卒業があり別れがあり出会いがある
はじめましての人ははじめまして。
お久しぶりの方はお久しぶりです。
数年ぶりに小説を書き始めました。
至らぬ点が多々あると思いますが優しい目で見てください。
投稿頻度はそこまで高くはないので気長にお待ち下さい!
中学生の卒業式が終わった。
友達との別れではあるが連絡先を知ってるから会おうと思えばいつでも会える。
……まぁ僕に友達とか全然いないんだけどね。
唯一の友達は2年に上がるタイミングで家の都合で転校してしまった。
周りで別れを惜しむ人達の横抜け、これからカラオケでパーティーしようと盛り上がる人達を避けて下校する。
この下校道も今日で最後かと思いながら家に帰宅する。
「おかえり」
「おかえりなさい」
鍵を開けてリビングに入るとテーブルに座る男女の姿がそこにはあった。
テーブルの上では台所から持って来たであろう飲み物とお菓子が置かれている。
2人がくつろいでいるのはお菓子のゴミを見ればよく分かる。
「えっと...」
さすがに『おかえり』と言われて返す言葉は『ただいま』なのは友達のいない僕でも分かるが、今回はその定型文のセオリーを外して言葉を発する。
「どちらさまですか?」
多分、『ただいま』よりも適した言葉と僕は思った。
「初めまして。私たちの事ってサオリさんから何か聞いて無いかな?」
一目見て普通の人では無いと思ったがやっぱりか。
さおりとは僕の祖母の名前だったからだ。
この人たちは祖母の関係者か。
「私は索道 未来。こっちの男性は...」
「天道 道隆だ。よろしく」
全く知らない。
二人とも見た目は20代前半と思えるぐらいには若いが雰囲気というか仕草がしっかりしている。
多分、見た目通りの年齢ではないのだろう。
...…祖母と同じく。
「私たちの事は知らないようね」
「そのようだな。話しておいてくれたら楽だったが仕方ない」
「とりあえずこれを渡しておくわね」
そう言って渡されたのは手紙だった。
祖母は手紙を書く様な人では無かったが、僕の名前が書かれたその字は祖母のモノだった。
テーブルの上に置かれた手紙を手に取り裏を見る。
『詳しくは目の前の人に聞け』
あぁ間違いなく祖母だ。
手紙と言っても紙袋に入ったタイプではなくてカードタイプの手紙だから尚更祖母らしい。
「と言うわけだから説明するわね?」
カードタイプならこの人たちも見れるから自分たちが説明するって分かってるよな。
僕は彼らの座ってるテーブルの正面に座った。
「間中 真見くん15歳。中学生になったばかりの頃に力を継承されて3年。現在は両親と離れて暮らし、サオリさんが暮らしていた家に住んでいる」
僕のプロフィールを話出した。
「合ってるかしら?」
「えぇ。合ってます。おばあちゃんから聞いたんですか?」
「そうよ。3年前にいきなり遊びに来たと思ったら君の事を話して去ってったわ」
「おばあちゃんらしい」
自分の要件はさっさと片付ける人だった。
あれは長生きしたからではなくて性格だと思う。
あの人はの性格を例えると夏休みの宿題を渡されたらすぐに終わらして夏休み前に提出する様な人だ。
日記もラジオ体操のカードも提出してしまうのも祖母らしさの一つだろう。
「それで1年前から君の事を監視していたのよ」
監視していたとさらっと言った。
一体何を見られていたと言うのだろうか?
内容によっては自殺しなくてはいけなくなるんだが?
表情はあまり変えないように頑張ったが、内心はヒヤヒヤのドキドキのバックンバックンだ。
「安心してくれ。監視と言っても家の外での行動を見ていたんだ。コイツにはプライベートにまで干渉するなと言い聞かせている」
天道と名乗った男の人がそう言った。
「本当は監視を辞めさせたかったが規則があってそれは難しかった。すまない」
そう言って頭を下げた。
この人、良い人なのでは無いだろうか?
...…いや、無断で家にいるからそうでもないか。
「アンタは硬いのよ。家にお邪魔する時も勝手に入るのはダメだとか言ってたし」
「お前は常識がないな。まったく」
天道さん良い人!
そして苦労人だな。
「なぜ監視してたのかを言うと君が悪性か善性かを見させてもらったわ」
「まぁ、結果は善性だった」
僕の性格とか精神性を見られてたってコトかな?
「サオリさんに頼まれたのよね〜。能力を伸ばせる機関に入学させてやって欲しいってね。君が望めばだけどね」
そんな機関があるのを初めて知った。
祖母からは何も聞いてないからな~。
「表向きは普通の学校だが裏では能力の持った者の教育機関となっている」
そう言ってパンフレットを渡された。
どこに持っていたんだろうか?
話を詳しく聞くと今からでも入学手続きは可能とのこと。
入学金など様々な書類の提出は祖母が変わりにやってくれていたようだ。
俺の判断に任せるってことなんだろうな。
能力を伸ばすか一般人として生きるか。
祖母らしい。
「明日、答えを聞きに来る」
そう言って2人は帰った。
帰る際に飲み食いの代金としてキレイな石というか結晶をもらった。
能力者同士の共通の通貨のような物だと教えられた。
まぁもらえる物はもらっておこう。興味もあるしね。
テーブルを片付け、もらったパンフレットを読む。
自分の部屋にパソコンがあるのでネットの情報とパンフレットを見比べたりした。
「パンフレットは裏側の情報が結構掲載されてるけど、ネットのサイトでは表側の学校としての情報しか載ってないか」
普通にネットのサイトに裏側の情報が掲載されてる方がびっくりだけどね。
私立高校で場所は駅からバスに乗っての登校になるか。
登校時間は今までよりの20分ぐらい早く出ないと間に合わないかな~。
「寮もあるんだよな~」
パンフレットには寮の制度も掲載されいた。
基本2人部屋で希望者は1人部屋も可能らしい。
祖母いわくこの家は劣化は遅いと言っていたが、人が住まなくなっても大丈夫だろうか?
電気ガス水道の業者に言った方が良いのかな?
そのへんは後で考えるか。
寮生活だと朝昼晩学食が食べられるとも書いてあるし料理を自分で準備する必要もないのは楽だ。
他にも洗濯もしてもらえるってホテルかな? 行った事ないけど。
「能力者の教育機関か」
僕が祖母から力を継承してから3年。
自分で考えて使ってきたけど、やっぱり指導者がいた方が良いよな~。
行く方向に考えているけど、行かない選択肢はあるかな?
……友達もいないし心機一転頑張りますか!
そうと決まれば今日の晩ごはんを買いに行くかな。
「なんで玄関の前にいるんですか?」
出かけようと外に出たら索道さんがいた。
「行くんでしょ?」
俺の質問には答えてくれないらしい。
「えぇ。行きたいと思います」
「そう。天道には伝えておくわ」
そう言って踵を返した。
「一つ。質問して良いかしら?」
「なんですか?」
「……あなた。監視に気がついていたわよね?」
ふむ。
気がついていたかどうかか。
正直に答えた方が良さそうだな。
「どこかの誰かが僕に何かしているのを薄っすらと微妙に感じてはいました。嫌な感じとかチクチクする感じとか嫌悪感とかを感じなかったのでおばあちゃんが何かしてるのかな? と思っていたんですが、監視だとは全然気が付いてませんでした」
祖母が見守ってくれていると思ってたんだが、違ったらしい。
「私はこれでもあなたの数倍は生きてるし能力には誇りも持ってる。能力を持って数年の赤ん坊に探知されたんじゃプライドが許さないわ」
僕は彼女を怒らせてしまったらしい。
なんだか申し訳ない。
「感謝するわ。私の力にはまだまだな部分があった。研鑽し昇華するやる気が出てきたわ」
そう言って彼女は行ってしまった。
「不器用なんだよ。彼女は」
「いつから僕の後ろにいたんですか。天道さん」
びっくりした。
「誤解がないように言っておくと彼女は本当に君に感謝してるんだよ。嫌味な感じに聞こえる言い方は彼女なりの照れ隠し的なアレだよ」
「分かってます。純粋に感謝の気持ちが見えたので」
不器用って言うかツンデレかな?
外見は20代前半の見た目で年齢は僕の数倍年上のツンデレに需要はあるのだろうか?
「見えてた?」
「えぇ。僕は能力者でも見ることができないモノを見ることができます」
結構便利な力である。
「……それは固有? 継承? 能力?」
「生まれながらですから固有って感じですかね。おばあちゃんは知ってますよ。相談したので」
「あ~魔眼だね。さすがは永久機関の孫だ」
エターナル?
「エターナルってなんですか? 流れ的にはおばあちゃんの事ですよね?」
「そうだよ。永久機関と書いてエターナルと読むんだけど。俺達のような業界人でその名を知らない者はいないよね」
祖母にそんなカッコイイ名前があるなんて!
「なんで永久機関って呼ばれてるんですか?」
「彼女は昔からの能力者だから激動の時代と呼ばれる戦いが日常の時代を生き抜いてきた。その時の戦闘スタイルから彼女にはそんな二つ名が付いたと本人が言ってた」
「永久機関ってことは……」
「能力をいくら使ったところで力尽きる事がなく、むしろ上がっていくそうだよ」
これも本人が言っていたと付け加えていた。
さすがは祖母だ。
「彼女の官職は道だからそれぐらいの隔絶した力はあるよね~」
「官職?」
「あぁ。知らないよね~」
能力者が集まってできた協会の中で最も優れた者に与えられる官職なのだとか。
官職には称号が付いていて祖母には道の称号が付いている。
そんなこんなで祖母はエターナルロードとも呼ばれ、災害として恐れられている。
一個人が災害なのか。
「官職って他にあるんですか?」
「あるよ。【門】【開祖】【原点】【境界】【魂】【証明】【創造】【虚数】そして【道】の9つだね」
「す、すごいですね」
9つもあるのか。
全部カッコイイな。
「その上の【冠】っていうのもあるけどこれは協会が作られてからまだ与えられた人はいないかな」
なんかすごい名前だな。
冠だなんて。
「無冠の称号なんて揶揄さているけど、あと千年もすれば一人ぐらいは現れると思うけどね」
先の長い話だ。
「そろそろ俺も帰ろうかな。後日に書類が届くからそれを書いて郵送してくれ。何か聞きたいことがあればここに電話してくれ。俺の電話番号」
そう言って番号の書かれた紙を渡して踵を返した。
「あ、そうだ。目の事は秘密でお願いします」
「もちろんだ。あの人の孫を売って殺されたくはないからね」
今日一番真剣な目をしていたから問題はなさそうだな。
今日は何を食べようかな。
読んでいただきありがとうございます。
次回は11月にもう一話掲載予定!