第二話 慌てる旅立ち前と文句を言わせないシスター
孤児院を追い出される事になったライゼ、そんな彼は今、何をしているかというと
「(…まずいまずいまずいッ!マズイぞッ!まずいッー!)」
孤児院近くの丘の上で焦っていた。全く勉強していない期末テスト前日くらい焦っていた。
「落ち着け…まだあわわわわわわわわわわわ」
※特別訳:落ち着け…まだ慌てるような…
あまりの焦りに口元が崩壊している。それから数分後、落ち着きを取り戻したライゼは考える。
「(シスターからの餞別として多少の金は貰えるから…問題は…職だな)」
このアン・ファング村は交易国家ベルグの南に位置する人口50〜60人程度のまあまあな村だが、働き口は少ない。
「(となると…近くの街まで行って職を探すのが…いや…)」
無理だな…とライゼは考える。まだ12歳の子供を雇う者など、そうそう居ないだろう。
そう考え事をしていると、丘の方へ誰かが歩いてくる音がする。
「あ、シスター…」
「ふん、なにメソメソしてんだい、男だろうシャキッとしな!」
「(まだ12歳の子供なんだけどッ!)そ、そりゃシスターが突然出てい」
一言文句を言おうとしたが‥
「文句言うんじゃないよ!」
「(ええぇ…)」
「そもそも私に黙って書斎から本を持っていくわ、約束は破るわ」
「うぐっ‥」
「全く…まあお前さんの事だからこの後どうするか悩んでるんだろう?」
癪だがアタリだと、心の中でライゼは頷く。
「そry…(ならここより南にある国境沿いのヘクセンって街を目指しな」
「な、なn(お告げさ、さぁ行くべき場所は決まったから早く準備しな、出発は明日だよ」
さすが沢山の子供を従えるシスター、こちら側に反論する隙を与えない。
「ほら、ガキ共がお前さんの為に送別会を開くそうだ。遅くならない内に帰ってくんだよ」
と、言いたいことを言い終えたシスターは教会へ戻って行った。
「……はぁ、準備するか…」
ライゼも諦めて明日の準備を進めに孤児院へ戻る。ついに明日、ここを出ていくのだ。
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「12年…か…やっぱり運命ってのはクソだね…」
その脳裏に浮かぶのは、籠に入った黒髪の子供と…
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