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0.序章
俺は世界に絶望していた。
いや、正確には絶望すらしていなかった。世の中の全ての事象を諦めていた。何をやっても上手くいかないし、自分を認めてくれる人もいない。
「新道琉人」という名前は、「琉」が七宝の1つ「瑠璃」の意味を持ち、「宝石のように美しい心を持つ人間になってほしい」と願いが込められている。ということを昨日の講義の課題を通して母からメールで聞いたところだ。勿論、そんな人間になれているはずもない。
俺だって出来ることなら美しい心を持ち、世界平和を目指したり世界を変える救世主にでもなりたかった。
しかし、現実はそう甘くはない。身の回りで大きな事件も起きなければ、幼い頃に観ていた仮面を被ったヒーローやカラフルなヒーローチームも存在しない。ある日偶然特殊能力を手に入れて世界の滅亡を阻止するライトノベルの主人公にはなれない。全てはフィクションの中の虚妄に過ぎない。そんなことは分かっていた。
─────あの日までは。
この作品はフィクションです。実在の人物、団体、事件等とは一切関係ありません。