と隣り合わせ
7/12

暗い公園で

「お兄ちゃん、あまり奥に行くと追い込まれるから、横方向に動くイメージで動こう。」

「分かった。」


抱っこしたままの日向のアドバイスに従って、伊織は林の奥の方に向かうのを途中でやめ、右に折れた。

それから数歩進んだところで道のある方から近づいて来る足音が聞こえたが、それは引き離すつもりで伊織はそのまままっすぐ走った。

しかし、相手にも伊織の足音が聞こえているのだろう。

相手の足音もわずかに角度が変わり、伊織と日向の方に向かってくる。


「お兄ちゃん、木の陰に隠れてやりすごせないかな。」

「うーん、どうだろう。

 まあ、でも、今までと違う動きを取ってみるのは悪くないな。」


伊織はそれで脚を止め、足音がする方とは反対側の木の陰に隠れた。

日向は横抱きにしたままだと脚や頭が木からはみ出てしまうので、とりあえず下に降ろして。


近づいて来る足音は、先ほどまでは走っている様子だったが、今はゆっくりと近づいてきている。

おそらく、こちらの足音が聞こえなくなったので周囲を伺いながら歩み寄って来ているのだろう。


「目標が沈黙。

 隠れているものと思われます。

 このまま捜索を行います。」


呟いている声が聞こえてくる。

報告するような感じなので、仲間と連絡を取っているのだろう。

そして、それだけではなく。


「指揮官がいるな。」


伊織がぼそりと呟いた。


「そうだね。

 今まではそんなのいなかったんだけど。」


日向がそれに答える。


「いなかった?

 どうしてそれを知ってるんだ?」

「今までも今みたいにやり過ごしていたんだけど、あんな風に報告してるの初めて見たから。」

「なるほど。

 よく見てるな。」


感心したように伊織が言った。

言いながら、ふと、伊織は気が付いた。


「俺がいるせいかな?」

「そうかもしれないけど、お兄ちゃんのせいじゃないよ。

 それに、下っ端に任せてたら3日間も逃げられたから、痺れを切らしたってのもあるんじゃないかな?」

「確かに、それもあるかもな。」


日向の自分を庇ってくれる心遣いに、伊織は同意した。

とは言え、個人がばらばらに動かれるよりも、指揮官に統率された方が逃げるのが困難なのは明らかだ。

特に公園という限られたスペース。

囲まれると逃げ切れないかもしれない。


そんな話をしながらも、黒スーツが近づいて来たので、二人は黙った。

黒スーツが近づいて来て、二人がいる木の横を通り抜ける時には、黒スーツの動きに合わせて、二人は木の裏になるように立ち位置を変える。

もちろん、足元に落ちている枯れ枝や草を踏まないように気を付けて。

幸い、黒スーツは二人に気付かなかったようで、そのまま通り抜けて行った。


日向は伊織を得意げな表情で見上げた。

伊織も、それに目を細めて頷き返す。

そこで黒スーツが離れて行くのを少し待っていると。

二人を囲むように三方向から足音が聞こえてきた。

姿は見えないが、林の中なので、草や枝を踏む音でハッキリ分かる。

気付いたのは二人同時。


「お兄ちゃん。」

「ああ。」


黒スーツは、わざと二人を見逃したのだろう。

今度は三人で囲い込んで来た。

さすがにこれはやりすごせない。


伊織は日向を抱き上げると、近づいて来る三人のうちの一人に向かって走り出した。

選んだのは道側から来る足音。


「え、場所変えるんじゃないの?」


日向がびっくりした様子で聞いて来る。


「いや、いったん、包囲を突破する。

 その後、また隠れるんだ。」

「分かった。」


伊織の簡単な説明で日向は意図を了解したようだ。

それ以上は何も言わず、ぎゅっと伊織の首に抱き着いた。


言った通り、伊織は近づいて来る黒スーツを撃退すると、そこからさらに別の場所に移動した。

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